ワラーチを振り返る(前編)
はじめに
10年ほど前、ベアフットランニングがブームの時期があった。自分もブームの影響を受け、ベアフットランニングを始めた。そしてワラーチという自作サンダルを履くようになった。
2年前から市販サンダルを履くようになり、ワラーチは履かなくなってしまった。今振り返ると、自分にとってワラーチは、本来の人間の足を取り戻すための支援ツールだったことに気付く。様々なワラーチを考案して作った。それらのワラーチを使うことで自分の足と向き合うことができた。そして、自分の足を理解し成長させることができたと思う。ワラーチがなかったら今の足はできていなかっただろう。そして今、ワラーチは、その役割をひっそりと終えていたことを知る。
この記事では、ワラーチを始めるきっかけを与えて頂いた裸足ランニング講習会で出会った女性と、ワラーチを始めるにあたり、ワラーチの作り方と紐の結び方をYouTubeで紹介して頂いた木村東吉氏に感謝の意を込めて、約7年間のワラーチの思い出を振り返った。
ベアフットランニング
2013年、ベアフットランニングがブームになっていることを知った。以前(2005年〜2010年)にトレイルランニング(トレラン)をやっていたこともあり興味を持った。その翌年、トレランシューズを捨てて、地下足袋でトレランを再開した。さらにその翌年、ある女性ブロガーの雪上裸足ランニングの記事に衝撃を受け、裸足ランニングを始めた。
2014年4月、裸足ランニング講習会に参加
同年同月、地下足袋でトレランを再開
2015年1月、裸足登山を体験
2015年4月、裸足ランニングを開始
しかし、路面状態や現代の社会環境により、裸足で走ることが難しい場合があることを知った。
苦痛:尖った砕石を敷いたトレイルは足裏が痛い。
凍傷:冬の凍った土のトレイルは足裏の感覚が麻痺する。
火傷:夏の日差しで焼けたアスファルトは足裏が熱い。
不安:近隣の住民から不審者扱いされることが気がかり。
ワラーチの変遷
裸足ランニング講習会で出会った女性から、ワラーチという自作サンダルの話を聞いたことを思い出した。裸足で走れない状況ではワラーチを利用することにした。ワラーチは作る楽しさと使う充実感が得られた。履いた時の開放感と心地良さの虜になり、日常生活の普段履きにもワラーチを使うようになった。
これまでに作った4タイプのワラーチを振り返る。(最初の2タイプのワラーチの名前は、作り始めた年が2015年であったことから、2015年が舞台であるエヴァンゲリオンの名前を拝借した。)
1. 零号機
2015年5月、木村東吉氏のYouTube動画を参考にして、初めてワラーチを作った。
工夫した点は、くるぶし部分の紐が地面との摩擦で擦り切れるのを防ぐため、くるぶし部分の紐通し穴は足型の輪郭線上に明け、その穴の周囲を耳のような形状に広げた。
2015年10月、神戸森林植物園クロスカントリー20Kに参加した。ワラーチで初めて参加する大会なので、制限時間の3時間30分以内で完走することを目標にしたが、2時間3分で完走できたことに驚いた。この時期は、まだトレランシューズの荒っぽい走り方が残っていたので親指と小指に傷が絶えなかった。対策として指にテーピングをしていた。
2015年11月、六甲全山縦走大会に参加した。午後から雨が降り出し、トレイルは泥沼状態になった。ワラーチと足裏の間に雨水と泥が入り込み、足裏が横滑りを繰り返すようになった。とうとうワラーチの紐通し穴が裂けて、ワラーチから紐が外れてしまった。応急処置として布でワラーチと足を縛って完走できたが、零号機の寿命は半年で終わった。
零号機の不具合点を整理し、対策を考えた。
不具合点
指がワラーチ前端から、はみ出てしまう。(特に下り斜面で)
親指は切り傷や打ち身など怪我をしやすい。
ワラーチ上面が水に濡れると足裏が滑りやすくなる。
足が疲れてくると、ワラーチの前端部が地面に引っかかって紐にテンションがかかり、紐が切れやすく(外れやすく)なる。
対策
ワラーチの鼻緒部分の紐通し孔の位置を10mm後方にずらす。
親指プロテクターを実装する。
ワラーチ上面に皮を貼る。
ワラーチ前部を上方に反らせる。
2. 初号機
2016年1月、零号機を改良した初号機を作った。
親指プロテクターで指の怪我がなくなった。また、ワラーチ前端部が地面に引っかかることがなくなった。