サルの自撮り事件
こんにちは。
昔むかし、ソニーのCMでお猿がウォークマンを聴いていました。お猿の名前は、チョロ松。CM撮影では終始、堂々と撮影していたものの、数十時間に及ぶ撮影で立ち会った人間の方がフラッフラになったようですね。
さて今日は、サルが自撮りした写真の著作権が問題となった「サルの自撮り事件」(Naruto et al., v. David J. Slater, et. al)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
イギリスの写真家デイヴィッド・スレイターは、インドネシアに行ってサルの撮影をしていたところ、クロザルのナルト君がデイヴィッドさんのカメラを使って自撮りを始めました。イギリスに帰ったデイヴィッドは、その写真を写真集にして出版しました。すると、動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」は、デイヴィッドがクロザルのナルトの著作権を侵害しているとして、ナルトが自撮り写真の著作者であることの認定を求めて、カリフォルニア州北地区連邦地方裁判所に提訴しました。
2 PETAの主張
ナルトの代理人として私たちから言わせてもらうと、デイヴィッドはナルトの写真を無断で販売することにより、ナルトの著作権を侵害している。写真の作者はクロザルであって、デイヴィッドに著作権は発生しない。
3 デイヴィッドの主張
そもそも、サルには裁判を起こせる資格はない。また、ナルトのような動物に対して著作権法は権利を付与していない。インドネシアに行って、クロザルが触れるようにカメラをセッティングして写真が撮影されているので、その写真の著作権は私にあるはずだ。
4 カリフォルニア州北地区連邦地方裁判所の判決
著作権法には動物に関する記載はなく、これまでの判例でも著作権を検討する場面では人に関して問題とされてきた。著作権局のガイドラインでも、著作物として認められるためには人によって創作されていなければならないとされているため、自然、動物あるいは植物によって創作された作品を著作権局は登録しないとしている。するとクロザルのナルトが偶然シャッターを押した写真について、ナルトが著作権を有することはできない。
よって、PETAの請求を棄却する。
5 控訴審で和解
今回のケースで裁判所は、クロザルが撮影した写真について動物が著作者になることができないとして、PETA側の請求を認めませんでした。しかし、その後の控訴審では、PETAとデイヴィッドが和解し、今後はデイヴィッドが写真販売の売上の25%をクロザル保護に寄付するとの合意に至りました。
日本でも、AIによる著作物が問題となる場面で一つの考え方として参考になりそうですね。
では、今日はこの辺で、また。