猫が導いてくれた谷崎潤一郎のお墓。

画像1 桜の頃、染井墓地に行ってみた。そもそも巣鴨のかき氷屋「雪菓」さんに行った時に桜の名所と思い出して足を向けたのだけど。もう一つ思い出したのが、近くに芥川龍之介と谷崎潤一郎のお墓があるということ。「桜の森の満開の下」(文豪つながりで坂口安吾風)を歩きながら、お墓のある慈眼寺を目指す。本当に、染井墓地に隣接してる。案内板も見つけた。あれ、谷崎の名前がない・・・。どうして? 記憶違いかと思い、ネットで検索。やっぱり、ここにあるって書いてある。
画像2 あらあら、芥川のお墓は、こんな大きな道しるべも建てられてるよ。矢印をたどれば、ほらもう簡単に辿り着けた。ネットの説明では、谷崎は京都にもお墓があり、こちらは分骨扱いとのこと。だからかな? 案内板にもないのは。
画像3 芥川の墓石は、きれいに掃除され、お花も新しいのが供えられていて、存在感あってすてき。この時期ならではの、桜の花びらがそこかしこに舞っているのも、見られて良かったなと思う。それにしても。谷崎のお墓はどこなんだろう? 途方に暮れる。
画像4 その時、猫が私を追い越して行った。あ。いそいそとスマホを出して、撮影する私。猫好きのお友達がいて、猫を見かけると写真を撮って送る習慣がついている私。まずは、一枚成功。もっとのんびりした猫だと、動かずにいてくれるのだけど、この子は割とすばしっこい。あ、待って。もう一枚撮りたいから。
画像5 どんどん先に行ってしまい、見失いそうになったので、遠くからだけどもう一度撮影。猫特有のそっけなさで、スタスタと去って行く。そして彼方に消えて行った。「あーあ、行っちゃった」そこで我に返り、谷崎のことを思い出す。もう、あきらめようかな。だって、調べる術がない。猫の行く末から目を離し、真正面を見ると、なんとそこに谷崎のお墓が!
画像6 猫が連れてきてくれたとしか思えないタイミング。だって、本当に立ち止まった私の目の前が、こんな風景だったのだから。あまりにびっくりして、つい「えー!」と声をあげてしまう。なんだか昔話みたいな展開になってきた。さしずめ題名は「猫の墓案内」。後方に芥川の道しるべが見えるから、位置としては道一本違うだけなのね。猫に深く感謝して、お墓と対峙。
画像7 こんもりと剪定された木が、なんともかわいらしくて違うアングルからも撮ってみた。京都のお墓の方がメインなんだろうけど、こちらもしっとりとして良い雰囲気です。何より、誰もいないので二十代のころ初めて谷崎の作品を読んだ衝撃などを思い出し、しばし佇み静かな時間を味わうことができた。調べたら、そもそもここはご両親のお墓らしい。
画像8 他の日に人形町あたりを歩いていたら、生誕の地を発見。お墓に行った直後だったので、谷崎の一生を早回しで体験したような気分になったよ。なんとなく最初東京にいて晩年関西に行った文豪、というイメージが強いけど、最晩年は熱海や湯河原とまた東に戻って来てたわけで、その生涯の最初と最後を見たような気持ちになった。今ここには、あやかって「谷崎」というしゃぶしゃぶやさんが、営業されているよ。とても賑やかな界隈だけど、当時もきっとそう変わらない雰囲気だったと思われる。
画像9 中央区教育委員会による説明プレートも、あった。その人生をまとめちゃうと、こんな感じになるわけだ。読んでいるうちに、数年前に芦屋の谷崎記念館に行く予定を立てたので、「細雪」を再読しはじめたのだけど、なんと中巻で挫折したことを思い出した。ちょっとショックな思い出。だけど、もう一度挑戦するチャンスを与えてもらった、と良い方に解釈して、遠い昔に思いを馳せながら、看板の前から立ち去ったのでした。

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