ヌーベルキュイジーヌに対する理解
https://www.amazon.co.jp/dp/B000J8U9PO/
資料としてほしいのですが、値段が高騰していて中々手を出す気になりません。この本の書評の中で、ヌーベルキュイジーヌの記述をされている方がおられて参考になりました。
おそらくなのですが「美味しんぼ」(私はこの本を愚作中の愚作とみなしています。この本によって広まった誤解はいまだに悪影響を与えていると考えています)を始めとした著作群によって、現在を生きる大半の人がヌーベルキュイジーヌに対して持っている感想は「素材にゴテゴテと味をつける『古くて悪い』フランス料理が『軽くて良い』フランス料理に変化した。でも和食の方がもっと素材を活かしている」だと思います。
この点については多くの誤解があると私はとらえていて、私なり(念のためですが大変な味音痴です。大体のものは「おいしい」という人)の解釈を記載します。
まず、欧州の野菜・果物はいずれもいまだに原種に近い味です。日本の食材に比べて「硬い・渋い・苦い・甘みが少ない」そして肉類は日本人の基準からすると「獣臭い」です。
つまり、「日本の食材は、品種改良・育成法の改善・品質管理によって『そのままでもおいしい』」のが本当のところです。ただこれを「味わいが薄い」という人もいますが、現在日本に住んでいる大多数の人が食材に求めているのは前者の「食べやすさ」です。(私もそうです)
だから、日本の食材を適当に買ってきて適当に煮たり焼いたり炒めたりして、醤油か味噌で味付けしてしまえばそんなに不味いものにはなりません。極端に言えばレシピが無くても何とかなります。
ただ、欧州の食材はそうはいきません。現在においても癖が強いのに、まして物流が発達していなかった数十年前は、鮮度においても大きなばらつきがあったことは容易に想像できます。
つまり、伝統的なフランス料理は「食材の質に比較的左右されづらく、手をかけることで美味しい料理を提供するための方法」であったと考えると「ゴテゴテと手をかける『悪い』料理法」というイメージはだいぶ変わると思います。
なので逆に言うと、ヌーベルキュイジーヌというムーブメントがいかに驚きだったかがわかるわけです。私もうろ覚えなのですが「食材丸かじり」のパフォーマンスがどれだけ当時の欧州にとって衝撃だったのかを想像すると、結構興味深いです。
「素材を活かす」と言葉で言うのは簡単ですが、その裏には生産者の皆さんの不断の努力がある、という事を頭の片隅において、おいしく食材を無駄にせず食べていきたいものだなと思うのでした。