【旅行記10】Chumbawamba Journey to HIROSHIMA
※注:この英語の意味が分かった人はおそらく私と気が合うので個別にお話ししましょう
1. うさぎの島へ
10/12(土)朝.4時に目が覚めた私は2号線をひたすら西へ西へ向かい,忠海港にやってきた.この旅の目的地・広島市へはまだ先というのに,ここで私は車を乗り捨てた.
この乗り捨てこそ今回のChumbawamba Journeyの肝となる.実は忠海港には無料の駐車場が併設されており,役所に問い合わせたところ,1泊2泊くらいなら車を置いてても大丈夫とのこと.というわけでここで車を乗り捨てて,忠海港から島づたいに広島市へ向かう旅が決行されることとなった.
ピンク色の可愛らしい見た目をした客船は,7:40に忠海港を出港.向かうのはうさぎの島として名高い大久野島.早朝からお客さんは多く賑わっていた.
島には15分くらいで到着した.ピンク色の客船を降りた先は広場になっていた.
島に降り立つと周りにうさぎの姿はなく,あたりを歩いていると,茂みの中に何羽ものうさぎが隠れていた.そして気がつくと,広場にうさぎがどんどん顔を出してきて,あたりは可愛らしいうさぎたちでいっぱいになっていた.忠海港ではうさぎのエサが販売されていて,エサを買って持ってきた観光客がエサを差し出すと,うさぎはそれに群がって美味しそうにエサを食べていく.
中には港で売られていたエサとは違うものを食べるうさぎも.実は大久野島へはエサの持ち込みが自由となっており,にんじんや葉物野菜など,様々なエサを自由に持ち込むことができる.「うさぎにはにんじん」という誰が決めたか分からないステレオタイプだが,ちびちびかじっていく姿は愛らしい.
観光客がエサを地面に撒くと,瞬く間に群がるうさぎたち.7羽ものうさぎが群がる光景はなかなかお目にかかれない.
大久野島のうさぎたちは人に慣れているからか,散歩しているとこちらに向かって近寄ってきて,前足をあげてエサをねだる姿がよく見られる.私はこの時エサを何一つ持っていないいわゆる「無課金おじさん」だったので,エサをねだられても困る.
港の広場を離れて島を時計回りに進んでいく.穏やかな海が広がる島の散歩道.左手前に見えるのは電源開発の竹原火力発電所.
散歩しているとうさぎ用の水飲み場がいくつかある.観光客がここに水を入れて,うさぎに飲んでもらうのだとか.
島の外周をぐるりと回っていく.観光客の姿もいなくなり静かになり,うさぎの姿もまばらになった.それでも,茂みの中からいきなり飛び出して,こちらに向かってやってくるうさぎは何羽もいた.そして再び前足をあげてエサを「おねだり」される.すまんがエサは何も持ってないのよ…
そんなうさぎだらけの島には実は暗い過去がある.かつてこの島には日本軍の毒ガス製造工場が建設され,住民は強制退去となり,地図からその島の存在が消されたという歴史がある.この施設は島で製造された毒ガスを貯蔵する貯蔵庫だった場所.鉄筋コンクリート造の空虚な空間が広がる.
ちょうど島を半周したところ.突如現れた人工的な建造物は砲台の跡地である.毒ガス製造工場が建設される前,要塞として機能させるために陸軍によって砲台が建設されたそうだ.
戦争遺構を見ながら散歩しているとまたまたうさぎに「おねだり」される.前足をあげて鼻をヒクヒクさせる姿は愛らしいが,残念ながら「無課金おじさん」には何もしてあげられることがない.
さらにうさぎの猛攻は止まらない.背後から走って近づいてくるうさぎの姿.「二兎追う者は〜」どころか,二兎に追われる者と化した.
うさぎたちの猛攻を凌いで,坂を下った先には大きな建物がある.こちらは大久野島で毒ガスを製造する際に電力を供給するために使われた発電所の跡である.物々しい雰囲気が漂うが,そんな中を島のうさぎたちは元気よく駆け回る.
発電場跡から先に進むと,広々としたキャンプ場が現れる.そのキャンプ場では白菜を食べるうさぎの姿が.
1時間ほどで島を一周したあとは,大久野島の毒ガス製造の歴史を学べる毒ガス資料館へ.島の毒ガスの製造体制,使用用途など,小さい資料館ながら数多くの展示があった.
そして帰りの船の時間が近づいてきたので,休暇村からバスに乗って第2桟橋へ移動.大久野島で唯一のバスは細い道を進んで桟橋へ向かう.
瀬戸内の穏やかな海に現れたフェリー.このフェリーで次なる島・大三島へ渡る.
船は大久野島で多くの観光客を下ろして,およそ15分の短い航海へ出発する.
2. 「神の島」探訪記
船は大三島・盛港に到着した.大三島は愛媛県今治市に属しており,広島県から愛媛県に入った.ここから先は大三島の島内を移動していくのだが,盛港にはバスがやってこない.幸いにもシェアサイクルのポートがあり,自転車を借りることもできるのだが,この日は3連休の初日.自転車はすでに借りられており1台もなかった.そこでここから先は最寄りのバス停まで徒歩移動となった.
歩くことおよそ45分,ようやく最寄りのバス停に到着した.バス停の前には港のターミナルのような建物がある.しまなみ海道が開通する前まで使われていた港なのだろうか.
中に入ると待合室があったが,事務所はすでに閉まっており,その跡地にイラストが描かれていた.
時刻はすでに11時過ぎ.そろそろお腹が空いたのであたりの店を探していると,おしゃれなピザ屋を発見した.
そもそもピザ屋に一人で入ること自体に勇気がいるのだが,そのピザ屋がおしゃれだと尚更困難を極める.意を決して入ると,カウンター席も用意されており,なんとか耐えた.ピザを注文すると,奥の窯でじっくりと焼いてくれて,その香ばしい小麦の匂いが店内に充満する.しばらくして出来上がったピザは,生地がもっちもちで,食べ応え抜群だった.
井口港からバスに乗って大山祇神社へ.伊予国一宮としても知られる神社だが,実はものすごく歴史のある神社.今の日本人の感覚的には,離島なのになぜそんな立派が神社があるのかと不思議に思うのだが,古くから海運が発達していた瀬戸内海ならではかもしれない.
境内には日本刀や甲冑といった武具が数多く展示された宝物館がある.入館料1,000円と少しお高めだが,国宝・重要文化財の指定を受けた武具の8割が集まっている,大変貴重なコレクションを見物できる.
大山祇神社で参拝と国宝の見物を終えたあとは,近くの道の駅へ.道の駅にはシェアサイクルのポートがあり,ここから自転車を借りて移動することにしていた.しかしこの自転車,めちゃくちゃ高額なのだ.30分で500円,12時間借りて6,000円と超高額料金.なぜわざわざ高額な自転車に課金したのだろうか.
この自転車,実は島のあちこちにポートがあり,島から島の移動に重宝するのである.特に,私が今から向かおうとしている大崎下島へは,大三島から船に乗って岡村島へ渡り,岡村島から橋を渡って行く必要があるが,この区間に路線バスは存在せず,徒歩移動が原則であった.そこで,大三島のどこかから自転車を借りて岡村島へ向かい,自転車に乗って橋を渡って,大崎下島へ向かう計画を立てた.時間は少し余裕を持って2時間半程度借りようと計画していたが,それでも料金は2,500円と相も変わらず高額なのだが,先ほどシェアサイクルを諦めた盛港から自転車を借りていればさらに料金を支払う羽目になっていたので,盛港から徒歩を選択したのは賢明な判断といえよう.
自転車を借りていよいよ自転車の旅が始まる.岡村島行きの船が発着する宗方港までは約10kmの道のり.道中では「ところミュージアム」に立ち寄って,芸術作品を鑑賞しながらミュージアムからの景色を楽しんだ.
そして船がつく20分前には宗方港に到着.アップダウンはあったものの,電動自転車だったので楽々だった.
ここで次なる目的地・岡村島へ渡るフェリーの乗船券と自転車の乗船券を購入.フェリーに自転車を積み込むのは人生で初の経験.
そしていよいよフェリーが到着.みしまという名前のフェリーは,長崎や鹿児島にもあり,少し懐かしさを覚える.(どちらもすでに乗船済)
船は瀬戸内の島々を縫うように進んでいく.
3. 自転車で県境越え
そして船は岡村港に到着.岡村島は愛媛県今治市なのだが,岡村島と橋で繋がっている大崎下島は広島県呉市である.ここからは自転車での県境越えに挑む.
自転車も高額なのでそのまままっすぐ大崎下島に向かってもよかったが,せっかくならばと岡村島の絶景スポットへ向かうことに.港から少し進んだところに「ナガタニ展望台」への看板が立っており,そこから電動自転車でぐんぐん山を登っていく.途中から電動自転車でも登れないくらいの急勾配となり,暑い中滝のような汗をかきながら自転車を押して登って行く.そしてたどり着いた先にあるのが,この絶景である.
南側に見えるのは四国本土.左手には来島海峡大橋を望む.
先ほどの展望台から少し下って,西側には大崎下島の御手洗集落が見渡せる.自転車を返すポートがあるのはこの集落の中.この景色に出会えるのなら,高額自転車を借りるのも悪くないだろう.
展望台からブレーキをかけてゆっくりと坂を下り,いよいよ大崎下島へと渡る.目の前には大崎下島へと渡る3つの橋が見えてきた.一番右手の最初の橋が,ちょうど愛媛と広島の県境を渡る橋である.
そしていよいよ自転車で県境越え.愛媛県今治市から広島県呉市へと入った.
あと2つ橋を渡って目的地・大崎下島に入った.御手洗に入ると,風情のある街並みが広がる.御手洗は国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されており,まるでタイムスリップしたかのような古き良き街並みが楽しめる.
御手洗で自転車を返却した.予定通り2時間半の利用に収まり,出費もなんとか2,500円に抑えた.御手洗からはバスに乗って本土に戻る予定だったのだが,まだバスまで1時間ほど時間があったので,船宿を改装した喫茶店にお邪魔することに.
景色の良い2階席がちょうど空いており,外の景色を楽しみながらみかんジュースとカボチャプリンをいただく.オレンジジュースは,大崎下島の名産・大長みかんを使用しており,その濃厚な甘味と酸味に癒される.少し酸っぱいなと感じたら,カボチャプリンの優しい甘さでお口直し.店内は閉店間際でお客さんもおらず,バスの出発時刻までのんびりと過ごした.
ぼっち飯には勿体無いくらいの素晴らしい空間.次行くなら誰かと一緒に行きたいものだ.
そしてバスが到着.ここからはとびしま海道を伝いつつ本土へと戻る.
とびしま海道は安芸灘大橋から下蒲刈島,上蒲刈島,豊島,大崎下島,岡村島を結んでいる連絡架橋ルートで,このバスでは大崎下島から順番に橋を渡っていき,本土へと向かう.バスの乗客は誰もおらず,運転手さんと雑談しながらまったりと夕暮れを眺めていた.運転手さんは,私が高知県出身というと,坂本龍馬談義を繰り出すような結構な歴史オタクだった.
運転手さんと話しているうちに日が暮れ,バスは広駅前に到着.ここでバスを降りて近くのホテルへと向かう.
ホテルはバス停から歩いてすぐのところにあった.3連休初日ということもあってホテルはなかなか取れなかったが,幸いにも駅近のホテルに空きがあって助かった.喫煙室だったのだが,消臭剤をふんだんにかけて難を逃れた.
宿に荷物を置いて,近くの熊本ラーメンのお店でご飯にすることに.呉まで来ておいてなぜ熊本ラーメンと思うかもしれないが,こういう地域密着型な店だからこその良さがある.マー油が効いたこってりスープはビールとの相性抜群.
そして帰りにスーパーに立ち寄り,バスの運転手さんに教えてもらった呉の名物・がんすを購入.すり身に衣がついており,徳島のフィッシュカツに近いものである.食べてみると意外とスパイシーな味付けで,スーパーで買った辛口の地酒ととてもよく合う.
4. 呉日和
翌朝.広駅からJRに乗って呉駅に向かい,そこからバスに乗って歴史の見える丘へ.目の前には造船所があり,そこには戦艦大和を建造したドックが残されている.軍港のまち呉らしい光景.
造船所とこの道路には標高差があるものの,造船所のクレーンの方が圧倒的に高い.天高く伸びたクレーンの前を,IHIの広告がされたバスが通っていく.
先ほどの場所から下ったところに海上自衛隊の呉基地があり,その先には潜水艦を留め置く潜水艦桟橋がある.黒く重厚感のある潜水艦がたくさん停泊している.
潜水艦桟橋でのんびりしていると,大きな船が入港してきた.こちらは敷設艦むろと.聞くところによると結構レアキャラらしい.
潜水艦桟橋の裏手には赤煉瓦の倉庫が立ち並ぶ.舞鶴や横浜といった港町では赤レンガ倉庫がすっかり観光地となっているが,こちらは自由に立ち入りはできない模様.
串山公園に登って呉の街並みを望む.奥には広大な製鉄所が見えるが,ついこの前操業を停止したばかりだ.製鉄所らしい高炉が立ち並ぶ光景が美しい.
呉の街並みは自衛隊基地,造船所,工場,そして坂が多く変化の富んだ街並み.
そして坂を下った先にある呉基地ではこの日,基地の一般公開が開催されており,朝早くから長蛇の列ができていた.次の予定まで時間があったので列に加わり,ぞろぞろと並んで中に入っていくと,目の前に広がったのは艦船が立ち並ぶこの光景.ミリタリーオタクでも,艦これのオタクでもないので,艦船のことはほとんど知らないのだが,知らない人でも十分に楽しめた.
基地から戻り,呉駅からいよいよChumbawamba Journeyの目的地・広島へと向かう.
13時ごろ広島に到着し,本通でお好み焼きを食べたのちに,ぶらぶらと原爆ドーム付近を観光する.この日のメインイベントは夕方からなのでゆっくりと過ごした.
そして会場前に到着.路面電車で南へ進んだところにある海に面した会場だった.穏やかな広島の海が広がっていた.
メインイベントを終えたのちに宿へ戻り,翌日は宮島観光へ.宮島で食べ歩きや厳島神社への訪問を楽しんだのちに帰路についた.
帰りは宮島口からJRに乗ってまっすぐ三原駅へ.三原駅から呉線に乗り換えて車を停めている忠海駅へ向かった.
というわけで,Chumbawamba Journeyの様子をお届けした.最後までこの名前の意味がわからない方もいたかもしれないが,まあそこはあまり気にしないでいただきたい.最後までお読みいただきありがとうございました.
完
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