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💡深掘解説💡東北大 英語長文・2022年・大問1【問1】


本文の要旨

地球環境の変化によって、移住を余儀なくされている人々がいる。こうした環境難民を救うには、もはや環境保護政策では間に合わない局面になっている。それゆえ、環境難民が移住先に適応できるような施策を実施しなければならない。

本文についての寸評

環境難民の問題を知っている者は有利であったろう。しかし、この問題を知らない者でも、本文を読めば十分に環境難民について理解することはできたはずである。

理解の分かれ目となるのは、第4段落である。環境難民を救うには、従来の環境保護政策では間に合わないため、適応戦略へと切り替えなければならないという論旨を把握できたかどうかが鍵となる。

問1

概要

問1は、(1)環境難民の定義と、(2)どのようにして環境難民となってしまうのかを問う問題であった。後者に関しては、「第2段落の内容に即して」という条件が付されいる。東北大の出題としては珍しいが、受験者のレベルであれば、該当箇所を発見できないということはないので、条件というよりはヒントとなっている。

(1)について

回答の根幹となる該当箇所は、第1段落4行目半ば以降の1文である。refugees 以下の分詞句を上手くまとめることが第一歩である。この部分を暫定的にまとめると、「紛争ではなく気候変動から逃れている難民」となる。

ただこの箇所だけをまとめるだけでは、説明として心もとない。さらに説明を充実させるための要素を探してみる。先程の文の主語 They は前文の「リフトヴァレー湖地域に住む数千人」、つまり環境難民である。そこで、前文の述語部分を訳出してみると、「彼らの自宅から追い出されている」となるから、難民の説明として利用できそうである。この点を踏まえて、再度回答を練り直してみると、以下のようになる。

  • 紛争ではなく気候変動が原因で、自宅から追い出されている人々のこと。

  • 紛争ではなく気候変動が原因で、移住を余儀なくされている人々のこと。

2つ目の方が回答としては洗練されている。1つ目でも十分説明できてはいるが、「追い出される」という語感がやや稚拙に響く。「家賃を滞納して追い出された」とか「勘当された」という語感をもつからで、前半の深刻さと響き合わないからである。

補足事項

東北大による出題の意図では、(1)の回答に「難民」という言葉をそのまま使ってはならないと述べられていた。難民といえば、もはや説明不要の感もあるが、下線が引かれている以上、全ての語句を丁寧に説明するつもりで臨む方がよいであろう。

「Aを説明せよ」という定義を問う問題であれば、「AはBである」という主述の構造を探してみるとよい。修飾関係の内部にも主述の構造があることは、関係代名詞などの例によっても納得してもらえると思う。

(2)について

(2)は第2段落の内容に即して、【具体的に】説明せよという指示であった。これが一部の受験者を悩ませたようである。というのも、第2段落全体が、或る環境難民予備軍の一家のエピソードだったからである。

指導者を含めた我々は、説明の都合上、具体と抽象という二元論で以て、単純に英文を処理しがちであるところに、「具体的」とは一体どういうことであるのかを問いかけるような問題であった。抽象度という言葉があるように、今回は要求されている【具体度】を考えて回答しなければならなかった。

しかし、回答の方針としては単純で、第2段落前半のマイヤホフの発言をまとめるだけでよい。そこでの主語は、総称の you であり、個人的体験ではなく、環境難民に陥る経緯の一般論を述べているからである。ただマイヤホフの説明は【詳細】であるから、本問における【具体的】とは【詳しく説明する】と察知して、後半の個々の具体例を除外することができたかが分岐点となろう。

さて、マイヤホフの発言をまとめてみると

  • 気候変動によって、家や学校、病院、道路、教会といった生活に必要不可欠な施設を失ってしまったために、そうした施設を求めて、新たな土地に移住せざるを得ない状況。

  • 失業といった適応可能な状況ではなく、気候変動によって、生活に必要不可欠な施設を失ったために、新たな土地に移住せざるを得ない状況。

まず、マイヤホフの発言における論法を誠実に追跡することから始めてほしい。

  • 仕事がなくなったら、新しい仕事を探せばいい

  • 全てを失ったら、どうしようもない(impossible situation)

つまり、仕事がなくなっても、家や学校などのインフラがあるなら、そこでまだ暮らしていけるが、インフラ設備がなくなると、どうしようもなくなってしまうということである。ここで、マイヤホフは一般的な移民と難民とを対比して、難民の深刻さを強調しているのである。2つ目の回答は、そうしたマイヤホフの対比強調を含めた回答である。

捕捉事項

東北大の出題の意図では、マイヤホフの一家は、まだ環境難民ではないため、この一家を具体的に説明しても、設問の要求に答えたことにはならないと指摘しています。確かにマイヤホフ一家は、まだ移住していないので、この指摘は論理的なのですが、論理的すぎるような気もします。この一家は、環境難民予備軍と言えるので、難民にならざるを得ない状況としては参考にはなると思います。しかし、あまりにも具体的すぎるという点で、やはり回答に盛り込む必要はないと判断すべきでしょう。

【その2に続く】


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