【アニメ感想】『パンダコパンダ』を観ました!

 監督・演出高畑勲、原画・原案・脚本・画面設定宮崎駿の中編作品です。両親がいないミミ子の元へ、パンダの親子、パパンダとパンがやってきます。一人と二匹のほのぼの物語になります。

 本作では、劇的な展開、現代アニメの画面の豪華さはありませんが、動く絵のおもしろさ、アニメーションの魅力に詰まっています。うれしいときに逆立ちするしぐさ、飛び跳ね、駆ける単純な動作に、視線が食い入るように吸い込まれていきます。

 特に本作の中でおもしろく感じたのは、柔らかさ・硬さや軽さ・重さが見た目に反する描き方がなされたところでした。例えば、パパンダとパンが動物園に追われている際、彼らは野原で牧歌的にも、縄跳びをしています。そこへ、パンダ確保の賞金を狙う少年二人がやってきます。彼らはいかにも獰猛そうな犬を連れており、犬は少年のリードから逃げて、パパンダに飛び掛かります。
 しかし、パパンダの希薄に気圧された犬は、横にいたパンに襲い掛かります。犬はパンの頭に噛みつくも、余りの硬さに退いてしまうし、逆にパンは犬に迫って、軽々しく犬を持ち上げてしまいます。そのまま、飼い主の少年の元まで、腕一本で運び、飼い主へ投げつけます。そうすると、飼い主は犬の重みを支え切れず、飼い主も犬も倒れこんでしまいます。

 このいかにも獰猛そうな犬のゆったりした動きは、力がありそうで重量を感じさせますが、これをパパンダは威嚇だけで、パンは石頭で牙を受け止め、犬を軽々持ってしまいます。このギャップに思わず、笑みがこぼれてしまいました。しかも、そのギャップを、犬のしぐさやパパンダ・パンの振る舞い動きで表現してしまうのは、ザ・アニメーションと呼ばざるを得なく、感動してしまいました。

 また、パパンダが様々なものを破壊してしまう描写も魅力的でした。彼曰く、座られることを嫌っている椅子は、彼が腰かけたとたんに粉々になり、彼がダムの階段を登っていく際、手すりをまるで柔らかい粘土でもこねるように、破壊していく様は痛快でした。
 その直後に、ダムを閉門するレバーを彼の怪力で回転させます。さび付いて硬くなっているため、パパンダがぐっと力を籠めると、一瞬逆方向へ戻してから、回転させると、ある地点まではゆっくりと回り始め、その地点を越えると滑らかにレバーは回り始める。レバーの周りとパパンダの力の籠め方がち密に描写され、「さび付いたレバーが回り始める」という現象を、アニメーションによって、私たちは目撃することができます。これこそ宮崎駿アニメーションの魅力と言っても過言ではないでしょう。


 以上で、簡単に『パンダコパンダ』の感想を書き散らしてきました。主にアニメーションの魅力について書いてきましたが、本作はそもそもの構図もよい。そうした計算された構図の中で、キャラクターたちが思い思いに動き回っていました。ばっちり決まった構図に、キャラクターたちの躍動が合わさることで、子ども向けとはいえ、物語だけでは計り知れないアニメーションの魅力が存分に詰まった作品に仕上がっているように感じました。


スタッフ・キャスト情報

〇スタッフ
原案・脚本・画面設定:宮崎駿
監督:高畑勲
作画監督:大塚康生、小田部羊一
美術監督:福田尚郎
撮影監督:清水達正
音楽:佐藤充彦

〇キャスト
ミミ子:杉山佳寿子
パパンダ:熊倉一雄
パンちゃん:太田淑子
おばあちゃん:瀬能 礼子
おまわりさん:山田康雄
動物園の園長さん:和田文雄(現・和田文夫)

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