小説「対抗運動」第2章3 モンサント社
舞ちゃん「おいさん、GMて何よ?」
おいさん「自動車の?」
舞ちゃん「ううん、農業とか、バイオとかに関係あるらしいんやけど・・・・」
おいさん「舞ちゃん、やったね、大物に当たったみたいじゃね。モンサントじゃろ。」
舞ちゃん「えっ、どして分かるん?」
おいさん「GMは遺伝子組換えのことじゃ。普通、遺伝子組換え作物をGMOと略しとるね。この分野は、今もうほとんどモンサントが牛耳っとる。ブッシュ政権の農業閣僚にもしっかり献金しとるよ。何で調べたん?」
舞ちゃん「農薬。でも、なんで農薬会社が遺伝子組換えするん?」
おいさん「舞ちゃん、農薬は毒よ。農作物につく害虫を殺したり雑草を枯らすもんじゃね。けど、害虫や雑草も進化するけんね。どんどん農薬も量をふやしたり威力を強めたりせんと効果が上がらんようになってね。雑草や害虫だけでなしに、土地が死んでしまうし、農作物もまいってしまうようになった。ほいで、考えたんじゃね。農薬が売れんと困るけんね。遺伝子を組替えて、強烈な枯葉剤にも耐えられる農作物の種を作った。」
舞ちゃん「有機農業がええんは農薬を使わんからやろ。わたし、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』読んだよ。おいさんがええいうた有吉佐和子の『複合汚染』も。おいさん、私が女やから女性の作家ばっかりすすめるん?」
おいさん「そんなことはないよ。日本は昔から重要な作品は女性が書いたものが多いんじゃ。舞ちゃん、レディ・ムラサキは世界で最初に本格的な小説を書いた女性じゃよ。もう1000年以上も前にね・・・おっと、話しがそれたね。有機農家が減農薬、無農薬を実践しとる一方で、農薬会社の方は遺伝子組換えをして、農薬と種をセットで売り出したんじゃね。そしたら、種の方がボロ儲けできそうじゃと見えてきた。遺伝子のしくみの解明やGMOは特許とれるけんね。それを使うたびに農家はお金を払わんといかん。」
舞ちゃん「農作物の種まくのにお金はらうん? 種はもともとモンサントのもんと違うのに。種が誰かのもんや、いうんはおかしいわ。もとからあるもんやのに。」
おいさん「舞ちゃん、一番の問題はそこやね。科学はもともとは情報公開の精神や。そういう運動やったんや。知識は共有財産やという前提がなくなったら、中世への逆戻りやね。学者が尊敬されるんは、科学者やからやね。ところが、企業に囲い込まれたら、知識を秘密にして人を支配しようとするんやからね。食べ物やのに基礎データを公開せん。食べ物やのに安全かどうかわからんいうことや。それと、困るんは、花粉は遠くまで飛ぶけんね、他の作物の遺伝子と混ざってしまう。使いたのうても、知らん間に使うてしまう。」
舞ちゃん「それでもお金取るつもりやろか。農薬には有機農業で対抗できるけど、GMOに対抗するのはむつかしそうやね。」
おいさん「ヨーロッパではものすごい反対運動が起こってね、追い出してしまった。栽培されてしもうたら取り返しがつかんのや。日本もがんばって今追い出しとるよ。去年、愛知でイネを実験的に作っとったけど、反対運動が盛り上がって、愛知県はもうやらんと言うたよ。あと、北海道で大豆の実験をやりよるね。弱いところ、弱いところと狙うてやるんじゃ。イネは、東南アジアやインドそして中国が狙われとるね。」
舞ちゃん「おいさん、モンサントへのボイコットはどうしたらええ思う?」
おいさん「何で献金するかというと、有利な枠組みを作って欲しいからやろね。そしたら、厳しい基準作りが一番じゃね。そのためには、表示させるんがええね。豆腐や納豆は表示されるようになったけど、しょう油や油はしてないね。まだ国内産大豆は遺伝子組換えされてない。無農薬は少ないけどね。まる大豆100%使用というのは表示されとるね。これは国内産大豆や。うん、しょう油やったらできそうやね。輸入大豆の大半はモンサントのGMOや。表示してないのはこれを使うとるからじゃろ。まる大豆100%使用と表示してないしょう油のボイコットやったらいける。」
続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年3月5日