不思議な味わい
湖畔の水でぼわぼわに膨らんだ
ブタ耳パンを
黒ずくめの人物は
大事そうに噛み締めた
どうやら暫く
なにも口にしていないようだった
このパンはどこで作られている
という思念波が来たので
湖畔のほとりのパン屋が作っていた
と返すと
今度行ってみる
とのことだった
そういう思考もあるものだなぁと
少年は感心した
少年の脚を掴んだままの手は
感電して痺れているのか
なかなか離せないままでいた
そのまま引き上げてはくれまいか
懇願する思念波に同情したが
首長竜の一件を思い出すと
少年は行動を躊躇った
きみたちはいきものを殺している
奪われた生命は
ひとつだけじゃないかも知れない
きみたちはそれ相応の報いを
受けるべきだ
少年の顔は
死神のそれにも似ていた
◆ 戦利品 ─【ぶり返す怒り】