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琉球アリーナ〜私と推しと、時々、姉ちゃん〜

夢みる少女じゃいられない。

勝手にシリーズ化しているのは、現在進行形だからである。
私と私の推しである夢子さんの日常は続いている、どちらかが飽きるまで。多分、私が先に飽きる。何故なら、私は飽きっぽいから。

そんな私が飽きずに続けられている事が、読書と映画とオタクとnoteなので、noteには書き綴っていきたい。

さて、私は1月にあったBリーグオールスターのチケットを手にいれ、飛行機とホテルもバチっと押さえ、姉と2人で開催地である沖縄に飛んだ。
そこには私の本来の推しである富樫勇樹選手が出場している。
あの愛らしい御尊顔を生で見るのか。
あの芸術的な大臀筋を拝めるのか。

私の頬には無意識に涙がつたい、機内で既に両手を合わせて合唱していた。

端折りながらのあらすじ

飛行機めっちゃ怖い人みたいな上陸を済ませた私だが、旅には慣れているのでこの日はニットパンツに黒のハイネックのみ。
2泊3日なのにキャンバストート1つである。様子がおかしいにも程がある。

オールスターに関しては別で書いたので良しとして、私はこの時最推しである富樫選手に夢中で夢子さんの事をすっかり忘れていた。

ファン失格である。

でもさ、聞いて。
自分の好みの人が目の前に来るチャンスに心躍ってまう気持ち、誰だってわかるやん?しかも、富樫勇樹やで?日本の富樫勇樹やで?もうすぐ世界の富樫勇樹になるんやで?生で見る機会、減るかもしれんやん。

そんな時にうっかりよそ見なんて笑止千万、片腹痛いわ。

私はどんな時も、推しの前では我を忘れないゴリラメンタルの女。
推しと同じ空間にいて泣く?何言ってるの?
そんな暇があれば両の眼をしっかり開き、その姿を3Dで脳裏に焼き付け、ダイソンを超える唯一の吸引力で推しが吐いた二酸化炭素を少しでも吸いたいね。
同じ空間の酸素を吸う時代なんかとっくに終わったねん、これからは推しの体内を通った二酸化炭素を摂取する時代。
推しの光と推しへの愛で光合成をし、自給自足しながら推しの吐く二酸化炭素を吸収する。
は?変態?バカ言っちゃ困るね。
めっちゃSDGsやろ?

歌を歌いながら富士を登頂した過去をもつ。肺活量には自信があります。

富樫、逃げろ!

そんな声が聞こえそうなので、ここらにしておくが、同じメンタルの人を常に探してます。

オールスター2日目。
沖縄アリーナに閉じ籠り、富樫選手で光合成をしながらガソリンの如く唐揚げを食べ、全身でニヤついている私に姉がそっと伝えた。

「なぁ、あんたがゆうてる夢子さん、会場来てはるんちゃうん?」

は?!

そ、そんなこと。

ある。しかないわ、だってチャットでエンカウントしたし、いつもベンチ裏のいい席確保してるし「今日はお家で応援してるね!」とは一言もいっていない。

おる、そや、絶対おる。

ゆゆゆゆゆゆゆゆy
y湯ゆゆゆっっゆ

勇樹さん(富樫選手)もおるけど夢子さんもおる。

私は1階席のベンチ後ろ、ちょうど試合を終えてベンチに戻った富樫選手がお尻を向ける位置の席をとっている。
夢子さんはきっと、比江島選手のベンチ側(反対)のきっとアリーナベンチ裏の少し左だ!

「ゆうても、顔知らんしな」
「知ってる・・・」
「え?」
「いつもインスタあげてるねん」
「そうなん?」
「だって、夢子さんはいつでもマコ(比江島選手のニックネーム。私達はこちらで呼んでいる)のお嫁にいけるから、いつも綺麗やし覚えて貰わんならんから」
「そうなん?」
「夢子さんは・・・・・」

私は彼女の見た目からいつも一緒のお連れの方、その見た目ファッションポイントまでを早口で捲し立てた。オタクとはテンションが上がり、推しのプレゼンを許されると光の速さで話す超能力を解放する事が出来る。
それを即座に聞き取り、未だ裸眼で過ごす姉はマサイの戦士ばりの強視力で夢子さんを探し出す。
因みにだが、私は近視の乱視。
眼鏡で矯正はしているが、基本的に動いている人間は、動き方の特徴(主に歩き方)で認識する最新の犯人特定術を先取りして認識しているので、止まっている人の特定が苦手である。
視力は諦めるから見聞色の覇気に目覚めたい。

富樫選手は気まぐれにこっちを向いてくれるが、観客席にいる夢子さんは、ほぼほぼこちらを振り向く事がない、特定は難しい。

何より、情けない話だが、いるかも知れない動揺で世界水泳並みに目が泳いで探せない。

「あ、あの人ちゃうん?ほら(私が話した夢子さんの特徴)やし、後ろから見てても綺麗」
姉がある一角を手で囲って教えてくれる。私はチラッとそちらを見る。

そうや、きっとそうや!

「ほら、声かけてみたら?フォローさしてもらってますって」
「・・・むり・・・」
姉は知っている。
最推しを目の前にしてテレビカメラに映されながら「思い切り煽れ」とカンペを出され罵詈雑言を吐いた私を。
そんな私が動けなくなっている。
「なぁちゃん、どうしたん?」
「むりや・・・」
「え?」

「そんなん爆ぜる」

最推し(富樫勇樹)+最推し(夢子)=爆ぜる
エネルギー量が多すぎるのだ。

アリーナに入るにはそもそもアリーナ席のチケットと、腕にその印のあのなんかバンド?みたいな、名前は分からんけど、昔の遊園地のフリーパスみたいなんが必要なので私達は立ち入る資格が無い。

私には彼女に近寄る資格が無いのだ。

「まぁでも、出口とかで会うかもな?いつもいいね❤️してます〜とか」
「してへん」
「富樫にはしてるやろ?」
「してる」
「夢子さんは?」
「してへん」
「え?なんで?」
「富樫は、日本の富樫勇樹やからできるけど、夢子さんは一緒の推し活仲間やから出来ん。そもそもマコ推しちゃうし、烏滸がましいやんか」
「なぁちゃん、それ富樫選手にも烏滸がましいよ?」

とりあえず、正気を失くしかけている私を姉は気遣い、その先は何も言わずに残りの時間をオールスターゲームを楽しんだ。

だが、私の視線の片隅にいつも夢子さんがいた。それだけでもう考える事をやめて宇宙空間を彷徨いそうだった。

ただ、少し距離が近づいたことで小さな変化は起きている。


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