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今日の一冊(ヴァイオリニスト、テディ・パパヴラミ自伝)

音楽家の考え方や感じ方、生き方にとても興味があり、そういった本をよく手に取って読んでいます

アルバニア生まれのヴァイオリニスト、テディ・パパヴラミ氏による自伝『ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ』について書きます

先日、この本に出会うまで私はパパヴラミ氏のことを知りませんでした

知らないヴァイオリニストが書いた自伝、それも弱冠22歳までを描いた本です。図書館の音楽関係の本棚に見慣れない本があるのをたまたま見かけて手に取り、ぱらぱらとページをめくってみる

第10章「パリでひとり」のところをさっと読んでみると、11歳で留学のために、アルバニアからパリへ親に付き添われて出てきて、これから音楽院生としてたったひとりでの生活が始まろうとしているところだった

フランスでの暮らしに興味を持っていることもある私は、たちまちこの本に惹きつけられ、借りて読んでみることになった

この本では、当時共産主義国だったアルバニアから、音楽に一生をかけるため、危険を侵してフランスへと亡命をする経過までもが、詳細に描かれていて、「ここまで赤裸々に書いてよいのだろうか?」と読んでいる私がすこし心配になってしまうような内容も含んでいた

感銘した箇所には、ふせんを貼りながら読む習慣があるのですが、この本には6箇所ふせんがつきました

具体的な内容は省いて、どんなところに感じいったのか、簡単にご紹介します

1. 演奏家として到達したい目的地までの道のりが、あまりに遠く感じられたときの心のうちを表現したところ

2. 作家マルセル・プルーストの著作についての考え

3. 演奏家にとって、感覚というものに対する束縛と自由についての考え

4. 亡命により祖国の自宅が壊されてしまったときの気持ち

5. アルバニアの共産主義が崩壊して、亡命後に初めて生まれた国を再訪した際、祖父と交わした会話での祖父の言葉

6. 音楽家として以外にも多彩な仕事、経歴をもつことになったことについての思い


事実は小説よりも奇なり、を地でいくユニークさと人間ドラマの感動があり、音楽にとどまらない幅広いテーマで考えさせられることが多く、充実した読書体験になりました

早くも私にとっての2024年のベスト1候補の1冊です

私としては、この本を日本人の私が読める形にしてくださった、翻訳者の山内由紀子氏に感謝しています。パパヴラミ氏の筆力あってこそとは思いますが、独特の翻訳もすばらしいと感じます

そして、1971年生まれのテディ・パパヴラミ氏は今53歳になるかと思います。23歳以降の自伝(続編)を読んでみたい気持ちがあり、フランスでもまだ出版されていないようですが、今後どうなのでしょうか。期待したいと思います

肝心の音楽、演奏についてですが、読後に、配信されているパパヴラミ氏の演奏曲を私なりに少し聴いてみた範囲では、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ集に興味をもちましたので、また機会があればじっくりと聴いてみたいと思っています

fin



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