30分
休みの日。息子を散歩に誘ってみた。
「どこいくの?」
「川かな」
「えーー。またかわーー!?」
家の近所で何度も行ったことのある河川敷。息子は「また」と言うけれど、最近は行っていなかったハズである。
何だかんだ言いつつも準備をして出発。川に到着してしばらくその辺を歩いた後、息子は手にいくつかの物を持っていた。
小さな木の棒、石、ススキの穂?を分解したものである。
それを持ってどこかに移動しようとしていた。
「どこ行くの?」
「かわのところにいくの」
川の所、つまり、水面近くに降りられる場所だと思われる。前から水にボチャボチャ投げるのが好きなので、それなのかな、と思いつつついていってみた。
水面近くに来たものの、息子は一向に投げようとしない。
「かぜでとんだらだめだからーこうしておいてー」
まずはススキが飛ばないように石を重しにした。
「つぎにこうします。そのあとまるめます」
ススキを一本取って木の棒で包丁のようにギコギコした後(これにどういう意味があるのか全くわからない)、それを結んで輪っかにしていた。
「こっちのみじかいのをとおしますー」
短いススキを輪っかに通して満足そうに微笑む。とりあえずこれで完成らしい。
「つぎに、もういっぽんとります」
長いススキを一本取って、またギコギコした後丸めようとする。これは一体、いつまで続くのだろう。わざわざ水面近くに来てやる意味はあるのだろうか。
さらさらと水が流れ、流れる音も小さく聞こえる川の側は、大変落ち着く場所だった。私はぼーっと川を見ながら、たまに息子を見ながら、ただ川の側に立っている。
息子は相変わらずギコギコと結ぶを繰り返し、全て終わった後は棒を水につけて筆のようにして何かを描いていた。
「そろそろお昼だし、帰らないといけないよ」
「えー。もっとあそぶー」
結局30分くらいはそこにいたのではないだろうか。子どもがそういう生き物だというのはある程度わかっているつもりだったけれども、それでも棒と石とススキだけでその場で30分も遊べると思わなかった。あまつさえまだ遊びたいと言い出すとは。
何が楽しいのか、私にはちょっとわからなかったけれども。息子が楽しいならそれでいいし、私も水の様子に落ち着けたので良かったかなと思う。
何だか不思議な30分。でも何となく、充実していた気がする。
ではまた明日。