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【芸術文化の理想の助成とはVol.3】助成→報告→評価→PR→修正→助成のサイクルをひとつの理想と考える

今回は事業報告の重要性について


助成事業では必ず「事業報告」の提出が必要となります。
ほとんどの場合は、それぞれの助成団体が用意する「事業報告書」と「収支決算書」に、採択されたアーティストや団体が必要事項を記入して、提出する形になります。


事業報告に取り組むことは自身の活動の振り返りに繋がるので、アーティストにとっても有益な行為だと思います。
アーティストの中には次から次と仕事をこなさないといけない人もいて、こういう機会でもなければ事業を振り返る機会がない人も多いからです。


収支決算書の役割、理想のカタチ


例えば自分がお金を出す側(助成団体側)であれば「何にいくらくらい使用したのか、必要だったか、いくらあれば良い成果に繋がるのか」を把握することは、次回の助成に反映できる貴重なデータになりえると思います。
ですので、ある程度の質の報告を受け取ることは必要であると思います。

ただ、証拠書類の提出も含めた予算のチェックを細かくしすぎると、アーティスト側がストレスを感じやすくなる部分でもあります。


また、お金の使い方について必要以上にルール(縛り)が設けられていることがあるのですが、こういう場合は非常にストレスを感じます。
もちろん助成意図と合っていればよくて、うちは渡航費しか出せませんとか、明確なスタンスであれば納得はできるのですが、よくわからない縛りに苦しめられることもあります。
たとえば公演の記録写真の撮影費は対象外経費です、などと言われると戸惑います。
報告には写真の提出なども求められるのに、その記録費は対象外?というのは納得しにくい部分があります。



また、助成金には「対象経費」と「対象外経費」を設定していることが多いのですが、対象経費の申告はもちろんするとして、対象外経費も書かせられることがあるのですが、これは正直無くても良い気がします。
対象外の経費は助成団体には直接関係がないわけで、細かく知る必要はなく、もしも事業規模を知りたいということであれば全体の総額だけ書いてもらえれば良いかと。

予算に関しては、個人情報であったり繊細な部分が含まれることもありますので、助成団体だからといって関係ないところまで開示させると、その行為自体が威圧的行為と捉われてしまうこともあるかもしれません。
もちろん助成団体にそのような意図はないことがほとんどなのですが、「お金を出す側と受け取る側では、立場が平等になりにくい」という関係性が生まれやすいこともあり、慎重な対応が望ましいと考えます。


事業報告を助成元はどのように活用しているか


採択団体が作成した事業報告(実績報告)を、助成元はどのように取り扱っているか、公表しているでしょうか。

・助成団体一覧をWEBで公開(主催者、事業名称、活動地域などの情報)
・簡単な事業紹介(上記の基本事項に加えて写真と概要など)

こういった内容が多いように思います。
「弊財団は今年、このような活動に助成しました」という報告だけで終わってしまっている団体が多いのではないでしょうか。
また、まったく助成実績や事業報告を公表していないという団体もあると思います。

それって言い方が悪いですけど、見方によっては自己満足のようにも映ってしまうことがあると思うのです。
もちろん自分たちのお金なのでどう使用して自由だろう、という大前提はあるとは思うのですが、一方で「公益財団法人」というのは公益性を意識している団体なのだと思うのですよね。

では、どうするべきなのかというと、やはりどうにか社会と共有する努力はすべきなのではないかな、と思います。
日本はアートリテラシー/アートへの理解度が低く、なぜアートが必要なのかが社会に浸透していない、なんて言う人もたくさんいるのですが、それは民間団体の有意義で貴重な活動の数々が正しく伝わっていないからとも思うことがあります。


私がこれまで助成を受けてきた中では、公益財団法人福武財団が助成した各プロジェクトの事業報告を掲載していて、どのような効果があったかなどが細かく記載されていました。
この情報をどれだけの国民が受け取ることができるかはさておき、このくらいのボリュームを発信することは必要なことだと感じています。
https://fukutake-foundation.jp/archives/2359

ただ、上記の報告は各団体の自己申告(主観)なので、助成側の観点による客観的な社会への波及効果、事業評価は記載されていません。

「事業報告の発信にたくさん予算をかけるなら、一つでも多くの団体に助成をしたい」

という気持ちはよくわかるのですが、ただそれでもサイクルって大事なのではないか、と思うんです。

助成する → 活動が行われる → 活動の報告書を主観/客観交えて作成する → 社会に広く発信する → 助成要綱を更新する → 助成する



上記のようなサイクルが生まれることで、それぞれの芸術団体による事業が飛躍的に社会と繋がり、社会から注目され、アートがなぜ必要なのかということが浸透していくと考えます。

PRとはPublic Relationsの意味で、公衆と関係を築くということであります。
理想の助成とは、PRまでも含めたサイクルを意識した「芸術団体と助成団体による協奏」なのではないかな、と考えます。


事業評価、PRについて。
現状としては「そこまでは手が回らない、予算が無い、人がいない」で止まっているのだと思います。
もしくは「そういう専門家を知らない、誰に頼めばよいのかわからない」ということもあるのかもしれません。
はたまた「そこまでする必要はない」という意見もあるかもしれません。

様々な意見はあるでしょうし、実現するには課題が多すぎるかもしれませんが、こういう流れを作っていく為のアプローチはしていきたいですね。


次回はアーティストのステージ/段階(もしくはスタンス)ごとの助成の可能性について書いていきます。


文章:森嶋 拓
写真:yixtape YUMENOKUNI『ニワハコ Vol.1』

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