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手編焙煎を始めて2年目に入った今

こんにちは、苗ドクターです。今日は少し特別なコーヒーの焙煎方法—「手編焙煎」についてお話ししたいと思います。手編焙煎は、一つのコーヒー豆に向き合い、豆が持つ本来の魅力を最大限に引き出す方法の一つです。とても個性があり、コーヒーの世界にさらなる深みを与えてくれます。

手編焙煎とは?

手編焙煎は、焙煎のプロセスを人の手で丁寧に管理する方法です。ドラム式の焙煎機を使うのではなく、合わせ豆煎り器を使って直接火にかけながら豆を焙煎します。昔ながらのアナログな方法ですが、焙煎する人の感性技術が味にダイレクトに影響を与えるところが面白いです。

手編焙煎を行うことで、自分の手を使ってコーヒー豆の状態を直接感じることができます。豆の色の変化、香りの移り変わり、音の変化など、これらすべてに注意を払いながら、繊細に焙煎を進めていくことで、その日の気候や自身の気分が反映された独自の味わいが生まれるのです。

日本におけるスペシャルティコーヒーと2050年問題

日本では、ここ数年でスペシャルティコーヒーへの関心が高まり、多くの人がコーヒーの持つ多様な風味や、産地ごとの個性を楽しむようになりました。しかし、この美味しいコーヒー文化が未来に渡って続くかどうかには、地球環境やマクロ経済の動向が大きく関わってきます。ここで注目したいのが「2050年問題」です。

2050年問題とは、気候変動や人口増加などが引き起こす資源不足や農業への影響に関する課題です。特にコーヒー栽培にとって、気候変動は深刻な影響をもたらしています。温暖化により、現在コーヒーが栽培されている地域の気候が適さなくなる可能性があり、多くの農家がコーヒー栽培を続けられなくなるかもしれません。また、農業労働者の高齢化や若い世代の農業離れも、持続可能なコーヒー生産において大きな問題となっています。

このような状況の中で、私が消費者としてできることは何でしょうか。手編焙煎はその一つの答えとなるかもしれません。私が自ら焙煎を行うことで、コーヒーのプロセス全体を理解し、コーヒー豆の産地や生産者への理解を深めることができます。私が自家焙煎を楽しむことは、単なる趣味を超えて、持続可能なコーヒー生産の未来を考える第一歩になるのです。

焙煎の過程で感じること

焙煎を始めると、まず私が感じるのは「豆と向き合う時間」の尊さです。火の強さ、豆の色の変化、香りの移り変わり、すべての瞬間に集中しなければなりません。豆がはじける「クラック(ハゼ)」の音を聞くことで、焙煎の段階を見極めることができます。このプロセスは私にとって瞑想のようでもあり、豆に込められた農家さんの思いや自然の恵みに心を向ける時間でもあります。

火加減や豆の動き方を観察しながら、手網を絶えず動かして豆全体に均等に熱を通すことが重要です。少しでも気を抜くと、豆が焦げてしまったり、思ったような味に仕上がらなかったりするかもしれません。しかし、このプロセスこそが私にとって手編焙煎の楽しさの一つです。失敗することも多いですが、その一つひとつが貴重な学びです。何度も繰り返し焙煎する中で、私は自分の好みの焙煎具合を見つけ出し、それを再現するための技術を磨いていくことが、手編焙煎の魅力と言えるでしょう。

手編焙煎の魅力

手編焙煎では、私自身の「手の味」が出ます。機械で焙煎する場合は精密な温度と時間の管理によって均一な味を実現しますが、手編ではその都度異なるニュアンスが生まれます。その日の気温や湿度、火の加減、私の気持ちなどが豆に影響を与え、毎回違った魅力を持つコーヒーが生まれるのです。

また、手編焙煎を通じて生まれる一杯のコーヒーには、その過程での思いや努力が詰まっています。自分で焙煎した豆を使った一杯のコーヒーを飲む瞬間は、私にとって何とも言えない満足感があります。焙煎から抽出までの全過程に自分の手を加えることで、飲む一杯に特別な愛着が湧きます。それはコーヒーの奥深さとともに、自分自身の成長を感じる瞬間でもあります。

私だけで楽しむのではなく、家族や友人にも飲んでもらうことで新たな発見があります。私が焙煎したコーヒーを他の人に味わってもらい、その感想を聞くと、自分が見逃していた味わいや改善点に気付くことができます。その瞬間は、私が焙煎者として成長を感じられる大切な時間です。さらに、プロのバリスタが提供してくれるコーヒーを飲むときにも、その背景にある努力や丁寧な仕事に対するリスペクトが高まります。

私の手編焙煎の体験

手編と温度計を使って自作した手編焙煎器を持っています。

私が使用している手編焙煎機はメルカリでも販売していますので、興味がある方はこちらからご覧ください: メルカリの苗ドクタープロフィール


この焙煎器で1年ほどシングルオリジンのコーヒー豆を焙煎してきました。ベランダで朝の静かな時間に焙煎したり、家のガスコンロを使ったり、キャンプに行ってその場で焙煎したりと、そのときの気分や環境に合わせて楽しんでいます。

キャンプ場で飲むコーヒーは最高!

ベランダでの焙煎は特に心が落ち着く瞬間です。朝日を浴びながら、自然の風を感じつつ、手網でコーヒー豆を焙煎する。豆が少しずつ色を変え、香りが広がっていくその瞬間は、日常の忙しさを忘れて、自分自身と向き合う時間でもあります。キャンプでの焙煎は、自然の中での一体感を感じながら焙煎できることが魅力です。焙煎したてのコーヒーをその場で淹れて飲む瞬間は格別で、焚き火の暖かさとコーヒーの香りが合わさり、最高のひとときが訪れます。

コーヒー器具を保管するコンテナボックスがあるのでベランダでもどこでも自由に焙煎ができます。

焙煎を重ねるうちに、私は同じ豆でも焙煎の方法によって味わいが大きく変化することを実感しています。そして、自分で焙煎したコーヒーを楽しむことの醍醐味は、私にとって試行錯誤しながら自分だけの一杯を作り上げることです。その日の気分や気候によって少しずつ違う焙煎の仕上がりが、毎回新しい発見をもたらしてくれます。このプロセスを通じて、コーヒー豆一粒一粒に込められた物語をより深く感じることができるのです。

手編焙煎を始めるには

もし手編焙煎に興味を持ったなら、まずはシンプルな道具から始めてみましょう。合わせ豆煎り(手網焙煎器)とガスコンロがあれば、家でも簡単に挑戦できます。はじめは焦げてしまったり、思うような味に仕上がらなかったりするかもしれませんが、それもまた楽しい経験です。自分で選んだ生豆を焙煎し、その豆の持つ特性を引き出すことに挑戦してみてください。温度や時間の調整、火の強さを工夫することで、どのように味が変わるのかをテストする楽しさがあります。

初めての焙煎では、焙煎具合の見極めが難しいかもしれません。しかし、手網を使い続けることで、徐々にコーヒー豆がどのように変化していくのかを感じ取れるようになります。豆がはじける音、色が濃くなっていく様子、そして香りが変わる瞬間—すべてが焙煎の進行を教えてくれる合図です。焦がさないためには、絶えず手網を動かし、均一に熱を伝えることが大切です。最初は失敗することも多いでしょうが、その失敗が次の成功へとつながります。自分だけの焙煎スタイルを見つけるまで、何度も繰り返してみて、私の焙煎スタイルを見つけましょう。

実際にやってみましょう:手編焙煎のレシピ

ここで、手編焙煎に挑戦するための手順を紹介します。準備物と焙煎の手順を写真とともに説明することで、皆さんにもその魅力を感じてもらえたらと思います。

準備物

  • 手網(焙煎器)

  • ガスコンロまたはカセットコンロ

  • 温度計(なくてもOKですが、あると便利です)

  • シングルオリジンの生豆(200g程度から始めてみましょう)

  • 耐熱手袋(手網は熱くなるので安全のために使用します)

  • タイマー(焙煎時間を管理するため)

手順

  1. 準備:まず、生豆200gを手網に入れます。ガスコンロの火を中火に設定し、手網を温めます。

10分以上手をふりふりするので、200gは重いと思う時もあります。


生豆は苗ドクターのメルカリでも販売しています。
購入先はこちらからどうぞ
  1. 焙煎開始:温まった手網を火にかざしながら、生豆を絶えず動かします。豆が均一に加熱されるよう、常に振り続けることがポイントです。

この状態でスタートして10分前後で、ふりふりします。
  1. 色と香りの変化に注意:数分経つと、豆の色が徐々に変わり、軽い草のような香りから徐々にナッツのような香りに変わっていきます。ここで豆の温度や色、香りに集中しましょう。

1ハゼの音:10分ほど経過すると、「パチパチ」と爆ぜる音(1ハゼ)が聞こえてきます。これは豆の水分が蒸発し、内部で圧力がかかるために起こる現象です。この音が聞こえたら、焙煎の進行度合いを確認しながら好みの焙煎度合いまで続けます。

焙煎終了:浅煎りが好みであれば、1ハゼが始まってから1〜2分で手網を火から外します。深煎りを目指す場合は、さらに焙煎を続け、2ハゼが聞こえるまで加熱します。深煎りの場合、より濃厚な味わいと苦味を楽しむことができます。

香ばしい香りが素敵です。

冷却:焙煎が完了したら、すぐに豆を冷却します。大きなボウルに移し、空気に触れさせて冷ましましょう。冷却が遅いと余熱で焙煎が進みすぎてしまうため、なるべく手早く行います。

保存と味わい:冷めた豆は24時間ほど置いてから挽いて淹れると、風味が落ち着いて美味しくなります。保存は密閉容器に入れ、直射日光を避けた場所に保管してください。

焙煎の後の楽しみ

焙煎が終わったら、いよいよコーヒーの試飲です。自分で焙煎した豆を使って淹れる一杯のコーヒーは、香りから味わいまで、すべてが特別です。焙煎から抽出までを自分の手で行ったという満足感が、一層その一杯を特別なものにします。

焙煎した豆を淹れるときには、自分がどういう味わいを期待して焙煎したのかを思い出しながら抽出してみましょう。フレンチプレスやドリップ、エスプレッソなど、さまざまな抽出方法を試してみることで、同じ豆でも異なる顔を持つコーヒーを楽しむことができます。

さらに、自分だけで楽しむのではなく、家族や友人と共有してみるのもおすすめです。他の人の感想を聞くことで、新たな発見や改善点が見つかり、次の焙煎へのモチベーションにもつながります。手編焙煎の魅力は、その過程を楽しむことだけでなく、そこから生まれる一杯を多くの人と共有することにもあります。

手編焙煎を通じて、自分だけの特別なコーヒー体験を作り上げてみてください。そして、その一杯があなたの日常に少しの喜びと癒しをもたらしてくれることを願っています。



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