オブラートを使ったテクニック〈透明ラビオリ〉
最新調理テクニック紹介シリーズ。エルブジのシェフ、フェランアドリアが日本から吸収した素材は柚子、寒天、そしてオブラートでしょう。一時期のエルブジのメニューにはオブラートを使った料理が並びました。今回はオブラートの基本的な使い方の一つ〈透明ラビオリ〉です。
オブラートは数種類のデンプンを水で糊状にし、シートに伸ばして170℃で熱したもの。アメリカなどでは「Edible Paper Obulato」という名前で流通しています。食べられる紙というのが面白いですよね。
オブラートは日本生まれの素材。医師の小林政太郎が苦い漢方薬を容易に服用できるように開発し、戦後に食品包装などの分野に応用されました。現在では複数のメーカーが製造していますが、フェランアドリアは「国光オブラートが最も味がよく、扱いやすい」としています。
透明ラビオリのテクニックの際に必要な機材はヒートシーラー。オブラートを接着するために使います。amazonで購入できる安価な製品で充分です。
半分に折ったオブラートをヒートシーラーにかけます。本当は四角いオブラートを使ったほうが簡単なのですが、写真は丸いオブラートを使っています。
こんな風に熱をかけた部分が固まって袋になりました。余分なオブラートは鋏で切ります。
このオブラート。水には溶けますが、油には溶けにくいという性質があります。オリーブオイル(それだけだと味がないので例えば小さく切ったチーズを一緒に入れるか、松の実を一粒)を入れて、ヒートシーラーで袋を閉じれば、オリーブオイルのラビオリが完成です。
今日はナッツを入れます。
ナッツを粗めに砕きます。写真はちょっと細かく砕きすぎました。
ボウルに入れて、バジルの微塵切り、パルメザンチーズと混ぜます。
オブラートに入れていきます。
仕上げに一辺をヒートシーラーで閉じれば完成です。
出来上がり。イメージとしては食べるジェノベーゼソース。食前のスナックとして提供します。食事の前のスナックとしておつまみのナッツを出す感覚で、他にも例えば細かく砕いたスパイス風味のナッツを入れるというのも手です。バンコクのガガンでは山葵風味のナッツを入れて提供しているそうです。
表面にオリーブオイルをつけて食べてもらってもいいかもしれません。
何度も繰り返し書いている気がしますが、こうしたテクニックは使い方が肝です。テクニックはテクニックでしかなく、大事なのは文脈(コンテキスト)。オブラートを料理に使うのは日本では特に新しいことではなく、例えばオブラートに包んで揚げるというような手法は以前からありました。フェランたちの発見は「ラビオリ」というコンテキストをくっつけたこと。
オブラートの具材は水気のない材料であればなんでも使えるので、バジルとマイクロトマトを入れてもきれいかもしれませんが、それでは料理として成立しているとは言えません。(ただバジルとマイクロトマトを口に含めば同じことなので)そこが難しいところです。
オブラートを使ったテクニックは他にもあるので順次、紹介していきます。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!