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甘いものだけじゃない!スナック菓子とむし歯の関係
NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」の西 真紀子先生が
日本歯科衛生士学会雑誌Vol.18 No.1に掲載された総説英文論文を和訳した原稿を読んで、
甘いものだけではなく、歯に長く停滞する食べ物もむし歯になることを
皆さんに知ってもらいたくなった。
エビ風味スナック、米菓、ポテトチップス、ポップコーン、チーズパフ、コーンスナックなどの加工でんぷんスナック製品の消費が世界中で増えている。
これらのでんぷん質のスナック菓子は、食べすぎになりやすいために
肥満や関連疾患の病気に関係がある。
むし歯もその一つであることは、あまり知られていない。
スナック菓子とむし歯の関係について知らない方も多く、「甘いものを食べてないのにむし歯になる」という患者さんの声をよく聞く。
むし歯は,、糖類やでんぷんといった発酵性炭水化物を摂取することから始まる。
歯の表面についているプラークのむし歯菌がエサにして排泄物として酸を出し、その酸によって歯の表面の結晶が溶ける(脱灰)
脱灰された歯面は、唾液中にあるカルシウムやリン酸イオンが時間をかけて失われた結晶を修復する(再石灰化)
脱灰と再石灰化は日常的に繰り返し、起こっているが、バランスが崩れて脱灰時間が長くなると、脱灰された部分が大きくなり、歯に穴があいてしまう。
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[ でんぷんの種類 ]
易消化性でんぷん
遅消化性でんぷん
難消化性でんぷん
易消化性でんぷん(PSSP)がむし歯と関係がある理由
① 米、じゃがいも、とうもろこし、小麦粉といったでんぷんを含む原材料が、近代的な加工技術によって処理され、でんぷんの結合構造がもろくなる。口に入った時に、唾液の酵素により、早く細断されやすい。
むし歯菌にとっても、より簡単に酸が産生でき、早く脱灰が起こる。
②PSSPは唾液と混ざるとネチャネチャして歯にくっつきやすくなる性質がある。
発酵性炭水化物が歯にべったりくっついたまま長期間歯面に停滞してしまうと、それだけ脱灰の時間が長くなり、再石灰化の機会を失う。
特に唾液の分泌量が少ない人がポテトチップス、チーズパフ、クラッカーなどを食べると、バイオフィルムの中の酸性度がぐんと上がる。
③ PSSPには、砂糖、塩、油脂、食品添加物が使われていて、「やめられない、とまならい」という癖になる味つけがされている。しかも安価。
だらだらと食べると危険。再石化されず、虫歯になる。
フィンランドの研究で特に若い人が、映画を観ながら、ゲームをしながらだらだら食いをしていることが明らかになった。1960年から2010年にかけて、ポテトチップスやキャンディを含めたおやつ消費量が3.5倍に増えた。
映画館に行くとポップコーンを食べながら、炭酸飲料を飲んでいる人を多く見かける。売店で販売しているし、映画といえば、このメニューが定番だ。
むし歯予防のための注意点
「なにを食べるか」「どう食べるか」
頻度、クリアランス、タイミング3つの側面に注目せよ。
頻度:飲食物の摂取回数が1日5回までなら安全。
クリアランス(飲食物を口に入れてから、それがきれいになくなるまでの時間):PSSPは口に停滞しやすいので脱灰の時間を長くする。個人差が激しい。
タイミング:就寝前に摂取するのは最悪。寝ている間は唾液があまり出ない。脱灰の状態が長く、再石灰化が十分に起こらない。
日本の状況
食が欧米化している。
高齢者は和食中心なのに、若い世代はより洋食中心である。
頻回な間食、早食い、遅い夜食、朝食抜きといった不健康な食習慣が肥満に関係している。
20~69歳の成人が総エネルギー量の約11%を間食によって摂取。
3~6歳のお子さんでは20%だった。
風味や甘味づけに加えられる添加物には、脱灰を進めるものがあるので注意。
朝は忙しいし、時間がないから朝食をぬく。
仕事で残業した時にお菓子で小腹を満たす。
塾帰りの子どもの買い食いなど、現代人は忙しく、不健康な食生活をしている人が多くなった。
PSSPやソフトドリンクなど肥満や関連疾患につながりやすい不健康な製品のマーケティングに対して、子どもたちは自分で判断できないので、国連、WHO、ユニセフでは広告を制限するよう要請している。
日本でも同様に倫理的に疑問視すべきである。
安くて手軽なため、コンビニやスーパーで加工でんぷんスナック製品や清涼飲料水を買っている人を多く見かける。
しかし、育ち盛りの子どもの間食にスナック菓子を選ぶことは、むし歯や肥満のリスクを高めるため、親が何を食べるか、どう食べるか、日頃から考えて行動してほしい。
そして、だらだら食べ(飲み)は、歯の脱灰時間を長くし、再石灰化を妨げる。唾液が少ない人は、特に注意が必要だ。