英語(リーディング)の研究的学習

共通テスト(旧センター試験)英語に対する上位層の認識

共通テストの英語(リーディング)は、基本的に奇問はなく、「答えが書いてある」から間違える方がおかしいというのが、上位層の認識である。さらに上位層の上位は高2までに英語の学習が殆ど終了している場合もある。日本語訳を読めば分かることであるが、書かれている内容は、「中学生であれば十分に読解できる」程度のものである。

共通テストは、何が難しいのか?

多くの受験者を悩ませるのは、その無意味とも思える「分量の多さ」である。設問を含めた総語数は約6000語であり、設問を解く時間を考慮すると、平均でWPM160を目指さなくてはならない。ただそれ以上に、そもそも「文章を読むフォーム」それ自体を切り替えなければならない。

「文章を読む」ということに対する「規範」

文章を読むということは、基本的に隅から隅まで読むということである。これは、小学校以来の国語教育における「本読み」において躾けられ、内在的な規範となっている。この規範それ自体は「正しく読む」ために必要なものであるが、共通テスト英語で成果を上げるうえでは、潜在的な心理的障壁となることがある。つまり、「飛ばし読み」や「スキャニング」が、文章読解の態度として不誠実・不道徳なものと感じられるということである。

精読に値する英語―不誠実に書かれたものは不誠実に読んでよい

共通テスト英語には、「筆者(author)」が存在しない、少なくとも見えない。また文部科学省の方針によって、問題作成に不可解な制約が課させれた結果、歪な試験になっている。福沢諭吉なりカントなりが、言うべくして言ったのとは異なり、共通テスト英語は「情報処理的な試験」のために書かれたものであり、そこに知的誠実さはないと言わざるを得ない。
共通テスト英語は、疑似会話文・疑似広告文などの「実用的」な英文や、説明文とその擬似ノート(要点図式)などである。特に前者に関して考えてみると、日本語で書かれたチラシなどを隅から隅まで読むことはない。「自分の必要に応じて拾い読み(スキャニング)」をしているはずである。共通テストにおいては、この「必要性」は予め出題者によって設定されているため、それを自分の必要性とみなして拾い読みしていかなければならない。

読む前に全体像を捉える

共通テスト英語は、スキャニングがしやすいように「リード文」や「見出し」が付されていることが多い。これらのマーカーを情報の引き出しとしてラベリングしながら、英文の全体構造を把握しておくと、読解における予測可能性が向上(何が書かれているか予想し、それを確証しながら素早く読解できる)し、設問回答時のレファレンスも容易になる。
この作業は、読書で言えば、本のタイトルや著者、目次や序論などを確認する作業に近い。二次試験などの長文読解では、こういった作業をすることはないので、読解における認知負荷は高くなっている(予測可能性が低い)。

共通テスト英語の読解フォーム

  • スキャニング(拾い読み):選択肢の特徴的なキーワードを目印にして、本文に立ち返って正解の根拠を探る

  • スキミング(全体像の把握):本文に目を通す前に、リード文や見出しから、文章の全体像を把握する

  • 整理しながら読む:長めの説明文に関しては、段落ごとに要旨をまとめながら読むと、最終の要約問題を解きやすくなる

研究的学習法―セルフテストとセルフレビュー

①試験本番の理想的な時間配分を設定する
②各大問をテスト形式で、1.5〜2倍程度の制限時間で回答する(必ずしも通しである必要はない・慣れてきたら、少しずつ制限を厳しくする)
③答え合わせをする前に、各設問の正答の根拠をもう一度考える(辞書なども使う)
④解説は読まずに答え合わせだけして、間違いがあれば、再度正当の根拠を吟味する
⑤解説を読みながら、正答の根拠を確認し、あるべき読解フォームを考える(慣れてきたら、解説を読む前にこの2点を考察する)
⑥目標得点を基礎にしながら、全体を通覧して「正答すべき問題」なのか「間違っても仕方のない問題」なのかを再検討する
⑦一定期間を空けて、再度制限時間内(80分通し)で回答する

研究的学習法によって見込まれる学習効果

多くの予備校や塾では、共通テスト対策と銘打って、「共通テスト対策マニュアル」を講義している。このマニュアル自体は、優れたもので参照するに値するが、マニュアルの趣旨を理解せずに、マニュアルに唯々諾々と従うだけでは、そのマニュアルを最大限に活かすことはできない。

重要なことは、マニュアルをマニュアル通りに執行することだけではなく、マニュアルの趣旨を理解し、それを臨機応変に活用することである(さらにはマニュアルを書き加えていくことである)。そのためには、自分なりのマニュアルを確立する必要があり、研究的学習法はこれを目指している。

部分的な正確性も疎かにしてはならないが、各設問を常に全体的な複数の文脈との兼ね合いの中で、考察していかなければならない。こうした考察を積み重ねることで、「こういう場合はこうする」という自分専用のマニュアルが脳内に確立されていく。

複数の文脈

  • なぜそれが正解なのか?

  • どのように目を動かせば、正解できるのか?

  • 時間内に回答するには、何が必要か?

  • 本番で得点すべき問題なのか?(各予備校の模試は設問ごとの正答率が分かるので便利である)


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