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ニンジンは焼いて食べると美味しい

ブロッコリーは茹でるのがベター』という記事の続きです。今回はニンジン。ブロッコリーの風味化合物の多くは脂溶性のため、茹でて食べた方がおいしいという結論でしたが、ニンジンの場合は逆で『焼くのがベター』。

もちろん、カロチンは脂肪分に溶けるのですが(バターとニンジンジュースをあわせて加熱し、遠心分離機にかけてカロチンバターをつくると風味を強めることもできます)風味化合物の多くは水溶性。野菜ストックは玉ねぎやニンジンからつくりますが、それはニンジンの旨味が水に溶けやすいためです。

ニンジンのロースト 
 ニンジン 2本
 バター  12g〜
 オレンジジュース 大さじ1
 フルールドセル  適量

ニンジンはへたを除去し、皮ごと、または皮を薄く剥き、四等分にカットします。この時、中央の芯の部分を取りのぞくと丁寧ですが、そのままでも問題ありません。ここで選択肢が二つ。オーブンでそのままローストすると水分が飛んで味が凝縮され、香ばしい仕上がりに。もう一つはアルミホイルで包み焼きにするアプローチ。後者は水分が残るため、やわらかい仕上がりに。今回は後者を選びました。

ニンジンと相性がいいのはバターですが、オリーブオイルでも同様につくれます。ただしオリーブオイルを使う場合はこの後で加える水分の分量を少し増やしましょう。

アルミホイルを半分に折りたたんで、上下を折り込んでいきます。

袋状になったアルミホイルにオレンジジュースを大さじ1加えました。オレンジジュースではなくて、白ワインでもちょっと変わった風味が楽しめます。水でもいいのですが、ニンジンの水分よりも濃い濃度の液体がベターです。

口を閉じて、蒸し焼きにします。

180℃に温めたオーブンで40分間、焼きます。180℃の根拠はなんでしょうか? メイラード反応が進む温度が154℃、カラメル化が急速に進む温度が180℃ということを頭に入れておいてください。これがオーブン調理で180℃が目安となっている根拠で、あまり焼き色をつけたくない場合は160℃で加熱し、逆にはっきりした焼き色をつけたい場合はオーブンの温度を190℃以上に設定すればいいのです。

アルミホイルに包んだ場合、その内側の温度は100℃までしか上がりません。(水分が存在している限りは)ただし、アルミホイルと天板が設置している部分は別で、180℃のオーブンでは天板は最終的に約180℃(実際は天板の高さなどによっても異なりますし、176〜178℃くらいまでしか上がりませんが)になります。つまりこの調理法は上部は水分で蒸して、底は焼いている状態です。

焼き上がり。アルミホイルを破って中を確認しましょう。

つやつやでいい感じ。ニンジンの下側には少し焦げ目がつき、香ばしくなっています。焦げ目はオレンジジュースとニンジンのエキスが凝縮した結果。

フルールドセルを仕上げにほんの少し振りかけます。いいニンジンであればミネラル分があるので、塩はいらないくらいですが、ほんの少し載せるとアクセントになります。胡椒を振るとニンジンの香りの邪魔になるので、どうかなぁ、という感じ。個人的には不要か、と思います。

以下、余談ですが、塩を調理のはじめに振るべきか、後で振るべきかは見解が分かれます。

「American test kichen」は実験の結果から、はじめに塩を振ったほうがいい、と結論づけています。上記の動画によるとはじめに塩を振って焼いたローストキャロットはちょうど良い塩加減で風味豊かに仕上がり、あとから塩を振ったものは塩辛い味なったそう。

塩気は温度が高いほど浸透していくので、理屈からいえばそちらのほうが効率が良いのはたしか。しかし、煮込み料理はともかく水分損失が大きい焼く料理は塩加減が難しいのも事実です。あとから塩を少しつけながら食べる、という形のほうが失敗のリスクは減ります。リスクをとって味を優先させるか、安全策をとるかは判断のしどころ。ちなみに野菜料理で有名なパリの三つ星レストラン『arpage』のアランパッサール氏は野菜の加熱には有塩バターを使います。有塩バターを使うことで加熱しながら塩気が浸透していく、といいます。こちらの方法が一番、失敗なくおいしくできるかもしれません。

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