「解説をする」ということについて
先日、中学生の息子が博物館で「中高生ボランティア」として展示解説をする機会がありました。
小学生の時からお世話になっている博物館でのイベントの一環だったんですが、初めてにしてはしっかりと話せていたのでちょっとびっくりしました。
その様子をビデオに撮りながら、終始、集団の後ろについて話を聞いていたので、思ったことをまとめてみました。
ちなみに息子が好きなのは古生物なので私は全くの素人、話している内容についてのアドバイスは全く出来ませんw
視線
最初に思ったことは話す際の視線ですね。
これは始める前にアドバイスしたんですが、手元にノートを持っているだけにどうしてもそれを見てしまう。
(ノートにびっしり字が書いてあったので、薄暗い館内で見えるのか心配でしたが、なんとか見えるようでした。というか書き過ぎ。。。)
星空案内の際は基本真っ暗なので、手元の資料を見ることはできません。
もう一つ言うと、お客さんの顔もよく見えません。
さらに星は上にあります。
なので自然と視線は前か上になりますのであまり意識しませんが、下を見ずにお客さんの顔を見るように話すのはとても重要なことだと思います。
専門用語
これは悩むことですが、小さい子供が多い場合は避ける人が多いかと思います。
「中生代」とか「ノジュール」とか、古生物をやっている人であれば当たり前の言葉でも、初めて聞く人はそれがどういう漢字なのか、カタカナなのか、ひらがななのか、そもそも聞き馴染みがないと聞き取れないかもしれません。
なので
・中生代=恐竜が生きていた時代
・ノジュール=石のかたまり
などと置き換えた方がわかりやすいかもしれません。
私も星空案内で「二重星」のことを「二つ・重なる・星と書いて二重星といいます」などと紹介するようにしています。
中学生以上の場合は、難しい専門用語はそのまま使います。そして意味を説明します。専門用語を理解するということはその世界に一歩足を踏み入れることになりますからね。
区切りと間
博物館の場合、多くの展示物があるので次から次へと解説することになります。
その際、対象物が変わるタイミングでの「区切り」と、説明の「間」が大事になります。
話が変わったことを明確に伝える「区切り」と、それを受け入れてもらうのを待つ「間」ですね。
星空案内の場合は見ている方向が変わるのが「区切り」であれば、お客さんがそっちを向いてもらうまで待つのが「間」でしょうか。
「間」については解説をして、それを理解するまでに取る「間」もありますね。ここはかなり奥が深く、私はいまだに習得できたと思えていません。
10知って1喋る
これを中学生に求めるのは酷だと言うことは百も承知で、これからに期待なのですが、知っていることを全部喋ろうとするのはよくないと思います。
いっぱい調べて勉強したんだからしゃべりたい気持ちはわかる。
けど、お客さんはそんなに詳しいわけじゃない。
それに知っていることを全部しゃべってしまうと、それを裏付けるものがなくなってしまうので、薄っぺらくなってしまう。
これは実際に聞いているとなんとなくわかるものでしかないですが、話の奥行きというか深みのあるなしは、(話し方もあるのかもしれませんが)基本的な知識量が効いていると思います。
学生時代に塾で講師をしていた経験上、一つのことを伝えようとすると、伝えることの何倍もの知識が必要になります。
そしてそれを全部喋らないでポイント絞って大事な部分だけを伝え、持って帰ってもらうというのが良いかと思います。
集団の移動
博物館内を移動しながらの解説ですので「では次はこちらへ」と移動することになります。
その際、全てのお客さんが移動し終わる前に次の解説を始めてしまうと話初めが聞こえなくなってしまいます。
ですので、お客さんが移動し終わるのを待ってから話し始めることが大事です。
また、早くに移動したお客さんたちを待たせない工夫もあるといいですね。
人が説明すると言うこと
これが一番大事かもしれませんが、人が説明すると言うことはどう言うことか。
辞書的な説明をするだけであれば展示物の解説文を充実させれば十分でしょう。読むペースも理解するペースも読み手次第です。
ですが、「学芸員による展示解説」に多くの人が集まるのはなぜでしょうか?
私はその魅力を「解説する人が持つ個人的な見方や思い、感想、経験などが聞ける」ことだと思っています。
人が説明するので、その人の個性が出るのは当たり前のことだと思います。十人が十人、同じ解説をするのはあまりにつまらないです。
アンモナイトであればたくさんの種類の中でどこに魅力を感じるのか、どこを注目して欲しいのか、実際に発掘したのであればその時の苦労話など、その人だけが持つもの(魅力)を解説に織り交ぜると、展示物に対する魅力も伝えられるのではないでしょうか。
今回、息子の初めての展示解説に際してアドバイスしたことは視線についてだけでした。
解説後に学芸員の方から評価をもらっていましたが、本人にはいいアドバイスになったようで、1回目より2回目の方が格段によくなっていました。
逆に声が小さくなっていたのは2回目と言うことで緊張の度合いが変わったからだと言っていましたが。
同じような機会は来年も設けてもらえると言うことなので(北海道なので冬は来館者が格段に減ってしまう。。。)、できるだけ挑戦させてみようと思いました。
あとは他の博物館などでの展示解説ツアーに参加するとか、私がやっている観望会などに連れて行って、どう言う解説をしているのか、ということを知ってもらうことかなぁ
意外とやってないから、観望会に連れて行くのが手っ取り早いかな。
宜しければサポートをお願い致します。ご厚意は天文ボランティア活動の資金とさせて頂きます。 これからも星空に興味を持っていただけるような記事を書きたいと思っています。