本。毒になる親
今日は本の話。『毒になる親』(スーザン・フォワード著、玉置悟訳、毎日新聞社)を読んだ。
読書専用機でオススメされたこの本。書かれたのは1989年のことらしい。「毒親」という言葉は最近でこそ一般的に使われているが、30年も前から親を「毒」と表現した人がいたのだな。
著者はカウンセラーとして活動しているらしい。著者の元を訪れる人は何かしら苦しんでいることがあるわけだが、その大元の原因が親であることは多いようだ。子ども時代に親から支えてもらえず、むしろ逆に心や体を傷つけられた。そのために健全な成長が妨げられ、大人になった今も様々な問題を抱えている。
しかし傍から見て明らかに親が原因だと思っても、当の本人はなかなかそれを認められないらしい。親を悪く言うことにはどうしても抵抗があり、「自分が悪いのだ」という方向に考えてしまう。著者は言う。
自分を守るすべを知らない子供だった時に大人からされたことに対して、あなたに責任はないのである。幼い子供に対して親がしたことに関する限り、すべての責任はその親が負わなければならない。
逆に言えば、大人になってからのことは、自分自身に責任がある。だから、今現在の問題に対して向き合い、解決する努力はしなければならない。子供時代の親との関係に向き合い、自分をもっと生きやすい方向に導く。それは、大人になった今の自分にできることである。
本書では、カウンセリングに来た人の実際のケースを紹介しながら、毒になる親とはどういう人なのか、子どもはどういう影響を受けるのか、そこから抜け出すにはどうすればいいのか、ということについて書いている。
本当に深刻な問題を抱えている人は、カウンセリングを受けるなり、専門の人の所を訪れるのが良いと思うし、そういう人にこの本を薦めていいのかはわからないのだが。何となく親に対してもやもやしたものを持っているとか、自分が子どもを育てているとか、そういう人は読んでみてもいいのかもしれない。長くて読むのに時間がかかる本ではあるのだが、読みにくい本ではないし、読んで損はない本だと思う。
私自身、読みながら親との関係、子供時代を考えた。私の親は「毒親」というほどではなく、おそらく特別良くも悪くもない一般的な育て方をされたが、それでも私に対して期待していたことは沢山あったし、親の感情を察して行動したことは日常的にあった。特に長女ということもあり、「しっかりしなければならない、親の手を煩わせてはいけない、親を助けなければならない」という気持ちは強かったように思う。それはおそらく、親の姿を見てそう思わされたのであり、大人になった今でも持ち続けている感情なのだと思う。実際、親や実家に何かあれば率先して助けるし、他に兄弟もいる中、親側も一番頼ってくるのが私だ。
普段はあまり考えておらず、「そういうもの、普通のこと」だと思っていた感情や思考回路。しかし意外と親の影響でそうなっていることがあるのだなぁと自分を振り返って思った。
私の親が息子や他の孫たちに接する時、「そういう接し方はやめて欲しいな」と思うことがある。それはそのまま、私が子供時代にも受けてきた接し方であり、当時は「そういうもの」だと思っていたが、本音では嫌だったしやめて欲しかったのだろう。
自分の親との関係、自分の子どもとの接し方。いろいろと考えられる本だった。この本が30年も前に書かれたというのは本当に驚きで。けれどそれだけ、親との関係に悩む人は国や時代を問わずに沢山いるということなのだろう。できるだけ負の連鎖を断ち切り、健やかに育つ子が増えるといいな。
ではまた明日。