ベランダ /13首
橋梁とおもうゆっくりその指がテーブルの滴をぬぐうとき
川底をながれるみずを置き去りにずっと進んでいたんだ川は
イメージとメッセージ 紙ナプキンに声は滲んでもう蓮の花
ゆうぐれるまでが引き延ばされている御幸通りをまっすぐ帰る
吸いながら右折するひとから残るけむりがあとの鳩に絡んだ
紫陽花のなしくずされる七月のしずかな別れ話のはじめ
すごく月おおきいなって気がついて、たぶん満月だった昨日が
選んだらすべてに捨てられることの湿りに重い服を着古す
ひさびさに映画を観たい ひとが死ぬことはないままさみしい話
写真から指のちいさな擦り傷と夜風のあったことがわかった
ベランダにしゃがんだ きみとお互いの散り線香花火をまもるため
過去形はすべてあかるく霧雨に街が仄白いんだ今朝から
チオビタがいちばんうまい 遅咲きの初夏を初夏のままに行かなくては
ネットプリント「七物語2021」2021/07/07