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イチゴの洗い方と砂糖の力『イチゴのスープ』

店頭にイチゴが出回りはじめました。

この時期に出回るイチゴはクリスマスとお正月の需要にあわせるためにハウスで栽培されたもの。ハウス栽培は七月頃に発芽させた苗をまず冷蔵環境下に置きます。これでイチゴに「今は冬だ」と勘違いさせ、次に温かいハウスに移し「春が来た」と成長を促します。さらに照明で日照時間をコントロールし、イチゴを成長させるのです。この栽培技術が確立したことで、冬にいちごが出回るようになりました。

しかし、本当のイチゴの旬は春。3月から5月にかけて出回るいちごは露地栽培が主流になり、味も香りもよくなります。電気を使わなくていい露地栽培はコストが低いため、安価といいことづくめ。というわけで無理に冬のイチゴを食べる必要もないのですが、洗い方だけは復習しておきましょう。

一つ目のポイントはへたをとらずに洗うこと。イチゴはとても水を吸いやすい果物で、へたをとってしまうとその部分から水分がとりこまれ、風味が落ちてしまいます。

次に洗い方にもポイントがあります。ザルにいちごを移して、蛇口の水をかけるというような洗い方はしていませんか? それではイチゴの表面についた埃やゴミを除去することはできません。ベターな洗い方はボウルに水を張り、いちごを静かに投入すること。

ざっくりとかき混ぜると、汚れはボウルの底に沈みます。そこで、素早くイチゴを手ですくい上げます。この時、ボウルの水ごとザルにあげたりすると、水の底にたまった埃やゴミが再びいちごに付着してしまいます。イチゴはとにかく優しく丁寧に扱うことです。引き上げたイチゴはタオルの上などで表面の水分を除去します。

イチゴを長持ちさせるにはどうしたらいいのでしょうか? 基本は冷蔵庫にしまうことですが、その際はラップを直接イチゴに触れないようにすることが大切です。結露した水分が付着すると雑菌が増えたりカビが発生する原因になります。簡単なのはクッキングペーパーを敷いたバットなどに重ならないように並べ、さらに上にもう一枚クッキングペーパーをかぶせてからラップをかけることです。

もっと長持ちさせたい場合は52 °Cのお湯に30秒つける温熱法がおすすめです。ハロルド・マギーはNYtimesに寄稿した「Prolonging the Life of Berries」という記事のなかでストロベリー、ラズベリー、ブラックベリーは華氏125度(摂氏にすると52℃)の湯に30秒間漬けることでカビや腐敗を減らすことができ、カナダの研究によると皮の厚いブルーベリーは華氏140℃(摂氏にすると60℃)の湯に30秒間漬けることで長持ちさせることができる、としています。また、温熱法が果物の腐敗やカビが抑えられるのは「強烈な日差しから身を守るため」に植物が元々備えている機能のためではないか、と推測しています。

そのまま食べてもおいしいですが、冬のイチゴは風味が弱いので、今日はシンプルなイチゴスープにしましょう。

へたをとり半分にカットしたいちごに重量の5%の砂糖を振ります。イチゴは1パック250gで販売されているのが普通ですから10g前後、小さじ2杯くらいといったところ。イチゴの甘さなけ ればもう少し量を増やす必要があります。

軽く混ぜあわせ、レモン汁を小さじ4分の1(ティースプーン一杯程度)加え、酸でバランスを整えます。好みでコアントローなどのお酒を加えてもいいですし、酸味はレモン汁ではなくバルサミコ酢などのビネガーでも風変わりな味が楽しめます。この工程をフランス語の製菓用語で「マセレ」といいます。素材がより、素材らしく、味の輪郭が整えます。料理という額縁のな かにいちごが収まる感じです。

三時間ほど冷蔵庫で冷やすと水分が出てくるので、一緒に器に盛ります。ハチミツで甘みをつけたマスカルポーネチーズやヨーグルト、バニラアイスクリームを添えるとより豪華です。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!