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【ドイツあれこれ】ドイツ人は素通り、異国で楽しい栗拾い
[初出:2008年10月]
秋晴れの週末に栗拾いをした。午前中に行かないと家族総出のトルコ人にみんな獲られてしまうよ、とは友人の忠告。案の定、結構人が出ている。収穫袋を手にしたのは、たいてい外国人である。ドイツ人にいわせると、栗なんて貧乏人の食べるものらしい。そこには文化の違いがある。ドイツ人がアスパラガスの初物になぜあれほど騒ぐのかが日本人には分からないように、栗ご飯に季節を感じる日本人の心情はドイツ人に解しがたい。
ヨーロッパも南になると、栗を食べる習慣がある。かつてスペインに遊学していた時、よく街角の屋台で焼き栗を買った。冬の風物詩である。円錐形に丸めたバラ紙から伝わってくるあの温もりが懐かしい。
そうだ焼き栗もいいなあ、と思わずほくそ笑む。散歩するドイツ人が傍らを素通りするなか、栗拾いに余念のない自分であった。