コロナウイルスの危機:日本の伝統工芸「金継ぎ」が世界に示す姿勢
伊全土都市封鎖より52日目のローマです。
4月26日に新たな首相令が発令され、5月4日からコロナウイルス感染対策を第2フェーズへ移行し、生産活動が再開されます。
5月18日からは博物館・美術館、6月からはバールやレストランの通常営業が再開となります。
一方で教員の高齢化が進むイタリアでは、校内での感染のリスクを下げるため、学校の再開は9月以降になりそうです。
第2フェーズに入り、規制が緩和されてもこれまで以上に一人一人が自分の行動に責任を持つこと、コロナウイルスとの共存が必要な時期。
油断できない状況はまだまだ続きそうです。
今、コロナウイルスの危機に直面する世界で、日本の伝統工芸の示す姿勢が注目されています。
イタリアの主要新聞紙“Corriere della Sera“に、「すべてうまくいくか?最後に傷は残るが、より強くなる。」という見出しの記事がありました。
記者は日本の伝統工芸「金継ぎ」を例に紹介しつつ、コロナウイルスの世界的危機に、どのような心持ちで立ち向かうべきかを提示しています。
金継ぎとは日本に何世紀も前から存在する、落下、衝撃によって割れたり、欠片となったりした陶磁器を漆で接着する伝統的な修復方法です。
落下や衝撃でできた傷は、金継ぎを用いて修復したとしても元通りにはなりませんが、反対に、修復された欠片は、ひとつひとつ金の装飾を施され、手間をかけられることで唯一無二のものになります。
また、金継ぎの跡は、トラウマ(未曽有の事態)に立ち向かった経験を示します。
起きてしまったことは消すことができません。
傷をなかったことにするのではなく、修復の跡(歴史)として受け入れ、教訓として今後に生かすことが必要です。
日本の伝統工芸に触れると、君はどう生きたいか?と問われている気持ちになって背筋がしゃんとします。
それは、伝統工芸品が日本人の生活と深く結びついていて、暮らしを通じて受け継がれたから。まるで、日本人を写す鏡のよう。
修復だけでなく、傷をも強化する日本の誇る伝統工芸「金継ぎ」。
その基本的な考え方が、改めて見直され、コロナウイルス危機に直面する世界に影響を与えています
私たちも、今こそ日本の芸術から欠片の合わせ方を学ぶべきです。
tre.
引用記事:「全てうまくいくか?最後に傷は残るが、より強くなる」
2020年3月27日CORRIERE DELLA SELA 「SETTE」,記者:STEFANELLI Barbara
https://www.corriere.it/sette/editoriali/20_marzo_27/ma-andra-tutto-bene-quando-finira-saremo-segnati-forse-piu-forti-e69b3bf4-6db7-11ea-9b88-27b94f5268fe.shtml
トップの写真:大切なお友達が金継ぎを施した花瓶☺️Grazie mille❤️
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