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記憶の中の風景(35)

ハーフマラソンに続いて10kmがスタートするのでボクは指定されたブロックに整列した。周りのランナーがみんなベテランに見える。ボクにとっての初めてのマラソン大会がいよいよ始まる。

号砲と共にランナーたちが前に進むと思いきや、後方のランナーは整列位置に止まったままだった。しばらくして前に進み走り始める。10kmのコースは山下公園をスタートし倉庫街を抜け、折り返してくる。

ボクよりかなり年上の男性ランナーや若い女性ランナーがごちゃ混ぜになって走る。周りにつられていつもより速く走り息が上がる。信号を無視して車道を走るランナーたち。マラソン大会に参加していることを実感した。

沿道から声援が飛ぶ。がんばれー!誰が誰を応援しているのか分からない。日曜日の倉庫街に入ると人は誰もいない。ランナーたちの足音と呼吸の音だけが響く。ボクは必死について行く。

折り返して5km地点を通過する。ここから先は未知の世界だ。先を急ぐランナーたちに揉みくちゃにされながら立ち止まって給水所で水を飲む。ボクは再び走り出す。


つづく

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