見出し画像

記憶の中の風景(13)

1998年初夏、中野坂上のビルで這いつくばる生活を一年ほど続けたお陰でネットワークやサーバーの基礎知識はそこそこ身についていた。もう少し本格的に勉強したいと思ったボクは転職活動を始めた。

システム管理者になりたかったが、そんなに都合良く希望の仕事は見つからない。池袋で転職フェアが開催されていることを知り、興味本位で行ってみると色々な企業が出展していた。

転職活動をしていると自分が井の中の蛙であることを思い知らされる。採用担当者の方と話をするたびに自分の愚かさを知り自己嫌悪に陥った。まだまだボクは素人なのだ。そんな素人でも可能性として採用してくれる会社を探すしかない。

細かく区切られたブースの前をキョロキョロしながら歩いていると笑顔の男性と目が合った。手招きされたので思わず入ると、そこはシステム構築などをやっている会社で、有名な複合機メーカーの子会社だった。新規事業を始めるために人材を探しているのだと言われた。

資格は何を持ってる?という質問に対してボクは小さな嘘をついた。資格を取ろうと思っていま勉強しています。口を衝いて出たその嘘が決め手となり、ボクはその会社の採用試験を受けることになった。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?