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人間の匂いと孤独を愛すること――宮崎「ニシタチ」で感じたもの
2024年12月14日から15日、仕事で訪れた宮崎県の宮崎市に滞在する機会がありました。宮崎駅からホテルに向かうタクシーの中で運転手さんに聞いたのは「この街にはスナック文化があること」「単位人口あたりのスナックの数は日本一であること」「多くの人が朝まで飲み歩いていること」でした。仕事で疲れていたのもあり、朝まで行く元気はなかったのですが、夕食がてらこの繁華街に出てみました。
宮崎県最大の歓楽街といわれる「ニシタチ」をぶらりと散策しました。先述の通り、ここは、人口10万人あたりのスナックの数が176軒という、全国でも突出した“飲み屋街密度”を誇る土地です。そこには小さな店がひしめき合い、人々が肩を寄せ合い、笑い、酌み交わし、時に歌い、時に語り合う――そんな「人間の匂い」としか言いようのない濃厚な空気が漂っていました。
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「人間の匂い」という言葉は、必ずしも嗅覚的な意味ではありません。むしろ、人間同士が直接触れ合い、言葉を交わし、日常を積み重ねることで立ち上る、人情やぬくもり、土地に根付く文化的文脈の総合的な感覚です。宮崎の人々は穏やかな気質で、人懐こく、酒を好み、小さな店の中で親密な関係を育んでいます。そこでは、一人で訪れた見知らぬ来訪者すら、いつの間にか笑顔の輪に引き込まれるような、そんな空間の濃密さがありました。
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私はもともと「孤独」を愛する人間です。しかし不思議なことに、一人で見知らぬ街を歩くことは実に心地よかった。孤独を愛するはずなのに、孤独が心地よいはずなのに、ニシタチを歩くうち、孤独であるからこそ、人々の営みやつながりが愛おしく感じられることに気づいたのです。孤独は必ずしも人嫌いを意味しません。むしろ、孤独が心地よい人は、自分が望む関係性や、心から求める出会いに対してより敏感で、選り抜いた交流を大切にしているのかもしれないと思ったのです。
「アルプスの少女ハイジ」に登場する「アルムおんじ」をご存じでしょうか。
彼は山小屋でひっそりと暮らすが、決して人間嫌いなわけではない。むしろ、彼は静かな生活のなかで自分自身を見つめ、必要なときに必要な関係を紡ぐ術を知っているようにも見えます。「孤独」と「孤立」は似て非なるもの。孤独は自ら選び取る静かな余白であり、その余白があるからこそ、いざ人と交わったときに相手を深く感じ取り、自分らしい豊かな体験を積み重ねることができるのです。
宮崎での一夜は、単なる観光ではなく、私にとって「孤独」と「他者とのつながり」を再考する機会となりました。人間の匂いが漂う歓楽街で、一人彷徨いながら、私は自身の内なる静寂と、そこから生まれる「選り抜かれたつながり」の尊さを噛みしめていたのかもしれません。
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これからも、私は時折、あえて孤独を選び、知らない街を歩いてみようと思います。その中で、この感覚がさらに深まり、また別の土地で、異なる「人間の匂い」に出会えるかもしれないからです。
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