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米国におけるCOVID-19 mRNAブースターとインフルエンザワクチン同時接種の反応原性

Reactogenicity of Simultaneous COVID-19 mRNA Booster and Influenza Vaccination in the US
Accepted for Publication: May 8, 2022.
Published: July 15, 2022.

http://jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jamanetworkopen.2022.22241

概要

重要性

 COVID-19および季節性インフルエンザワクチンは、呼吸器感染症およびその重篤な合併症を予防するために不可欠である。ワクチンの同時接種は効率的であり、各ワクチンの接種率を向上させる可能性がある。しかし、COVID-19とインフルエンザワクチンの同時接種の安全性については十分に説明されていない。

目的

 米国人口内における、COVID-19 mRNAブースターワクチンと季節性インフルエンザワクチンの同時接種に関連する有害事象と健康への影響を評価すること。

デザイン、設定、参加者

 この後ろ向きコホート研究では、2021年9月22日から2022年5月1日までの接種後0日から7日後までの自己申告によるワクチンデータを、疾病管理予防センターが開発したスマートフォンによる任意モニタリングシステムv-safeを介して収集した。参加者は、COVID-19接種後にv-safeに自主的に登録した人となる。

投与内容

 COVID-19 mRNAブースターワクチンと季節性インフルエンザワクチンの同時接種、またはCOVID-19 mRNAブースターワクチンのみの単一投与。

主要評価項目

 COVID-19 mRNAブースターワクチン接種後の1週間にv-safe回答者が報告した局所注射部位反応および全身反応(例:疲労、頭痛、筋肉痛)、健康への影響について検討した。性別、年齢、接種週を調整した上で、同時接種とブースター単一接種との調整オッズ比(aOR)を推定した。

結果

 12歳以上のv-safe登録者981,099名のうち、COVID-19 mRNAブースターワクチンと季節性インフルエンザワクチンの同時接種は、v-safe登録者92,023名(9.4%)から報告され、うち女性54,926名(59.7%)、男性36,234名(39.4%)、性別不明863名(0.9%)が報告された。ワクチン接種後の1週間で、何らかの全身反応があったと報告した人数は、ファイザーBioNTechブースターワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を受けた61,390人のうちでは36,144人(58.9%)で、モデルナブースターワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を受けた30,633人のうちでは21,027人(68.6%)であった。接種後の一週間で何らかの全身反応があったと報告した数は、COVID-19 mRNAワクチンのブースターのみを受けた参加者と比べて、インフルエンザワクチンとファイザーBioNTechブースターワクチンの同時接種(aOR,1.08;95% CI,1.06-1.10)やインフルエンザワクチンとモデルナブースターワクチンの同時接種(aOR,1.11;95% CI,1.08-1.14)を受けた参加者の方が、僅かに多かった。

結論と妥当性

 本研究では、COVID-19 mRNAブースターワクチン単一接種と比較して、COVID-19 mRNAブースターワクチンと季節性インフルエンザワクチンの同時接種は、接種後0~7日までの全身反応の報告が有意に増加することが示された。これらの結果は、米国人口におけるCOVID-19ブースターワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種に関連する成果をより明確にするのに役立つ可能性がある。

図解

まとめ
反応報告結果
反応深刻度

図解スライド(6ページ)

English Presentation Slides

日本語翻訳ファイル

はじめに

 COVID-19ワクチンは、米国疾病対策予防センター(CDC)により、米国内の5歳以上のすべての人に接種が推奨されている(1)。現在の臨床ガイダンスでは、COVID-19ワクチンと他のワクチンの同時接種を含め、他のワクチンの接種時期に関係なくCOVID-19ワクチンを接種することができるとしている(2)。
 米国食品医薬品局は、まずCOVID-19ワクチンの緊急時使用許可年齢層を拡大し、65歳以上の成人およびその他の高リスク集団に対するブースター投与を実施し(ファイザーBioNTechは2021年9月22日、モデルナおよびヤンセンは2021年10月20日)、2021年11月19日には、ファイザーBioNTechまたはモデルナワクチンの計2回の初回接種完了後少なくとも6カ月以上、またはヤンセンのワクチン一回接種後少なくとも2カ月が過ぎた18歳以上のすべての成人まで緊急時使用許可年齢層が拡大された(3-5)。2021年12月9日には、ファイザーBioNTechの緊急時使用許可年齢層が更に拡大されて16歳以上の同系列のブースター接種が実施され、2022年1月3日に12歳以上の小児が許可され、またブースター接種までの期間が5カ月に短縮された(3-5)。
 COVID-19ワクチンブースターの投与許可は、季節性インフルエンザワクチン接種の推奨接種期間と重なり、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンを同時に投与する可能性が高まった(6)。米国人集団におけるCOVID-19ブースターワクチンとインフルエンザワクチンの同時投与の安全性をより明確にするため、2021年9月22日から2022年5月1日の間に、スマートフォンを用いた安全性監視システム「v-safe」に報告された有害事象と健康への影響を評価した。

調査方法

 v-safeプラットフォームは、COVID-19ワクチン接種後の米国住民の健康状態に関する情報を収集するためにCDCが設立した、スマートフォンを用いたアクティブセーフティサーベイランスシステムである(7)。このコホート研究は、適用される連邦法およびCDCの方針と一致しているかどうかCDCによる審査を受け、45 CFR 46.102(1)(2)に定義されるヒト参加研究ではないと判断されたため、機関審査委員会による審査は要求されなかった。また本報告書は、観察研究の報告ガイドラインであるStrengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology(STROBE)に準拠している。
 v-safeは任意のサーベイランスシステムであり、登録者は健康調査を受けることを自己選択したため、それ以上の同意は必要としなかった。COVID-19ワクチン接種後、患者はv-safeに登録し、COVID-19ワクチンの接種量および同時に接種したワクチン(同じ診察時に受けたもの)を指定し、オンライン健康調査結果について定期的にテキストメッセージによるリマインダーを受け取ることができた。登録時には、年齢、人種、民族を記入するようになっていた。人口統計学的変数は、調査対象集団が一般的な米国人口をどの程度代表しているかを評価するために収集された。ワクチン接種後の7日間に送られる健康調査には、注射部位の局所反応(痛み、赤み、腫れ、かゆみ)および自己判断により軽度、中程度、重度をそれぞれ判定された、全身反応(悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、疲労、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発疹)についての質問が含まれており、さらに健康への影響(ワクチン接種者が通常の日常生活を送れなかったか、仕事や学校を休んだか、医療従事者の治療を受けたか[遠隔医療、外来、緊急治療、入院])についての質問も行った(実際のアンケートは付録のeMethods)。登録者は、反応や健康状態について自由記述でさらに情報を提供することができた。医療関連事象を示唆する報告は、CDC v-safeコールセンターからの連絡を行った。もし示唆された場合は、ワクチン有害事象報告システムの報告書を作成することが推奨された。
 2021年9月22日から2022年5月1日の間に収集されたv-safeデータの中から、COVID-19 mRNAブースターワクチンと季節性インフルエンザワクチンの同時接種、あるいはCOVID-19 mRNAブースターワクチンだけの単一接種を受け、かつ接種後0~7日目に少なくとも1回健康調査に回答したv-safe回答者について分析・解説しました。ブースター接種は、COVID-19 mRNAワクチンの3回目の接種を,2回目の接種から少なくとも5カ月後、各製造元および年齢層毎にブースター接種が許可された日以降に行ったものと定義された。解析から除外したのは、(1)COVID-19 mRNAブースター、インフルエンザワクチンと更に他の追加ワクチンの同時接種を報告した者(n=2647)、(2)ブースター投与が承認される前の時期に投与を報告した者(n=26960)、(3)モデルナCOVID-19ワクチンで18歳未満、あるいはファイザーBioNTech COVID-19ワクチンで12歳未満であった者(n=18)であった。COVID-19 mRNAブースターとインフルエンザワクチンの同時投与後に、何らかの注射部位反応や全身反応、健康への影響を報告する確率を、性別、接種時年齢、接種週を調整したロジスティック回帰モデルを用いてCOVID-19 mRNAブースター単一投与後と比較した。統計学的有意差はα=.05とし、95%CIを推定した。すべての解析にはSASソフトウェア、バージョン9.4(SAS Institute Inc)が使用された。

結果

 2021年9月22日から2022年5月1日までに、COVID-19 mRNAブースターと季節性インフルエンザワクチンの同時接種を報告したv-safe回答者は合計92,023人、COVID-19 mRNAブースターワクチンのみの単一接種を報告したv-safe回答者は889,076人だった。COVID-19 mRNA ブースターと季節性インフルエンザワクチンを同時に接種した回答者のうち、女性は54,926人(59.7%)、男性は36,234人(39.4%)、性別不明が863人(0.9%)で、また37,359人(40.6%)は12歳以上49歳未満、23,760人(25.8%)は50歳以上64歳未満、24,855人(27.0%)は65歳以上74歳未満、6049人(6.6%)が75歳以上であった(表1)。
 接種後1週間に、全身性反応が報告されたのは、ファイザーBioNTechのCOVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した人の中からは36,144人(58.9%)でモデルナのCOVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した人の中からは21,027人(68.6%)であった(表2)。ほとんどの反応は軽度または中等度と報告され(表3)、接種翌日に最も多く報告された。同時接種で最も多く報告された全身性反応は、疲労、頭痛、筋肉痛であった。性、年齢、接種週を調整し、同時接種と単一接種の調整オッズ比(aOR)を推定した。インフルエンザワクチンとファイザーBioNTech COVID-19ブースター(aOR, 1.08; 95% CI, 1.06-1.10)またはモデルナCOVID-19ブースター(aOR, 1.11; 95% CI, 1.08-1.14)を同時に受けた回答者は、COVID-19 mRNAブースターのみを受けた回答者と比較して、接種後の1週間に何らかの全身性反応を報告する傾向がわずかに高かった(表4)。
 ワクチン接種後1週間の健康への影響については、ファイザーBioNTech COVID-19 ブースターワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種した回答者の中からは11,658名(19.0%)が報告し、モデルナ COVID-19 ブースターワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種した回答者の中からは8,210人(26.8%)が報告していた。ワクチン接種後の1週間に通常の日常生活ができなかったと報告したのは、ファイザーBioNTech COVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した回答者の中からは9,519人(15.5%)で、モデルナのCOVID-19ブースターとインフルエンザワクチンを同時に接種した回答者の中からは6,811人(22.2%)で、また、同時に接種した回答者で医療を必要としたのは、病院でケアを受けたと報告した22人(0.02%)を含めても1%未満だった。報告された入院に関する情報(v-safeフォローアップコール、またはv-safeフリーテキストデータを通じてリンクされたワクチン有害事象報告システムレポートから入手)は、入院が無関係または誤って報告されたと回答した10人(45.5%)を含む22人中19人(86.4%)から入手できました。残りの回答者の入院理由は、過度の嘔吐、上室性頻拍、不整脈、胸部不快感、自己炎症性疾患の再燃、腎臓感染、低酸素症、脳梗塞などであった。インフルエンザワクチンとファイザーBioNTech COVID-19ブースターワクチンを同時に接種した回答者のワクチン接種後の1週間で健康への影響を報告した割合は、ファイザーBioNTech COVID-19ブースターワクチンのみを接種した回答者からの報告割合よりも高くなかった(aOR, 0.99; 95% CI, 0.97-1.02)。また、インフルエンザワクチンとモデルナ COVID-19 ブースターワクチンを同時に接種した回答者は、モデルナ COVID-19 ブースター単独を接種した回答者よりも接種後の1週間に何らかの健康影響を報告する割合がわずかに高かった(aOR, 1.05; 95% CI, 1.02-1.08)。

考察

 ファイザーBioNTech社製またはモデルナ社製のCOVID-19ブースターワクチンと季節性インフルエンザワクチンを同時に接種したv-safeの回答者は、COVID-19 mRNAブースターワクチン単独の回答者よりも接種後1週間の全身反応をそれぞれ8~11%多く報告している。また同時接種あるいはCOVID-19 mRNAブースター単一接種後の反応は、多くが軽度であった。ファイザーBioNTech社製COVID-19とインフルエンザワクチンの同時接種者を含む第4相試験(8)では、安全性に関する重大な懸念は確認されなかった。
 これらのワクチンの同時接による入院がv-safeに報告されることは稀であった。ただしv-safeが収集したデータは限られているため、回答者が特に指摘しない限り、入院がワクチン接種と関連しているかどうかを判断することはできない。
 今回の結果は、実質的な反応原性を有する帯状疱疹予防のためのアジュバント組換えサブユニットワクチンと4価不活化インフルエンザワクチンの同時投与に関する第3相試験(9)の結果と概ね一致するものであった。この同時接種を受けた50歳以上の参加者は、アジュバント組換えサブユニット帯状疱疹ワクチン単独接種者(52.1%)またはインフルエンザワクチン単独接種者(33.6%)よりも頻繁に全身性反応を報告した(60.9%)が、Schwarzらはこの違いは臨床的に意味がないと考えた(9)。インフルエンザワクチン単独接種後の反応についての情報は収集していないが、一般にインフルエンザワクチンは特に反応性が高いわけではない。しかし、Falseyらの報告にあるように(10)、一部のインフルエンザワクチンは他のワクチンよりも反応性が高いようである。例えば、65歳以上の成人では、標準用量のワクチンよりも高用量のインフルエンザワクチン接種後に局所反応がより頻繁に報告された。

制限事項

 この分析には限界がある。v-safeプラットフォームは任意のプログラムであり、その結果とデータはCOVID-19ワクチンを受けている全人口に対して一般化できない可能性がある。v-safeプログラムは、受け取った自己申告によるCOVID-19ワクチン接種報告に依存しており、したがって、報告された症状の曝露にいくつかの誤分類が起こっている可能性がある。v-safeアプリは、COVID-19ワクチン接種後に言及された有害事象の情報を収集するもので、稀な言及されていない有害事象を検出するようには設計されていない。ワクチン接種からv-safeの回答提出までの間隔が短いことから、想起バイアスは最小限のはずである。回答者のデータ収集の複雑さを最小限にするため、v-safeはインフルエンザワクチンの種類に関する情報を含んでいない。いくつかのインフルエンザワクチンは他のものよりも反応原性が高く、特に高齢者でその傾向が高くなるが、我々のモデルでは年齢を制御しており、この調整によって高齢者に投与されたインフルエンザワクチンの反応原性の差に対処できるかもしれない。さらに、同時接種で認められた反応原性のわずかな上昇は、COVID-19ブースターのみを接種した場合とCOVID-19とインフルエンザワクチンの両方を接種した場合の残差交絡による可能性がある。

結論

 このコホート分析では、COVID-19 mRNAブースタワクチンと季節性インフルエンザワクチンを同時接種した場合のv-safeの初期安全性所見として、同時接種を受けた回答者はCOVID-19 mRNAブースターワクチン単一接種を受けた回答者よりも接種後1週間に全身性反応を報告する傾向がやや高いことが示された。また、両群とも接種後1週間の反応の多くは概ね軽度であった。以上の結果は、米国においてCOVID-19 mRNAブースターとインフルエンザワクチンの同時接種に関連した結果をより明確にするのに役立つ可能性がある。

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