組織で考える女性たちの健康課題|【1】働く現代女性たちが抱える、体の特性と悩み
YourConciergeには日々、ビジネスパーソンから様々なご相談が寄せられます。
その中の一つが、女性の健康に関する相談です。
女性の健康課題と仕事は、切っても切り離せない繋がりがあります。
これらの問題は、当事者個人だけでなく、組織全体で認識し、理解を深め、適切な対策を講じる必要があると考えています。
私たちYourConciergeの元に寄せられる「健康」に関する利用者の声をもとに、2回にわたり女性の健康問題について考えていきます。
今回は、働く女性が抱える体の特性と悩みについて紹介し、次回は企業の取り組みについてお伝えします。
働く女性たちの見えない健康課題
男女に関係なく、知識がないために発した何気ない一言が、同僚や部下を傷付け、仕事の意欲を削ぐことがあります。女性と男性が経験するヘルスイベントの違いを理解することは、共に働く上で不可欠だと考えています。
例えば、これまでの健康診断では、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病に焦点が当てられてきました。これは主に40代の男性に関連するものです。
一方で女性に関しては、昨今「痩せすぎ」が問題になっていたり、女性特有のPMS(月経前症候群)や子宮内膜症などが大きな健康課題となっています。
下図で示すように、男女の健康問題は年代によっても大きく異なるため、その違いを理解し、性別や年代を考慮したサポートを行う必要があります。
女性の健康問題と仕事への影響
2022年のパーソルキャリアの調査によると、1,304人の女性のうち、健康が理由で「働き方を変えた・諦めた経験」があると答えた割合は、全体の54.1%でした。
企業が女性の健康に関するサポート体制や取り組みを整備できていない点について指摘する下記のような調査も存在します。
女性は、適切な指導やサポートがあれば、仕事を続けることができます。「個人の問題」として片付けられてきた健康問題を、組織全体の課題としてサポートしていく必要があります。
では、女性が経験するヘルスイベントにはどのようなものがあるのでしょうか。
ヘルスイベントの陰に隠れた見えない苦悩
パソナが働く女性660名に実施した「直近3年以内に発生した症状」に関するアンケートによると、20代~40代の女性には月経関連のPMSなどの不調が多く見られ、30代では妊娠・出産に関連する症状や疾病、40代~50代では更年期障害を経験していることがわかりました。
続いて、具体的にどのような症状を経験するのかをご紹介します。
月経
幅広い年代の女性が抱えており、かつ不調の原因として上位に位置するのが、月経に関する不調です。パーソルキャリアの調査によると、PMSや生理による症状で働き方を変えた299人のうち「転職した」と回答した女性は21.5%に上りました。
不妊
晩婚化により不妊治療を行う女性が増加しています。治療には、経済的・心身的・時間的な負担が伴い、通院回数も多く、長期間にわたることが一般的です。そのため、仕事との両立に悩み、治療を諦めるケースも見受けられます。企業は、組織内で不妊治療に対する理解を深め、プライバシーを保護した上で、治療と仕事の両立をサポートする体制を整えることが求められます。
妊娠
妊娠中のダイエットは、低出生体重児を出産するリスクや、生まれてくる子どもの健康にも影響を与える可能性があります。アメリカの出生児15人種の中で、日本人の平均出生体重が最も小さいことがわかっており、これは母親がやせ型であることや、妊娠中の体重増加が少ないことが原因とされています *。医師や栄養士と相談しながら健康的な体重管理を行い、産後も元気に働けるようサポートすることが重要です。
更年期障害
妊娠・出産や婦人科系疾患に関するサポートに比べ、更年期障害への関心は低い傾向にあります。更年期障害は多数の症状があり、勤務中にも発症することがありますが、ほとんどの企業ではその対処を自己責任とする傾向があります。高齢化が進み、女性が長期的に活躍できる環境を作るためにも、更年期障害に対する理解とサポートが必要です。
がん
女性特有の病気ではありませんが、女性特有のがんも多く治療の心身の負担は相当なものです。「働く女性の健康増進調査2016」 によると、乳がん検診の受診率はアメリカが81%に対して、日本は41%。子宮頸がん検診率もアメリカの85%に対し、日本は42%でした *。子宮頸がんのワクチン接種率も先進国ワーストレベルである* ため、女性自身も知識をつけ予防する必要があると言えます。
以上、女性が経験する健康問題の一部を紹介しました。
生産性や労働損失に大きな影響を与えるため、企業としての理解とサポートが必要です。
しかし、サポートを行う側も、また女性自身も、「健康」に関する知識が不十分なため、何から始めればよいか分からないという声が多く聞かれます。
そこで重要になる「ヘルスリテラシー」と、企業の取り組みについて、次回紹介します。