ワラーチを振り返る(後編)
前編からのつづき
3. 足半ワラーチ
2016年8月、戦国時代の履物である足半を参考にして、足半ワラーチを作った。しかし、次に作ったミニマルワラーチ(4項参照)が気に入ったので、この足半ワラーチはすぐに使う機会がなかった。
2018年8月、Mt.六甲トレイルラン10kmで足半ワラーチを始めて使ってみた。変化に富んだトレイルの路面の状態をしっかりと感じることができた。ただ、自然のトレイルでは快適だったが、道に砕石を敷いた箇所では歩くことも大変だった。
足半ワラーチは、裸足の開放感を大きく損なうことなく、裸足の弱点(足裏の痛み)をカバーしてくれた。ワラーチの先端部を指でつかむような感じになるので、ワラーチの先端部が地面に引っ掛かる心配もなかった。また、地面に指が触れることで感覚が研ぎ澄まされるためか、これまでのように指を怪我することがなくなった。足半を開発した鎌倉時代の武士に敬意を表したい。
紐の結び方を見直し、踵にまわした紐を無くした。足への装着・脱着がスムーズになり、より開放感が生まれた。この足半ワラーチはこの後、退職までの半年間、帰宅ランで使った。
4. ミニマルワラーチ
2017年3月、ビブラム・ファイブ・フィンガーズという裸足感覚のシューズをヒントにしてミニマルワラーチを作った。
ワラーチの先端部を指の形にすることにより、先端部が地面に引っ掛かっても、引っ掛かった指の部分だけが曲がるので、紐へのテンションはかからなくなった。そして、地面の細かな凹凸に合わせて、裸足に近い指使いができるようになった。
ミニマルワラーチは、土踏まずの部分を大きく切り欠いて、足裏が地面と接触する部分にフォーカスしたミニマルなデザインにしたことで、着地時の荷重移動の意識が深まったような気がする。ただし、山で使うときは注意が必要だった。トレランの後、土踏まずの部分を負傷していたことがあった。裸足では足裏感覚が鋭敏に働くので負傷することはないが、ワラーチでは足裏が覆われるため足裏感覚が鈍るので気を付ける必要がある。つまり、山では裸足よりミニマルワラーチの方がリスクが高いと言える。
このミニマルワラーチはデザインが気に入ったので、普段履きにも使うようになった。
2018年9月、キャンプ場の不整地の斜面で横滑りして紐通し穴が裂けた。紐取付け部を大きくした2足目を作った。紐の結び方を変更し、紐の長さは約半分に節約できた。
2019年6月、ミニマルワラーチ2足目は、四国お遍路で履き潰した。
2019年6月、同じ型紙で新しいワラーチを作った(3足目)。紐をパラコードに変えると、片足29gと超軽量になった。
2019年9月、パラコードが切れたので真田紐に戻した。肌感触は真田紐の方が好みだった。
2019年11月、六甲シティマラソン大会10kmに参加した。13年前のシューズの自己ベストを更新した。
ワラーチで得たもの
トレランで足首を捻らなくなった。足首の捻挫はかかとに体重が乗ったあと、地面に傾斜があると足首がぐらつくために起こる。ワラーチでは、かかとにはほとんど体重が乗らないので足首はぐらつかない。トレランシューズを履いていた昔、テーピングで足首をガチガチに固めていたことが嘘のように感じる。
トレランの下りで膝を痛めなくなった。トレランシューズでは着地時の衝撃が膝にかかっていた。ワラーチではトレランシューズのように強い着地ができない。そのため、着地時の衝撃は身体全体で分散吸収する必要がある。ワラーチでは膝に衝撃を感じなくなった。
トレランで登りが楽になった。ワラーチの重量はトレランシューズの1/20〜1/5程度。登りでは特に足の軽さを感じる。
10kmマラソン大会で自己ベストを更新した。ワラーチがシューズより有利なのか、ワラーチで走力が向上したのか理由は不明だが、13年前の自己ベストを更新したことには驚いた。
身体と脚が強くなった(と思う)。四国お遍路道1,200kmを体調を崩さず歩けた。四国お遍路は初めてだったのでシューズの場合と比較できないが、ワラーチの成果であると信じている。
自分の好きなことが再認識できた。自作したものを使うこと。そして、改良したり思い付いたアイデアを形にすることが好き。ワラーチに教えられた。
おわりに
この記事を書いて、ワラーチと自分を振り返ることができた。4タイプのワラーチの中で足半ワラーチをもう一度使いたいと思った。足半ワラーチは裸足の弱点をカバーした上で、裸足感覚を楽しむことができる最も優れたワラーチだと思う。裸足で歩ける距離は路面の状態にもよるが、自分の実力では5〜10kmが限界である。足半ワラーチを使えば、もう少し長い距離を楽しめるだろう。