💡深掘解説💡東北大英語長文・２０２２年・大問１【問３】

2023年9月13日 07:46

問３

問３は、下線部Cの具体的内容を、第６段落に即して、回答するよう求められている。本年度は問１にもあったように、該当箇所が予め指定されているのが特徴である。また、下線部の単語 "asset" "burden" の内容も明らかにするよう指定がある。

例年の出題は、悪く言えば受験者に回答を丸投げする（良く言えば、受験者の主体性を見定める）形であったが、東北大学がどこまで説明を要求しているのかを窺い知るのに、本年度の出題が参考になる部分があると思われる。

下線部を含む１文の解釈

第５段落では、第４段落に引き続き、環境難民に対する認識の変化について述べられている。論理は同じで、これまでは環境難民をどうすれば減らせるかを考えていたが、今では環境難民を移住先に適応させるにはどうすればよいかが主たる課題となっている、というものである。

下線部Cを含む１文は、この後件（今では環境難民を移住先に適応させるにはどうすればよいかが主たる課題となっている）を表す１文である。

下線部Cは、"focus on" という周知の熟語動詞が名詞として用いられている。意味は変わらず、「集中する・焦点を当てる」であり、何に集中するかが "on" 以下に記述されていることを確認しておきたい。

さて、下線部の文構造自体はさして難解ではないだろう。全体としては、＜疑問詞＋to不定詞＞の名詞句である。その内部は、＜make O C＞を骨組みとして、＜rather than＞により、２つのC（asset, burden）が並列されているという構造である。

それゆえ、下線部Cを訳すと、以下のようになる。

彼ら（環境難民）を、彼らの行き先である地域にとっての重荷にするのではなく、財産にする方法。

第６段落の趣旨を把握する

第５段落最終文、すなわち下線部Cで述べられたことは、第６段落が受け継ぎ、具体的に説明する格好となっている。つまり読み手としては、環境難民が、移住先で「重荷」となったり、「財産」になったりするとは、一体どういうことなのかと、問いを立てながら、読んでいくといい。

第１文には、
移民は都市の成長に必要である（メリット）
しかし、
無計画な移民は問題を引き起こす（デメリット）とある。

第２文では、環境難民を受け入れるのに、どのような準備が必要であるかが述べられている。具体的には以下の通りである。

インフラ整備
公衆衛生、教育、医療などのサービス向上

第３文以降は、こうした準備は財政難の自治体にとっては容易ではないことが語られている。

回答を練り上げる

第６段落で語られた、移民のメリット・デメリットと、メリットを得るために必要な準備をまとめて、先ほどの和訳に盛り込んで、説明するといいだろう。

【和訳（再掲）】
彼ら（環境難民）を、彼らの行き先である地域にとっての重荷にするのではなく、財産にする方法。

【回答例】
無計画な環境難民の受け入れによって、彼らを問題を引き起こす重荷とするのではなく、インフラ整備や、公衆衛生・教育・医療などのサービス向上によって、彼らを都市の成長に必要な有益な存在にすること。

今回は、＜how to＞、すなわち「方法」を具体的に説明すればよいので、そういった方法の金銭的な事情にまでは触れないことにした。

補足事項

本文では、無計画な難民受け入れが、具体的にどのような問題を引き起こすかについては、あまり触れられていないため、イメージが湧きづらいかもしれない。第６段落では、淡水に大量の塩分を流し込むという比喩しかない。第１０段落では、無計画な移民受け入れのデメリットが少し語られている。難民は、外国語の習得に苦労するうえ、貧困等で十分な教育を受けられないことも多い。このようにして社会階層が固定化すると、治安等にも問題が生じるということである。これを機に、移民難民問題について、調べてみるとよいだろう。