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【リーダーの決断】大切なのは自社の価値を把握すること!強みを活かした事業開拓とリスクコントロール!【グローバルエージェンツ】

デジタルテクノロジーの急激な進歩、コロナ禍やウクライナ危機などにより、現代社会は変化のスピードが速く将来予測が困難です。そんな中でも組織のリーダーは、次々に現れる課題に向き合って決断しなければなりません。実際に現場で活躍しているリーダーは、どのような「決断」を行っているのか?

それを探るために、株式会社グローバルエージェンツの代表取締役社長:山﨑剛さんにインタビューをさせて頂きました。

グローバルエージェンツは『個室でプライベートな居住空間を確保しながらも、充実した共用ラウンジで他の住人と交流できる』というソーシャルアパートメントを展開している企業です。今回特に印象に残ったのは、山﨑社長の以下のお言葉です。

 

「自社の強みをしっかり把握して、他の領域で活かせないか考える」

「自分にとっては小さな強みだと思うことも、他の領域では大きな価値になることがある」

「別の人間に判断を任せても、合理的に考えていけば8割9割は同じ結論に達する」

 

大学在学中にグローバルエージェンツを立ち上げて、ソーシャルアパートメントという新しい生活様式を社会に広めている山﨑社長は、どのような思考で決断を下しているのか。インタビュー記事を通じてご紹介していきたいと思います。

 

プロフィール

山﨑剛
2005年5月、東京工業大学在学中に有限会社グローバルエージェンツを設立。
大学卒業までに1物件をオープン、他2件のプロジェクトを手がける。2006年4月、ゴールドマン・サックス証券株式会社に新卒入社。マーチャント・バンキング部門にて、グローバルのファンド資金を利用した国内の不動産投資に携わり、オフィス・商業施設・ホテル・ゴルフ場・不動産関連会社などの投資案件を担当。2008年に同社シンガポール支社にてアジアでの不動産投資に従事し、2009年1月ゴールドマン・サックスを退職。2009年2月、株式会社グローバルエージェンツ代表取締役に再就任。

 

聞き手
株式会社トレンド・プロ代表取締役社長 岡崎 寛之
グローバルエージェンツでインターンとして働いた経験有り。

株式会社トレンド・プロプロデュース部 リーダー 伊勢村 幸樹
現在、グローバルエージェンツが運営するソーシャルアパートメントに在住。

共用スペースを充実させて、新たな生活様式を生み出す



岡崎:まずはグローバルエージェンツを立ち上げた背景をお聞きしてもよろしいでしょうか?
 
山﨑:私は19才の時にロンドンに留学して、シェアハウスでの暮らしを経験しました。その生活様式に面白さを感じた私は、日本に帰ってからも外国人向けのシェアハウスに入居したんです。そこで様々な国籍や職業の人と交流して、自分の視野や人間関係を広げられる魅力を実感しました。一方でシェアハウスの共有部については、清掃などが行き届いておらず設備も不十分であるという問題点がありました。そこで『共有部をもっと魅力的なものにすれば、新たな価値を生み出せるんじゃないか』と考えました。それが、『個室でプライベートな居住空間を確保しながらも、充実した共用ラウンジで他の住人と交流できる』というソーシャルアパートメントの発想に繋がり、グローバルエージェンツを立ち上げるキッカケになりました。
 
岡崎:『集まった人との交流が生まれることに価値がある』という気付きと、『共有部に魅力がない』という問題点を解決しようとした結果、グローバルエージェンツの立ち上げに繋がったんですね。
 
山﨑:普通の一人暮らしのアパートでは『住む』という機能しかありません。1日の半分を住居で過ごすと考えれば、その時間を成長に繋げたいと考える人は多いはずです。そういった層に向けて、『魅力的な共用ラウンジ・共用スペースで交流できるアパート』を新しい暮らし方として提案しました。



自分たちの強みを把握して、別の領域で活かせないか考える


伊勢村:グローバルエージェンツはホテル事業やカフェ事業など、様々な事業に取り組んでおられますよね。山﨑社長が新たな事業を開拓したり今までの事業をアップデートする際には、どのような思考の流れで決断していますか?
 
山﨑:自分たちの強みをしっかり整理・把握して、その上で『この強みは別の領域に変えても通用するはずだ』といった考え方で新規事業を選定しています。たとえばアパートとホテルは全く別の業態のように思われがちですが、我々からすると『その場所に滞在する期間』『その期間での体験深度』が違うだけだと考えております。『充実した共用ラウンジ・共用スペースでの交流』はホテルでも通用する魅力だと考えてホテル事業を始めました。より滞在期間を短くした場所としてカフェ事業も始めました。ですから我々としては全く新しい事業を始めたというより、自分たちの強みを活かせる領域を開拓しているイメージです。
 
伊勢村:自分たちの強みをしっかりと認識して、その強みを活かせる他の領域を探す……という考え方なんですね。
 
山﨑:基本的にはその考え方で将来の計画まで立てて、事業を進めています。ですが我々の業態では案件ベースなところがあります。たとえばカフェ併設型ソーシャルアパートメント『ワールドネイバーズ護国寺』は、本当ならもっと先に立ちあげる予定の事業でした。ですが適した条件・規模の物件が見つかったので、事業の立ち上げ時期を早めることにしました。
 
伊勢村:状況次第では新規事業の開始時期を変えることもあるんですね。護国寺のカフェは具体的にどういった思考の流れで設立したんですか?
 
山﨑:通常のカフェは商業地でしか事業的に成立しづらく、住宅地で営業するのは難しいと言われています。ですがカフェ併設型ソーシャルアパートメントなら入居者様の賃料で運営費をまかなえるため、住宅地においても営業が成り立ちます。このモデルでしか成立しないので、競合が出づらく長期的に競争力を維持できます。入居者様にも『日々の生活の中で自由に使えるカフェがある』という新しい日常を体感して頂けますし、近隣住民の方々にとっても近所に気の利いたカフェがあるのは良いことだと思います。事業者の我々にとっても入居者様にとっても、近隣住民の皆様にとってもメリットのあるモデルを構築できました。
 
伊勢村:不動産業は地域の住民の方々との関わり方も大切だと思いますが、そういった部分でもメリットのある取り組みになったんですね。



強みを活かしてリスクコントロールする



岡崎:『新事業を進めるのに適した物件が見つかったが、価格の面などでリスクがある』といった場合もあると思います。そういった時には、どんな判断基準で挑戦するかどうかを決めていますか?
 
山﨑:まずちゃんとリスクマネジメントできるかどうかを考えますね。新しいことへの挑戦にはリスクが伴うので、小規模なものから始めて徐々に大きくしていくスモールスタートを心掛けています。たとえば我々のホテル事業は『ホテルグラフィー根津』という施設から始めましたが、最初から100%ホテルとして運用するのはリスクが大きいと考えました。そこで建物の3分の2の部屋はソーシャルアパートメントにして、残りの3分の1をホテルとする形で営業を始めました。我々が得意としているソーシャルアパートメントで利益を確保することで、リスクを軽減しながら新事業にも挑戦する……という形です。
 
岡崎:自分たちの強みを掛け合わせることで、リスクをコントロールしながら新しい事業に挑戦しているんですね。先ほどからお聞きしていて、自分たちの会社の強みを高い解像度で把握しておられる印象でした。日々の業務の中で、『自分たちの会社の価値・強みは何か?』を強く意識しているということでしょうか?
 
山﨑:事業を進めていくと、根幹となる大きな強み以外にも様々な小さな強みが生まれてくると思います。そして自分たちにとっては小さな強みに思えるものでも、他の領域では大きな武器になることがあります。だからこそ自分たちの強みをしっかり認識して、新しい強みができたら他の領域で活かせないか模索するようにしています。


やりたい事業を実現したいという想いが、起業のための努力を支えた


伊勢村:話は変わりますが、一番最初のソーシャルアパートメント事業を立ち上げる時の、起業の決断は大きなものだったと思います。その時の考え方や想いはどのようなものでしたか?
 
山﨑:会社を設立しようとしたのは2004年頃でしたが、その時は最低資本金制度というものがあり株式会社なら1000万円、有限会社なら300万円必要でした。大学生だった私にとっては、非常にハードルの高いものでした。当時のインターン先である不動産会社で『社内ベンチャーとしてやらせて欲しい』と直談判したものの断られてしまったため、別のインターン先の元上司にお金を借りて自分で会社を設立しました。そして業界の交流会に出席して事業計画を説明することで、物件購入の際のスポンサーになってくれる会社を探しました。その結果スポンサーが見つかり、後は物件さえ見つかれば事業を立ち上げられる状態になりました。
 
岡崎:積極的に行動を続けることで資金面の問題を解決したんですね。学生は甘く見られてしまうことも多いと思いますし、大変だったんじゃないですか?
 
山﨑:最初の頃は甘く見られてしまいがちで、交渉が上手くいかないことが多かったですね。ですが分からないなりに業界のローカル用語を覚えたり、会話を一つ一つ分析するなどした結果、業界の方々との会話も上手くできるようになっていきました。物件のデータは3000件ほど閲覧して、100件以上内覧した結果、2件の物件を契約することができました。
 
伊勢村:地道に努力を重ねた結果、目標を達成できたということですね。それだけ努力を続けられたのは、『ソーシャルアパートメントを事業としてやってみたい』という気持ちが大きかったからですか?
 
山﨑:そうですね。会社を設立する人間には、『やりたい事業があるから設立する』『会社を作りたいから設立する、事業は後から考える』という2つのタイプがいると思います。私は完全に前者のタイプで、ソーシャルアパートメントの事業を実現したいという想いから、起業に踏み切りました。






論理的・合理的に考えれば、誰が判断しても8割9割は同じ結論に達する



岡崎:それでは最後の質問です。事業の規模が大きくなると、山﨑社長が全てを判断するのではなく、部下にも決定権を委ねる必要が出てくると思います。そんな時、どのように部下に指導していますか?
 
山﨑:判断すべき案件が出た際に、共通の判断基準で論理的・合理的に考えていくようにすれば、誰が判断しても8割から9割は同じ結論に達すると思います。『Aという視点とBという視点があった場合、どちらの視点を優先するか?』などの判断の基準を部下に共有すれば、同じ優先順位の付け方を部下もできるようになるはずです。ですから私はなにかを決断した際に、『なぜこの案件をやっていくのか?』『どういう判断でこの結論に至ったのか?』といった背景をしっかり部下に説明するようにしています。その繰り返しで考え方を共有していけば、部下も同じ判断ができるようになると考えています。決定事項だけを伝えて理由を話さなければ、『なぜこれをやるんだろう?』と部下が疑問に感じてしまいモチベーションにも悪影響がありますし、どんなに小さな決断でも理由をしっかり説明するのが大事だと思います。
 
岡崎:まずは山﨑社長が決断を下した時に、『どういった理由で判断したのか』をしっかり部下に説明する。そうやって考え方を共有していくことで、部下も同じ判断ができるようになっていく……ということですね。『論理的・合理的に考えれば、誰が判断しても8割9割は同じ結論に達する』という考え方は独特で面白く、非常に理に適ったものだと思いました。このたびは貴重なお話をありがとうございました!