水嶋咲が生きる世界 ~ヲタクが考える多様性~

昨今のアプリゲームやアニメ・漫画において必ずと言っていいほど登場するようになったキャラクター、男の娘。

ひとくちに男の娘と言っても、色んな子がいる。

彼らは男の子として生まれ、女の子の格好をして過ごしている。その理由は様々だが、彼らは当然多くの悩みを抱えて生きている。

その悩み苦しむ姿は現実世界の性的少数者とさして変わらず、男の娘キャラが多くなったのも世相を反映しているのだろうな、と感じる。

だが、一人だけ他のキャラクターとは少し違った描かれ方をしているキャラクターがいる。

水嶋咲だ。


咲ちゃんには以前の小林さんの記事の中でも登場してもらったが、アイドルマスターSideMにおける私の担当だ。※アイマスシリーズにおける担当とは、プロデューサーの担当アイドルのこと。推しとはまた少し違う。

そんな咲ちゃんの印象的な台詞が

「本当のあたしでいられる場所…それがCafe paradeなんだ」


この「本当の自分」という言葉は歌詞・ストーリーなど様々な場面で出てくる。SideMを愛する者には骨の髄まで染み込んだ言葉だ。

だが、「本当の自分でいること」の難しさを現実世界に生きる私たちは痛いほどよく知っている。そんな私たちにSideMは希望を与えてくれるのだ。

今回は水嶋咲が生きる世界についてじっくり語りたい。

咲ちゃんの周りにはいろんな人間がいる。Cafe paradeの仲間、プロデューサー、315プロダクションのアイドルたち、そして同級生、家族。

ゲーム内で咲ちゃんの男の子の時の顔がはっきりと描かれることは無いが、ゲーム内の雑誌で確認できるように咲ちゃんは普段学校では男の子の制服を着ている。学校では男として生きているのだ。

また、咲ちゃんの父親は男らしく躾をしていて、それが咲ちゃんがフィジカルである所以でもある。

学校と家庭という学生にとっての2つの大きな居場所で咲ちゃんは本当の自分でいられないまま生きてきた。

そんな咲ちゃんがCafe paradeの仲間たちに出会い、自分らしく生きられるようになった。だが、Cafe paradeは単に咲ちゃんが自分らしく生きられる場所ではない。Cafe paradeはみんなで自分らしく生きる場所なのだ。アスランは独特の言葉遣いのままでいい。巻緒はケーキが異常なほどに大好きでいい。東雲はあんこが苦手でいい。そしてそれをすべて受け止めてくれる神谷がいる。咲ちゃんを迎えてくれた場所はそこにいるみんなが自分らしく生きることを実現していたから、咲ちゃんは自分らしく生きることができたのだ。

そして、それはCafe parade内だけで終わらなかった。315プロダクションのアイドルたちもまた誰一人として咲ちゃんの個性を否定しなかった。それは彼らが自分らしく生きているからだと私は思う。

SideMにおいて、咲ちゃんのかわいくありたいという願いは特異な存在、マイノリティではなく、誰もが持っている個性のひとつとして描かれているのだ。

また、咲ちゃんの描かれ方としてもうひとつ言えることは、咲ちゃんが誰よりも明るく、強い意志の持ち主であること。マイノリティにつきまといがちな闇や負のイメージを前面に押し出すのではなく、自分らしく、強く生きているという新しい描かれ方がされている。

時に難しい要求をつきつけられても、仲間達が断ってくれる。

昔からテレビなどではオネエタレントなどが面白おかしく取り扱われてきたが、SideMでは本人にとって嫌なことはさせない、という新しい時代にふさわしい対応がとられている。これは非常に素晴らしいことなのではないだろうか。

多様性という言葉のうしろに必ずと言っていいほどつく「認める」という動詞。私はこれに少し違和感を覚える。「認める」という言葉には認められる対象がなにか特別な存在かのようなニュアンスが含まれていると思うのだ。そしてそれはまたなんだか自分はあくまでも普通であって特別な君を認めて「あげる」というような雰囲気を私は感じてしまうのだ。

人は他人から見れば皆特殊だ。生まれた場所も昨日食べたものも違うのだから、もう私は他の誰とも同じでは無い。だから、誰しもが自分らしい姿というものを持っているはずなのだ。その自分らしさを達成することが他の誰かを居心地良くしてくれるはずだ。いくら「個性を認める社会に」と言われても、認められる側の人間が孤独を感じてしまっては本当の意味での多様性は実現されない。誰もが自分らしく生きるためにはまず自分が自分らしくあることが大切なのではないだろうか。

水嶋咲が生きる世界、315プロダクションは多様性の理想郷のような場所だ。それは一見すると特殊なように見えるが、実は315プロは色んな職業、年齢の人が集まる言わば社会の縮図なのだ。だから現実社会が315プロのように"楽しい"場所になるのはそう難しいことではないはずだ。そう信じて私は今日も咲ちゃんの担当をする。

ところで、あなたも315プロダクションのプロデューサーにならないか???????


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