セレーネ・レヴェリー『放課後のプレアデス』感想補足解説パート3(第4話)
前回(第3話)はこちら。
ここで書いたすばるの自宅前に駐めてある自家用車の相違についてですが、即日真相が判明しました。
すばる・母は天体写真家なので、普段は家で仕事をしていて、結婚後仕事量を減らしていたとしても車が必要な職種なんですよね。だとすれば、レガシィB4とR1の2台持ちはバランスが良いと思います。
すばる・父はあの若さでエンジン開発に係わっているなら、結構給料良さそうですしね(身も蓋もない)。
ところで、この話の通りの良さと情報密度の高さは、私の周りでは『灰羽連盟』界隈と『ケルベロス・サーガ』界隈と似ています。つまり、多数派ではないにしてもファン層が厚いと言うことです。
例によって適当に記事タイトルを付けてみましたが、そっちのネタが早々に尽きそうな気がします。
月の女神の夢想曲(SELENE Reverie)。
ひかるなら女神より天使か妖精の方が似合っているかもしれせん。
第4話から各キャラにスポットが当たっていきますので、視聴当時の感想にも書きましたが、この記事でも少しその部分に分量を充てるつもりです。
マクラが長くなりました。
第4話 ソの夢
ひかるの絶対音感から「先がわかっちゃうから最後まで読まない(見ない/聞かない)」という冷めた部分を強調した入り。これまではすぱっと見切りを付けることで次に行く良さが出ていたけど、自分の行いの結末を知るのが恐いという弱点が露わになる。
そうなったきっかけが幼い頃に父親の未完成の楽譜に書いた次の1音で、たぶんその後一切触れられなかったのだろうなぁと。ひかるが当時「どうしよう」って申し訳なさそうに布団被ってる姿からも優しさや根が真面目なところがいまに繋がっている。メンバーの中ではバランサー(折衝役)なんだよね、ひかる。
地球離脱のアレ「太陽帆ー!」と口に出しそうになった。2015年春だからIKAROSの冬眠モード明けとぴったしなんですもん。ひかるは月面で見る夢を冷めた目で分析するけどお菓子の世界はスルーしてたり、ホワイトボードに「学校→月。」書いちゃうところとか、お茶目で意地っ張りで可愛い(笑)
ところで、くじら座のグリーゼって、くじら座にある近傍恒星という意味で使っているのかな。くじら座ならG型主系列星のタウ星だろうし、連星のグリーゼ105はあるけど……プレアデス星人がいる世界なのだから。それより「天文台の客寄せ」がオズマ計画の再現とゆーことの方が驚きだよ!
2020年6月6日7:51:45
以下、本編の進行順に並べ直します。
>ひかるの絶対音感から(中略)冷めた部分
絶対音感は音を聞いただけ音高(ドレミやCDEなどの音名やコード名)がわかるだけではなく、スプーンが落ちた音や窓を閉じた音などの音高を音名で言い当てられます。何故言い切れるのかというと、高校時代の同期に絶対音感の持ち主がいたからです。
ですので、絶対音感は別に知りたくないことまでわかってしまう能力と捉えることができ、性格や気質にもよりますが自分を客観視しやすい傾向があると思います。
ひかるが本や音楽、映画などを「最後まで見ない/見ようとしない」のは、後に語られる7年前の出来事とこの生来の能力と彼女の心根が悪い形で合わさってしまったのではないかな、とも思いました。
エピソードと天才肌という側面を強調する意味も強く、ななことひかるがなんとなく付き合いが長そうな関係を見せるのにも一役買ってますね。
『放課後のプレアデス』は、高森奈津美さんの『放課後のプレアデス・ラジオ(BD特典のCD)』で「(佐伯監督が)YouTube版を経てTV版を制作する際に各キャラの掘り下げをしっかりやりたい」と方向性を語っていたと聞きました。
こうして一人に注目して見ると、作り込んでいることがわかります。
このシーンの「ソ以外全部」のひかるの露骨な口の動きと読んでいる本から微動だにしない視線が好きです。
なお、YouTube版はこちら。
>自分の行いの結末を知るのが恐いという弱点
長所がそのまま短所になる人は、往々にして極端なところがあります。
オンとオフが激しい……というかオンかオフしかなかったり、傷つきやすくてすぐ落ち込むのに潰されないしぶとさを持っていたりします。
ひかるは、第2話でドライブシャフトを自由自在に扱って見せたり、第3話では会長の言葉を場の空気を察したかのように「ポンコツだ」と要約したり、順応性が高く頭の回転が速いのですよね。
でも見方を変えると、魔法使いとしての能力では、あおいのような瞬発力はなく、いつきのような高出力は持たず、ななこほど安定性が高くなければ、すばるほどの臨機応変さはない。
5人の中で最も小回りが利く機動力を持っているのですが、すばるとは別の意味で目立った長所がないという……まあ、ドライブシャフトのモデルがスバル・トレジア(コンパクトカーでかつ小さめ車種)なので、ぶっ飛んだところがあったらまずいのですが。
第4話の特訓シーンも自身の軽さを生かした上昇軌道を早々に見つけてリードしていくのは、ひかる自身の器用さもあるでしょうが、加速が付いている場合は本体重量が軽いほど上昇は有利になるので、機体強度という制約のない魔法使いならではの演出ですね。
この機体強度の制約や、加速により大気が急速に圧縮されて発生する熱(熱の壁)への対策をしなくて良いものの、上昇や下降に必要な速度は無視できないことから、物理法則を無視しているようでその縛りからは脱していないとわかります。こうした部分が『放課後のプレアデス』をSFたらしめていると思います。
>メンバーの中ではバランサー(折衝役)
先の「ポンコツ」発言にしても単に要約すると全員が落ち込むだけなのですが、自分の不満として口にすることで手詰まりの現状にいったんキリをつけて、「じゃあ、これからどうしよう?」という方向へ誘導しているのですよね。
ひかるは、そうした自身の能力や周囲状況を把握して上手く(自分自身や周囲と)付き合っていますが、計算高さ感じられなくて無邪気さの方が先立つ感じがあります。
後にすばるに両親のことを話す際に、「2人の邪魔をしたくなかった」とこぼしていますが、この言葉からひかる自身が心から望んでそう振る舞ってきたので、自然と周囲を取り持つ癖が着いたのではないでしょうか。
そこがひかるの幼い心と繋がっている部分であると同時に、心根が真っ直ぐで嘘をつくのが下手──特に自分自身を偽るのが下手──なのでは、とも思えます。
第4話では「カケラの回収に月軌道まで行かなければならない」となったときも、会長が躊躇するのをひと言ずつ質問と確認を重ねていって「じゃあ、行こう」って流れを作ります。
この後で「だって面白そうじゃん」と明るい顔を見せ、深刻な話を楽しそうな話にすり替えてしまうところに、旺盛な好奇心と周囲への気配りが見られます。
この他、第2話で部室確保を思いついたり、カケラ回収時は謎の少年の襲撃を警戒していたり、何気に周囲を良く見ていますね。
>くじら座のグリーゼ
くじら座タウ星のことだと思われます。地球型惑星の存在が示唆されている有望な恒星として、天文、SFなどの界隈ではそれなりに有名な恒星です。
厳密には、この恒星を周回しているくじら座タウ星fのことでしょう。
グリーゼというのは特定の星の名前ではなく、グリーゼ近傍恒星カタログのことで、星によっては、くじら座の連星グリーゼ105のようにカタログナンバーそのままの呼び名の方が通りが良い例もあります。
ところで、この記事を書き始めた頃に、佐伯監督がpixivに公開している『ソの夢』の小説があると知り(正確には教えて頂いて)、即座に読みました。細々とした相違点があるのですが、小説ならではの描き方でアニメの内容をほぼ忠実に描いています。
ここで引き合いに出したのは、対象となる星が違ったためです。これを含めて何故その星に焦点が当てられたのかをまとめて書くことにしました。
見出しには『星空の下で演奏会~てんびん座・グリーゼへのメッセージ~』とある。
佐伯昭志『ソの夢 ――(放課後のプレアデス 第四話「ソの夢」より)――』リンク先pixiv
これは、てんびん座23番星系の惑星てんびん座23番星fのことでしょう。
くじら座からてんびん座になったのは、黄道面にあるため日本から観測しやすい恒星で、かつ惑星が二つ確認されている点を考慮しての変更だと思われます。
太陽系以外の恒星系に地球型惑星(正確には大気組成などが地球と近い性質を持ち、生命が存在する可能性がある惑星)があるかどうかを判断する基準の一つが恒星のスペクトル分類です。
スペクトル分類とは、恒星から放射されている電磁波スペクトルを細分化したものです。恒星の電磁波スペクトルは、表面温度や化学組成によって変化するので、元素や分子レベルで解析することができます。
この前提条件さえ知っていれば、素人でも公開されている恒星データと太陽を比べてみると、地球のような惑星が存在する可能性を推し量ることができるわけです。
細かいところは端折りますが、太陽はG2Vの主系列星(水素の核融合反応を起こしている恒星)で、くじら座タウ星はG8.5Vの主系列星、てんびん座23番星はG5Vの主系列星なので、温度・明るさ・大きさといった違いはあるのものの、宇宙規模かつ空想科学(SF)視点からなら誤差の範囲です。
くじら座タウ星に関してはかなり太陽に近い恒星として、地球人類から熱い視線を送られ続けています。
実際、視線どころか電波を発信したことさえあるほどです。
それが、オズマ計画です。
>オズマ計画
1960年にNRAO(アメリカ国立電波天文台)が最初のSETI《セチ》=地球外知的生命体探査の一環として電波望遠鏡を用い、くじら座タウ星系とエリダヌス座イプシロン星系へ向けて恒星間無線通信を試みた計画です。
ライマン・フランク・ボーム(『オズの魔法使い』の著者)が『オズのエメラルドの都』で書いたエピソードにあやかった名称です。
英語表記では"Project Ozma"となります。
この後、1973~76年の間に第二次オズマ計画が近傍恒星に対して行われたのですが、天体観測以上の成果は得られず中止と相成りました。
それでも、この試みは宇宙開発や天体観測の分野では大きな存在で、対象年齢低めの宇宙の本にさえ載っていたほどです。少なくとも20世紀末の時点ではそうでした。
21世紀に入ってからも観測は続けられていて、『放課後のプレアデス』の世界の西暦2015年でも、現実と位置付けはあまり変わってないことがわかります。
>「太陽帆ー!」と口に出しそうになった。
太陽帆(ソーラーセイル)は、ライトセイルの別名もあるように極薄の鏡で太陽からの光圧(光の圧力)で推進します。
つまり、この話で魔法陣を利用した帆は、太陽帆ではないのです。
実際運用されている太陽帆が太陽風を利用していると誤解されることがあるように、ここではその逆の誤解をして口に出しそうになったのです。
会長「太陽風が地球の地磁気と接触して発生する衝撃波に乗ったんだ!」
『放課後のプレアデス』第4話 ソの夢
この台詞とほぼ同時に大きく展開された魔法陣の帆がたわみます。
会長の説明にあるように、すばる達が魔法陣を利用して推進力に変換したのは、太陽風と地球の磁気圏が接触する際に発生している衝撃波なので、太陽帆の光圧推進ではなく電磁推進の一種だと思われます。
太陽風は太陽から吹き出しているプラズマ(極めて高い温度でイオン化した粒子)のことで、恒星では同じような現象が見られることから太陽系を超えて宇宙全体で捉える際には恒星風と呼ばれます。
プラズマは、固体、液体、気体に続く物質の第四の状態です。
水素にたとえると、氷、水蒸気、水(酸化水素)、プラズマ、なのですが、現在の技術ではプラズマ状態の物質を長時間保持(捕獲)することができません。
超伝導磁石による短時間の磁界封じ込めが精一杯で、もしこれが長時間、それこそほぼ恒久的に保持できれば核融合炉の実用化も夢ではありません。核融合炉がプラズマを扱う最も身近な科学になって欲しいものです。
とまあ、20世紀のオカルトブームにUFOや大気圧プラズマ現象が利用されて、オカルト方面の知識だという誤解がありそうなので、話が横道逸れるのを覚悟で書いておきました。
わかっていてネタにしちゃうのは可!(竹本泉調)
地球の周囲──磁気圏を持つ惑星全ての周囲──には、バウショックと呼ばれる太陽風(恒星風)が惑星の磁気圏界面に近づくと風の速度が一気に落ちる境界があります。
そのため太陽風は、磁気圏を避けるように流れ、本当に風向きや太陽と地球の位置関係による強弱が存在するわけです。
恐らく会長は、太陽風が磁気圏が接触する際に、風が月の方へ流れるタイミングを狙って魔法陣で磁場を形成して荷電粒子を受け止め、超強力な磁石が反発し合う勢いさながらの加速を掛けたのだと思います。
展開時に帆の本体からすばる達が距離を取っているのは、衝撃を受け止めやすいようにするためと、太陽風に含まれる宇宙放射線の影響を可能な限り避けるためでしょう。
なお、先に書いた様に太陽風のプラズマはイオン化した粒子なので、電荷を持った素粒子(イオン化した原子)である荷電粒子でもあります。
宇宙空間では一度加速を掛けてしまえば、減速するまで同じ速度で進み続けます。狙った軌道に乗るために必要な速度を初期加速で得られれば、あとはそのままでいいわけです。
つい先日、小惑星探査機はやぶさ2がイオンエンジンによる地球接近のための最終加速を一定時間行ったのと同じ理屈です。
それだけの速度を発揮できる推進力を発生させた魔法陣には、とんでもない量のエネルギーが蓄積されているので、謎の少年の襲撃をかわしたとき、魔法陣がほどけるとその膨大なエネルギーが全方位に解放されてしまったわけですね。
物理に詳しい人なら、ローレンツ力あるいはクーロン力などの用語を交えて、もっと端的に解説できると思うのですが、いわゆる完全な文系人間で、高校生の頃に図書室で古いブルーバックスを趣味で読んでいた知識を独自に更新している程度の私ではこのくらいが限界です。
>IKAROS
JAXA・ISAS(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所)が開発した小型ソーラー電力セイル実証機のことで、interplanetary kite-craft accelerated by radiation of the Sun(太陽放射で加速する惑星間凧宇宙船)=IKAROS《イカロス》です。
IKAROSは太陽帆以外の推進装置を一切装備しておらず、発電も太陽光を十分に受けられる位置にないとできないため、運用期間内で光を受けられない期間は冬眠(スリープ)モードに移行して、次のチャンスを待ちます。
通算4回目の冬眠モード明けに地球からの電波受信に成功したのが2015年4月23日で、ほぼ『放課後のプレアデス』の放送時期と一致します。正確には3話が最速で放映された直後くらいでしょうか。
活動時間が限定されるのと引き換えに運用期間は極めて長く、2010年5月21日に金星探査機あかつきの相乗り衛星としてH-IIAロケットで打ち上げられてから2020年9月現在も運用中です。
見た目は正方形の凧ほぼそのまま。厚みは驚きの薄さ0.0075mm。10枚重ねても髪の毛(0.1mm)よりも薄い鏡の膜が本体で、四方にウェイト(錘)を付けて遠心力で展開する方式を採用した世界的にも珍しくユニークな宇宙機です。
海外の太陽帆との最大の相違点は、本体その物が帆でありなおかつ支柱や軸がないことです。
原理は異なりますし、放送時期は偶然の一致でしょうが、魔法陣の太陽風帆はIKAROSの太陽帆を意識しているとも思います。
五芒星の頂点で展開した魔法陣を繋いでいる5人の魔法使いの姿は、帆膜の頂点にウェイトを備えて太陽帆を展開するIKAROSさながらでした。
>月面で見る夢を冷めた目で分析するけどお菓子の世界はスルー
お菓子でできた月を食べちゃうすばるを「ごめんよ、すばるん。私の深層意識は君のことをアホの子だと思っているようだ」なんて言っていますが、そこは冷静に見ておきながら、そもそも月がお菓子でできているという部分は気にしていないのですよね。
目覚めてから自分一人の夢ではなかったことが判明するわけですが、そのことを知らない時点で、ファンシーというかメルヘンチックな世界を作り出したのは自分の深層意識であるらしいことは気にしてない……。
ということは、ひかる自身にそういった種類の可愛いものが好きで、自覚しているのだと思います。可愛いものが好きと言えばあおいですが、ひかるは特に隠そうとしないのと強い執着を示さないので、その部分でいじられない(いじれない)のでしょう。
>「どうしよう」って(中略)布団被ってる姿
Bパートの夢のシーンでひかるがすばるに語った7年前の出来事です。
起き上がって両手を見つめ、ベッドを出てあの流星雨を見る直前ですね。天井を見たまま掛け布団を持ち上げてしまう絵は、アバンで防音室のピアノの前に行って楽譜に見えた音を書き込んだときの嬉しさと喜びが入り交じった笑顔と重なり、怖れと不安がじわっと心に染みてくる感じがあります。
そして、そうした自分の行為を悪いことと捉えてしまう部分にひかるの心根が表れていて、「ああ、優しい子なんだ」と視聴者の心が掴まれるシーンではないでしょうか。
感想にも書きましたが「(父親から)たぶんその後一切触れられなかったのだろうなぁ」と思います。
ひかるの心情としては、「取り返しの付かないことをしてしまった」という思いがあって、その思いが強すぎるために自分からは言い出せなくて。
いっぽうで、彼女の聡い部分が「父にとっては取るに足らないことなのかもしれないし、自分の仕業だとはわかるだろうから本当に〝悪いこと〟なら父から言うはず」とも考えていて。
この優しい部分と聡い部分がぶつかり合って、真剣に考えてしまうからこそ選べなくなってしまった──先に進めなくなってしまった──のではないのかなぁと思います。
この、行き詰まってしまって選べない/選ばないという部分は、プレアデス星人とも似てますね。
ひかるが「(魔法使いとして選ばれる)資格は十分だよ」とこぼすのは、この事に気付いているからだと思います。
>お茶目で意地っ張りで可愛い
ふとした思いつきでホワイトボードに「学校→月!」と書いちゃう茶目っ気があるかと思ったら、すばるに「お父さんの気持ち(曲)聞きたくないの?」と聞かれてカケラを確定する瞬間に(半ばモノローグで)「だって、聞いちゃったら絶対泣いちゃうもん。そんなところ誰にも見られたくない(←たぶん格好悪いと思っている)」と妙なところで意地っ張りなのが、ひかるという女の子なのですね。
涙を見られたくないのも、「知ったようなことを言って誤魔化している」と夢の中ですばるに本音を漏らすのも、その夢の内容が共有されていたことを知ってからは、すばるの問いをはぐらかさずちゃんと答えるのも、素直で嘘をつけないことを自覚しているからこそなのだと思います。
部室に帰還して涙の理由を問い詰められたときも、必死に話を逸らそうとするものの、すぐに嬉し涙だとバレてしまうわかりやすさ(素直さ)が窺えます。
ここでの可愛い、というのはそういう年頃の女の子らしさ良く出ているとう意味です。
ひかるについて
最初はひかるが一番好きなキャラでした。登場時の第一印象から良かったのですが、第2話の「むふん。ちょっと思いついたことがあって」と言ういたずらっぽい笑顔とか、トリックスターっぽく見えてむしろ周りを取り持つバランサーの位置にいるところは好みのタイプです。
率直な物言いは的を射ていてすがすがしいし、普段の振る舞いは割と雑なのに5人の中で誰よりも繊細な部分を持っていて、根が優しいところなんて可愛いじゃないですか。
ひかるは5人の中では比較的わかりやすい子でした。こういうタイプの友人知人に心当たりがあるからだと思います。ついでに、この記事を書いていてもろにブーメランが飛んでくる部分がいくつかありました。
こうした自分が知っている誰かの一面であったり、自分自身の一面であったり、経験したことだったり……と、現実との共通点や接点が深い部分にある作品は、見る人に与える印象も強いと思うのです。
そして、アニメのキャラ自体は架空の存在ですが、キャラにとってアニメで描かれる自分やその世界は現実だからです。
これは何も映像に限らず、漫画でも小説でもゲームでも同じだと考えています。
もっとも、人によって受け取り方は違うので、ある人にとっては現実味のある共感を得られても、別の人からは全くの絵空事にしか感じられないこともあります。
「全ての種類のイエス」を用意することは不可能ですから、この辺のバランスが難しいところですね。
サポートの御礼
前回の記事で「(菅浩江さん著の)小説版は読んでいない」と書いたところ、micromillionさん(@MicrMilli)よりまさにその『放課後のプレアデス みなとの星宙』をnoteサポート代わりという名目で寄贈されました。
つまり、頂戴しました。
この本は「そのうち入手困難になるだろうから、その時読みたい(読ませたい)誰かに譲るため」1冊余分に確保していたのだそうです。
実は佐伯監督の小説の存在を教えてくださったのも、micromillionさんです。お陰で記事の内容が充実しました。
ちょっと悩ましいのは、どのタイミングで読むべきか? ということでして、折り返し地点となる6話辺りか、それとも終盤辺りを書く頃にするか。いっそ全話分書いた後に読んで、『みなとの星宙』を含めた総括の記事を書くべきか……と贅沢な悩みを抱えています。
真面目な話、いまではアニメやアートワークと並ぶ『放課後のプレアデス』の貴重な一次資料ですので、できることならこの連載記事に反映させたいと思っています。
micromillionさん、本当にありがとう御座いました。
大切に読みます。
今後の連載について
小説で言うところのプロットのような青写真は用意してあるのですが、気付けば「アニメ1クールのペースでやる気か?」という有り様です。
正直なところ、紙面の制限がないので書いてみないとわかりません。
もっとも、どんな文章も書いてみないとわからないのは同じなので、制限がある場合なら書いてから交渉するか、泣く泣く削るかのどちらかなのですが……。
参考までに、公開前の添削で大体20パーセントくらい削っています。
あと、勘違いして覚えているところがあって、確認のために結局もう一回見る羽目になっているので、Blu-ray Discを勢いで全巻揃えておいたのはこのためだったのかもしれません。
そんなわけで次回は土星へ行きます。いつきちゃん回です。
参考文献
しきしまふげん『現代萌衛星図鑑2』三才ブックス
佐伯昭志『ソの夢 ――(放課後のプレアデス 第四話「ソの夢」より)――』pixv
『グリーゼ近傍恒星カタログ』ユニオンペディア(現在最も手ごろな参照資料)
その他、雑多な資料。
※今回のヘッダーは、Mitakaでシミュレートした2015年の月と地球の画像です。
ご支援よろしくお願いします。