「現行憲法は無効だ!」事件
こんにちは。
憲法と聞くと「難しくてよくわからない」、「声の大きい人が議論をヒートアップさせている」と感じる人もいるかと思います。しかし、「国家を縛るルール」と考えるとより理解しやすくなりますね。
さて、そんな憲法が無効ではないかということが争われた事件があります。いったい、どのような理由で無効だと主張しているのかを考える上で、「現行憲法は無効だ!」事件(最決昭和40年7月6日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
不動産競売で、競落許可決定が下されたことに対して即時抗告した者が、その抗告が棄却されたことから、「日本国憲法には大日本帝国憲法下で成立した法令を引き継ぐとの規定がないので、日本国憲法が施行すれば、それらの法令が存在の根拠を失うはずだ。だとすれば、大日本帝国憲法下で成立した競売法とその法令を適用した原審決定は破棄を免れない。また、大日本帝国憲法の根本原理は、天皇主権にあり、日本国憲法は主権在民にあるのだが、大日本帝国憲法における天帝主権の規定は絶対に改正を許されないものであったから、日本国憲法における主権在民の宣言は大日本帝国憲法改正の限界を越えており無効である。日本国憲法の根本原理が無効である以上、日本国憲法は無効であり、日本国憲法の下にある裁判制度も無効となるので、原審決定も無効である」と主張して抗告しました。
2 最高裁判所の決定
憲法施行前に適式に制定された法令は、その内容が憲法の条規に反しな
い限り、憲法施行と同時に効力を失うものでなく、反面において、その内容が憲法の条規に反するときは、効力を有しないことは、当裁判所の判例とするところであるが、競売法が憲法に違反して失効する所以を憲法の具体的法条を掲げて主張していないから、抗告理由として不適法といわざるをえない。
高等裁判所がした決定につき最高裁判所に対し不服を申し立てる権利は、憲法32条の規定によつて保障されたものであり、また、最高裁判所が申立を審判する権限は、憲法76条の規定に淵源する。したがって、これらの規定を含む憲法の全体の無効を主張しながら、当裁判所に原決定に対する不服を述べる本論旨は失当というべきである。
よって、抗告を却下する。
3 日本国憲法無効論
今回のケースで裁判所は、日本国憲法が無効であると言いながら、憲法上の裁判に従って決定に不服を述べるのはおかしいとして、その主張を却下しました。また、大日本帝国憲法制定以前から、成文法の如何にかかわらず、日本には万世一系の天皇が国家の最高の地位にあり続け、国家権力の正当性を保障する最高の権威であり続けたことを意味する国体というものがあり、少なくとも1500年以上の重みがあることから、日本国憲法は天皇から政治的権威を奪い、象徴天皇制を採用しているので、国体違反により無効との意見を軽く受け流しています。
その他にも、日本国憲法の制定過程で、日本側に自由意思がほとんどなかったという理由で日本国憲法が無効であるとの意見もあります。
これらの意見が、私たちの憲法を深く考察するきっかけとなれば幸いです。
では、今日はこの辺で、また。