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鶏胸肉活用法その1『薄く切る』

鶏胸肉は日本料理よりも洋食系の料理に向いていると思います。

日本の鶏肉事情はかなり変わっていまして、人気があるのは圧倒的にもも肉。日本は世界でも有数の鶏肉輸入大国ですが、その理由はもも肉が好きすぎで、国内産だけでは足りないから。昔から胸肉は売れない肉で、そのため価格が安いのです。とはいえ胸肉はサラダチキンのブームでもわかるように加工品原料としては人気で、品薄状態もあるというのだから歪さがわかります。欧米では逆で胸肉のほうが人気で高価です。このあたりは好みの違いですね。人気のお陰で調理法も色々とあります。

そのまま焼くパターンもいつかご紹介しますが、今回はエスカロップに切ります。エスカロップというのは薄切りという意味。

鶏胸肉は分厚いので、なかに火が入るころには外側がパサパサになってしまうのが難点。薄切りにすることでその問題は解消されます。繊維が長いと噛んでいて、パサパサに感じやすいので、繊維は断ち切るようにします。

今回は1枚の鶏肉を4枚に切りました。まだ厚いので、ラップで挟んで鍋底で叩きます。肉叩きを買ってもいいですが、一ヵ月に一回程度しか使わないのであれば鍋底かワインの瓶で充分に対応できます。叩くことで繊維が壊れ、やわらかくなります。

この形に切った胸肉に塩、胡椒、小麦粉をまぶして焼くチキンムニエルという料理はアメリカでは一般的。

今回は秘密平気を使います。クノールのチキンコンソメです。チキンコンソメ1個を手で潰し、オリーブオイル大さじ1~1と1/2で延ばします。

表面に塗って15分程度置きます。このアイディアのオリジナルはイギリスのシェフ、マルコ・ピエール・ホワイト。これ、なんのためにしているか、というと鶏胸肉の淡泊な味にコクをつけ、焦げ目をきれいにつけるためです。チキンコンソメには色々と味の成分が入っていますが、主成分は乳糖です。乳糖は溶けやすく、甘みがないので、こうした製品によく使われています。

で、この乳糖。砂糖(ショ糖)はカラメル化するだけなのですが、乳糖は鶏肉のタンパク質とあわさって、メイラード反応を起こします。それできれいな焦げ目がつくのです。チキンコンソメ1個に対して鶏肉1枚だと塩気は控えめなので、塩を足してもいいでしょう。

もちろん、チキンコンソメは人工的な味なので、ナチュラル派はオリーブオイル、塩、胡椒で味付けしてください。ただ、淡泊な鶏胸肉をおいしく食べるにはこれくらいのずるをしてもいいのかな、と思います。

高温のフライパン、またはグリヤードで焼いていきます。

鶏肉を入れたら中火に落として焼いていきます。

両面焼いてからよく休ませます。中心温度は63~65℃がおいしいと思いますが、安全を優先するならもっと焼いてください。。

クレソンとレモンを添えます。写真は夏の青いレモン。レモンではなく、ライムでもなんでも好みの柑橘を使えばOK。

まとめると鶏胸肉活用法の最初のパターンは『そぎ切りにして叩く』という方法です。あとはカツレツにしてもいいですし(衣があった方が水分が出ないので)、小麦粉を振って、焼いてから生クリームやトマトソースの缶詰を入れて煮込むなど応用は自由です。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!