大山鶏のフリカッセ(軽い煮込み)の作り方
フランス料理のフリカッセは軽い煮込みのこと。日本では鶏肉料理は一段、格下に思われていて、高級レストランのメイン料理には出てきませんが、フランスではちゃんと出てきます。ジョルジュ・ブランのスペシャリテの『ブレス鶏のグランメール風』(胸肉は焼き、もも肉はクリーム煮にして、最後に煮汁にフォアグラを混ぜ込んでソースに仕立てた料理)は有名。
ただ、ブレス鶏や地鶏は高価ですし、飼育日数が長い分、煮込み時間がかかります。家庭用としては飼育日数が短い大山鶏などの銘柄鶏を選ぶのが無難。
もも肉は4つに切り分け、胸肉は半分に切りました。
肉側にだけ塩を振っておきます。両面に振るのが基本ですが、煮込むと結構塩味が回るので僕は肉側だけに振ります。目安は鶏の重量の0.6%です。それでは材料です。
鶏のフリカッセ
鶏もも肉 胸肉 各1枚
バター 20g
マッシュルーム 1パック
タマネギ(大、みじん切り) 1/4個
にんにく 2片
小麦粉 大さじ1
白ワイン 150cc
生クリーム 200cc(乳脂肪のもの)
白ワインではなく黄ワイン(ヴァン・ジョーヌ)を使うとジュラ地方の名物料理『鶏の黄ワイン煮込み』という閭里になります。今回はファミマで売っているレインボーロリキートというオーストラリアワインにしました。(税込429円)
このワイン、めちゃくちゃ安いですが、悪くないのです。
よく「ソース作りは煮詰める作業重要。煮詰め時間が足りないとワインの酸味が残る」と偉いコックさんは言いますが、残念ながらワインの酸味の主成分であるリンゴ酸と酒石酸は熱に強いので、加熱によって分解されたりはしません。(ちなみに酢は主成分である酢酸が揮発し、酸味が弱くなります。他の有機酸も含まれているので、酸味がなくなることはないですが)酸味と甘味(残糖感)のバランスのとれたワインを選択しましょう。
冷たい状態のフライパンに鶏肉を並べ、中火にかけます。鶏肉は皮目から焼いてきます。鶏から脂が出るので油は敷かなくても大丈夫。
並行して煮込み用の鍋でバターを溶かします。
タマネギのみじん切りとにんにくを炒めていきます。
透き通ってきたら四割にしたマッシュルームと小麦粉大さじ1を投入。やはりこれも炒めます。鍋の底に小麦粉がくっついてくるので、剥がしながら加熱します。
鶏肉が焼けてきました。煮込み料理ではありますが、基本的にはよく焼いてこの時点である程度、火を通しておきます。
煮込み鍋にあわせます。
テフロン加工のフライパンには実はあまり鶏肉の成分は残ってないのですが、一応、白ワインで洗います。しっかり沸騰させてから……。
鍋に投入。
生クリームを加えてことこと煮ること5分。
小さい方の鶏胸肉をとりだしておきます。
もう5分煮れば出来上がり。ソースの濃度がゆるい場合は火を強めて煮詰めます。長く煮すぎると鶏肉が硬くなります。
鶏胸肉を戻して温めましょう。この段階で塩をして、最終的な味を整えます。
出来上がり。もっとコクを出したい場合は最初に投入する生クリームを150ccにして、最後に残りの50ccの生クリームと卵黄を混ぜたものを加えて軽く煮ます。卵黄を加えてから長く煮込むと分離するので注意してください。卵をつなぎに使うのは古典的な技法ですが、まったりとしてこれもいいものです。
付け合わせにはバターライスが定番ですが、茹でジャガイモでもいいでしょう。こういった煮込み料理は「何分煮込む」というよりも肉の状態を見ながらつくるのが大事。もともと煮込み料理は硬くて食べられない親鶏(卵を産んだ後の鶏)を食べるために生まれた技法。その点を考えると現在流通している鶏を煮込む必要はあまりないのかもしれません。でも、時間をかけて煮込むことで生まれる味というのも確かにあって、どうやったらそういうおいしさが出せるのかという技法は会得しておく必要があります。僕が尊敬するシェフは「鍋と会話しなさい」と言っていましたが、鍋の状態を知ることは分量や時間を憶えることよりもずっと重要なことなんでしょうね。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!