記憶の中の風景(28)
運動したことのないボクにとってトレーニングルームの二時間は果てしなく長かった。いくつかのトレーニングマシンで鍛錬しても30分あれば足りるのだ。最後の30分はシャワーを浴びるとしても1時間弱余ってしまう。
毎週来ている丸ちゃんはルーティンが決まっていて、トレーニングマシンで鍛錬した後、最後にトレッドミルで30分走っていた。ボクの中には走るという考えは全くなくて余った時間はフィットネスバイクに乗ってダラダラと時間を浪費した。
土曜日の午前中は丸ちゃんと東京体育館で運動し、代々木駅周辺でランチして帰るという流れができた。そのうちボクも最後にトレッドミルで走るようになり、ゆっくりだが走ることができることに喜びを感じ始めていた。
東京体育館に通うようになって5ヶ月後、代々木駅近くのカレー屋でナンをお代わりする丸ちゃんはボクにこう言った。「11月の横浜マラソン走るのでエントリーして下さい」
2007年11月11日に開催される第27回横浜マラソンは10kmとハーフマラソンがあり、丸ちゃんは10kmを走るという。トレッドミルで走り始めたばかりのボクが10km走れるとは思えない。
大丈夫ですよ半年ありますからと三枚目のナンを食べながら笑う丸ちゃんに対してボクは懐疑的になっていた。
つづく