普通の主婦がなぜトライアスロン? 【 承 】
43歳。フルマラソン33kmでリタイヤ
2021年。
4月に仕上がる初めてのロードバイクを乗り回す準備をミニベロで1年かけてやってきた。その仕上げにフルマラソンを走ろうと、2020年の夏には3月の大会をエントリーしていた。
ロードバイクも注文してウッキウキの中、いよいよマラソン大会が近づいてきた。ん? 練習?
してませんけど何か?
そもそも完走すれば良いわけで……
30代はそれで良かったのよ。本当に。
34歳初マラソンも練習は1週間前に3〜5kmを2回走っただけで、制限時間30分前にはゴールできたの。そんな記憶に甘えてスタートラインに立った43歳。むくんだ脚を隠すロングタイツがびっちびちで窮屈極まりなく、上に履いたランパンもぱんぱん。初心者明明白白。「まぁ、完走するけどねぇ」くらい気持ちには余裕があった。
が、しかし、スタートライン超えたと同時に脚が動いていかないことに気づく。「体が温まれば大丈夫」なんて思ってみたけれど、太腿がぜんぜん上がりませーん! 5km!? へ? まだ5km? んーーーよく言う"20km過ぎまで眠ったように…"っていうアレがイメージできませんけどっ! 15km過ぎから歩きたくて仕方なくて、歩かないって決めていたから何とか踏ん張って、やっとの思いで20kmのコールドスプレーエリアに到達。私にとっては気休めにしかならなかった一瞬のスーッとした感覚。コースを折り返すと最後尾のランナーが近いところまで来ていることが分かって、もがこうにももがけない。そんな足など残っていない。もう止まる寸前のギコギコ足をやっと摺り足で前に出している感じ。あー情けない。
30km辺りのアップダウン……「あーここまでか」33km地点で立ち止まる。もう脚が前にも後ろにも動かない。初めての感覚で口だけがよく動く。ボランティアの方々に誘導いただいてエマージェンシーシートと水のペットボトルを受け取り回収車に乗り込む。バスのステップがキツい。最終チェックポイントのランナー通過まで待ったのだろう、ずいぶん長い時間バスで待機した後に動き出す。上半身は適当に動くので気づかなかったが、いよいよバスがゴール地点に着いて、さて降りようかと踏ん張って立ち上がる。「んぁ? 脚が動かない」後部の座席にいた方達から先に降車していただき、私は通路を挟んで左右の座席に掴まり立ちしてヨチヨチ前進する。あー歩けない。バスの外で見かねたスタッフが車椅子を用意してくれて、荷物置き場まで連れて行ってくれた。「ありがとうございます。ありがとうございます……すみません。ありがとうございます。」ずっと頭を下げて、特別車両に乗っている恥ずかしさと、情けなさと、運動をしてこなかった後悔が湧き上がってくる。「もう二度とこんなことになるものか」と。
着替えもようやっとこなして、会場を出てすぐタクシーを拾った。周りのランナーは自分の足で歩いて地下鉄の駅まで向かっている。スタスタ歩く人もいれば、ぴこぴこ脚を引きずりながらも前へ、誰かの肩を借りながらだったりとにかく自分の力で脚を運んでいる。私もその予定だったのに……新幹線の駅でタクシーを降りてもまだ試練は続く、ホームにたどり着くまでの時間を考えて指定席を取って……お手洗いもとにかく時間がかかる。新幹線ホームは完走賞の紙袋を手にした人ばかり。私はいかにも大会後の状態なのに、その紙袋を手にしていない。「ー来年こそ」そんな思いを持ち帰った。
新幹線の中で鎮痛薬をペタペタと膝上やらふくらはぎに貼って一眠り。
博多駅に迎えに来た主人から一言「それはもはやケガだな」「当分安静にするか、プールでも行くんだな」と。
痛みで動けないというのが完走できなかったことより敗北感が強かったので、近所のスポーツジムに入会。月に3度くらいミニベロでちょっと遠出するくらいしか運動の習慣がない私が。
43歳。25m泳げません
いざジム! いざプール!
入り口から一番手前が歩行レーン。その次が途中で立ち止まって良いレーン。立ち止まらずに泳がなければならないレーン……となっていて、もちろん私は一番手前で。
えと、水着……5年ほど前に市民プールへ行くときに買ったユニクロのセパレートタイプのものがあったので、それを身につけて端っこのレーンで1時間。「歩けるじゃん!」「浮力に感謝!」プールが楽しい。
何日目かに思い切って泳いでみた。途中で立ち止まっていいレーンですとも。で、案の定立ち止まる。クロールってこれで合ってるっけ? えっ、全然進まないんだけど? 25m泳げないじゃん!!
せっかくジムに通い始めたのに、泳げないのは勿体無い。考えるより習うのが早いと"初級のグループレッスン週一回"に申し込む。やっぱり、初めが肝心。人生の先輩方に混じってチヤホヤされながら超やさしいコーチのレッスンを受け始める。たくさん褒めてくれるのでとても良い気分でレッスンを受けられるし、次も褒められたいから練習もそれなりにできる。こうして、足が辛い時でも身体を動かすことを継続できる機会を獲得した。
さぁさぁ!
まもなくロードバイクが仕上がりますよー!
オラわくわくすっぞ!
ロードバイクで初めて参加するイベントのエントリーも済ませたっ!