Zoom5.2の進化から我々が本当に『学ぶ』べきこと
『教える場づくり』に関わり、また自身も講師であることから、Facebookのタイムラインに何度もZoom5.2のアップデートの話題が出てくる。自分で調べなくても分かるのは大変に有難い。
Zoom5.2の新情報については、そうした秀逸な他のNoteなど見ていただくとして、それよりもメタなレベルで今一度「我々が学ぶべきこと」それは、「ツールの成長が人の成長を追い越した」ということである。
これが自分が、「自分が講師として教えたいこと」よりも現在の『教える場づくり』側に工数を割いている最大の理由であるので、興味のある方は一読願いたい。
集合知によるサービスの成長 > 個人の成長
AIの進化の特異点(シンギュラリティ)がいつか、もしくは来るのか来るのか、なんてのは未来の推測の話。
でも、「ツールの進化の特異点」はすでに来ている事実で、どんどん現在進行性で進んでいることである。そしてその分かりやすい一例がZoom系のバージョンアップだ、というお話。
もう少しかみ砕いて言えば、コロナ前の主要な話題の1つは、Deep Learningによるブレークスルーを契機に、AIが人間の知能を超えるという特異点(シンギュラリティ)でした。
しかし実は、「集合知によるサービスの成長 > 個人の成長」という特異点を既に過ぎているのが現代です。
そのため、「成長」という方向よりも、「新価値創造」が「仕事」の主流となる。という予測を述べていきます。
20世紀は専門家の時代だった
まず、20世紀の環境を考えていきます。
かつてはインターネットというものが存在せず、我々が価値創造に用いる各種のツール(仕事道具、カメラなどの機器、ITのソフトウェア)は単体で価値を発揮していました。
その製品やサービスは個人ではなく何名かの開発者による集合知と言えます。しかし、インターネット以前、そうしたツールの作り手に返ってくるフィードバックは個々のクレームとして判別できるほど少数、かつ玉石混交でした。
また、情報の伝達は(郵便含め)人力に頼っていましたので、モノづくりよりも営業力の方が企業の売り上げにおいて重要視されました。
その結果、ツールに寄せられた改善要求にかけられる工数は比較的少数でした。
その結果、ツール自身の成長はあまり早いものではなく、個人の成長の方が上回っていました。自然、「仕事をする」とは、成し遂げるべき依頼に対してツールが不完全な点を個人が習熟する、という形をとりました。
つまり、仕事を通じて“○○の達人”になるのが方向。その具体例としては、“カメラの専門家”であったり、“河川工学の専門家”。店単位ですと“ボードゲームの専門店”ですし、人脈の広い人なんていうのも重宝されました。
しかし、21世紀になり、インターネットが普及すると状況は変わります。世の中で価値創造や課題解決に利用されるツールが、ITを通じてのクラウドサービスとして提供されるようになりました。俗にSaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)と呼ばれるものです。分かりやすいのが“Salesforce”という「営業に必要なことを全てクラウドで提供しているサービス」です。
Salesforceという化け物
Salesforceと出会ったのは5年以上前。ある新規事業のプロジェクト(Pj)にいた時です。そのPjの中でSalesforceは「営業部隊用」ではなく「出荷管理用」として使われ始めました。
そのPjの中で、私は現行機能の「一つ先の機能」を開発することが使命でした。その中で、Salesforce本体に新機能が追加されていく様をリアルタイムに見ることになります。
数年後、その新規事業Pjがいよいよしっかり売上を立てねばならぬ局面に。私も開発者でありながら、「その機能を顧客に説明し、対価をいただく」という営業も併せて行うことになりました。
その時、Salesforceを本来の”営業用”としても使うことにしました。
やはり何事も「仕事として行う」とただ学ぶよりも桁違いに自身の成長を実感できるのは、多くの方も経験済みと思います。私も、試行錯誤の中で最終的に「我々の新規事業の最新機能」で2例、対価をいただく営業に成功しました。同時並行で頼んでいたその業界で世界最大手の広告代理店すら0勝7敗だったのに。しかし、それだけの成長をした中ですら、Salesforceの機能Upはおおよそ「数年後の自身の成長を上回るもの」と感じました。それもそのはず、私のような付け焼刃の営業ではなく、百戦錬磨の営業たちのノウハウを吸収し、フローとして実装していくのですから。
一例をあげれば、Salesforceでは顧客との商談結果を登録する際、「その取引先との次のToDo」を入力しない限り、そのレコードを登録できないようになっていました。これは優れた営業が「必ず次の一手をクロージングして帰ってくる」からでしょう。私も一講師としては講義中に必ず「講義後の次の一歩」を受講生に記載させてから終わらせることにしています。それと通じることと認識しました。
他にも、営業ワークフロー作成機能、さらにはそれを過去の結果から学習して、しかるべきタイミングでメッセージを送る機能……が準実装されていきました。おおよそ一個人の成長の度合いを越えています。
クラウドサービスの成長臨界点
それはなぜか? クラウドサービスは、利用者の数がある臨界点を超えると、寄せられたリクエストの中で“数が多いものから解決する”だけでどんどん良くなります。しかも、インターネット上のサービスですから、営業に人力はほとんどいりません。寄せられた課題を解決する技術者は十分いますし、優れたユーザー体験(UX)を提供すれば、勝手にサービスが広がり、さらにそれが課題点を優先的にサービス改善側にフィードバック。どんどんサービスの質(とUX)が良くなります。
するとどうなるか?クラウドサービスの成長力が個人の成長力をはるかに追い抜きます。前述のように既にSaleforceに含まれている営業力のノウハウが溜まるスピードは一介の営業担当がスキルアップするスピードを越えています。信じられませんか?
ではGAFAのうち3社を考えましょう。実はGoogleは“知識aaS”、Amazonは“小売店aaS”、Facebookは“人脈aaS”とでも呼ぶべきものです。Googleがある分野に関しての知識を蓄えるスピードにかなう知識人はいるでしょうか? Amazonのプライムサービスが便利になっていくスピードに太刀打ちできる小売店店主はいるでしょうか?Facebookが増やしていく人脈プールを越えて人脈を増やしている人なんているでしょうか?
そう、「利用者が臨界点を越えたクラウドサービスが存在している分野」において、既に「クラウドサービスという集合知」の成長は個人の成長を追い抜いてしまっているのです。
Zoom系ツールの進化 > 人の工夫と成長
Withコロナになってからの、各社の”Zoom類似サービス”(Google Meet、Microsoft Teams……)が日進月歩で不便を解消しているのはご存じの通り。しかしそれらは不完全で、講師も受講生も自分なりに工夫をして組み合わせてレベルアップしてきた自負があると思います。
しかし、ここで改めて、Zoom5.2の機能を考えてみて下さい。この「教える場」の成長もまた、講師自身の成長を越えつつある萌芽が見えていると思います。
「ツールの成長が、個人の成長を追い抜いた世界」で、「教える/学ぶ」ということが何を目的にしていくのか?
それを胸に刻みつつ、進むものが、真の「教え手」としてコロナ後、シンギュラリティ後に必要とされてくるのであろう。
そう予測しながら、日々の探索を続けています。
そして、探索へ
何かの機会に、皆さまと交錯することがあれば幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。皆さんの未来も明るいものであらんことを。
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