洋食風の濃厚ミートソース
以前、紹介した『食育通信式ミートソース』はイタリアンシェフたちのレシピから平均値を導き出した、いわば平均的なイタリアンの味。日本で独自に進化したミートソースは乾麺に絡むように濃厚なもの。今回は洋食店でたまに見かける正調、日本のミートソースをつくります。
味のポイントとなるのはコクと苦味。ビーフシチューのような仕上がりを目指します。
材料にポイントがあります。
ポイント1 ひき肉は使わない!
洋食店で食べるミートソースはほろほろと肉が崩れる美味しさ。この食感はひき肉では絶対に出せません。ポイントとなるのはすじ肉を混ぜることです。切りにくいですが頑張って1 cm角にカットしましょう。どうせトロトロ になってしまいますから、そろわなくてもまったくOKです。切りにくい場合はさっと茹でると切りやすくなります。
すじ肉だけだと肉の部分の旨みに欠けるので、味の濃いすね肉を混ぜます。今回はすじ肉とすね肉の割合は300:200ですが、250:250でもいいと思います。
重量の1%の塩を振って、30分寝かせます。
他の材料です。ここで2つ目のポイント
その2 ホールトマトではなくトマトピューレを使う!
トマトピューレはトマトをすりつぶし煮込んで濃縮してから瓶詰めにしたもの。 トマトの風味に欠けますが、旨みは十分。シチューのコク出しに最適です。
玉ねぎ、ニンジン、にんにくはみじんぎりにして、オイル大さじ3とフライパンで加熱し ていきます。
火加減は中火です。時折、混ぜながら炒めていきます。とはいえ混ぜ過ぎは禁物。適 当にやっていると焦げ目がついてきます。
そうしたら水を加えます。焦げを溶かして全体にまわすようにしてさらに炒めます。
鍋底の焦げと玉ねぎの端の焦げも主成分は糖。つまり水溶性なので少量の水を定期的に加えることで全体に行き渡るので加熱の効率がよくなります。(ただし本当に丁寧に炒めたほどの味の深みは出ません。このメカニズムについてはまた別の機会に説明します。しかし、時間をかけて100点の味を求めるよりも、今回は短時間に85点の仕上がりを目指した結果、この炒め方を採用しています)
15分ほど炒めて、茶色っぽくなったら鍋に移します。
空いたフライパンで肉を炒めます。写真をみればわかりますが、肉の大きさはかなり大きめです。
こちらも中火で15分くらいかけてしつこく炒めていきます。どんどん炒めていくとこげ 色がついてきます。このメイラード反応によって生成される物質がシチューの風味のベース。
ここまで炒めたら鍋に移します。油は鍋に入れたままにしておいてください。 ここで3つ目のポイント。
その3 ブラウンルーを使う!
ブラウンルーは小麦粉とバターを茶色になるまで炒めたもの。洋食の基本、デミグラスソースのとろみづけの材料です。鍋に残した牛脂に分量のバターと小麦粉を入れ、混ぜながら中火で加熱していきます。
はじめはこんな風に泡立ちますが、
やがて収まってきます。この状態で牛乳を入れればいわゆるホワイトソースができま すが、ブラウンルーはさらに炒めます。
茶色(ブラウン)になりました。この状態で火を止めて、フライパンの底を濡れ布巾 で冷やします。焦げるのを防ぐためです。これがブラウンルー。
赤ワインを一気に加えます。ルーが冷めていればダマになることはありません。
混ぜながら火にかけます。
こんな感じにとろみがついてきます。鍋にうつして、肉や香味野菜と一緒にしましょ う。
トマトピューレを1瓶加え
水を800cc加えます。強火にかけます。
沸いてきたらアクをとって、弱火に落としてことことと、時折混ぜながら3時間加熱します。好みでナツメグをほんの少量、加えてもいいでしょう。
すじ肉が柔らかくなるには十分な時間が必要です。短縮したければ圧力鍋を使っても OK。一度、鍋で沸騰したことを確認してから、圧力鍋に移して45分〜1時間加熱します。最初から圧力鍋で煮こまないのは匂いがこもってしまうからです。
圧力鍋で煮ると火加減によっては思ったよりも煮汁が煮詰まらないことがあります。そのため、圧力鍋が冷めたら蓋を開けて、やはり弱火でことこと煮ます。
だいぶ、煮詰まってきました。火をとめてできたら一晩寝かせます。そのあいだに肉 に水分が戻り、しっとりします。
一晩、寝かすとこんな感じ。塩加減は足さなくても大丈夫なはずです。胡椒を加えま す。今回は市販の生パスタを使いました。最近は質のいいのがあるので便利ですね。茹でているあいだに準備です。
温めた皿に常温のバターを10gとチーズを大さじ2入れて、熱々のパスタを投入。和えておきます。
上からソースをかけて完成です。ソースで和えるのではなく、上からかけるのが正調日本のミートソース。入れ忘れましたが、缶詰のマッシュルームがあれば煮込む段階で入れると、さらにコクが深まります。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!