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『The Culture Map』③多様性のために必要な視点
『The Culture Map』/ Erin Meyer
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8つの観点から異文化理解の方法を学ぶ『The Culture Map』。今回は、 Persuading(説得)のギャップについて。
「説得」というと堅苦しく聞こえるが、大半のビジネスマンは日々の業務で多かれ少なかれ説得を行っている。顧客へのプレゼン、メールを通しての依頼、上司への交渉などがその代表例。プレゼンの構成も地域ごとに変えるのが良いらしい。
事実が先か理論が先か?
アメリカや日本のビジネスでは、事実から先に伝えることが望まれる。具体的な事例を後回しにしたプレゼンやメールでは、「で、結局何が言いたいの?」と突っ込まれることも多い。
僕はこれが当たり前だと思って育ってきたのだが、国によっては事情が異なることもあるらしい。イタリア・フランス・スペインといったヨーロッパ諸国では、理論や原則的な理論から話しはじめ、具体的事例は後半に置くことが良い説得の方法なのだという。正直あまりイメージができない。この違いは国の教育方法が大きく影響しているとのこと。
出典
『the Culture Map』本書より Figure 3.1.
つまり、演繹法で考えるのが Principle-first の文化。帰納法で考えるのが Application-first の文化。日本はかなり Application-first の傾向が高い文化であるという。
多様性の国 マレーシアの事情
前回に引き続き、オンライン英会話を使って講師にヒアリング。今回はマレーシア人講師との会話内容を共有。
中国・インド・日本などアジア各国が Applications-first の文化なので、マレーシアも同様かと予想を立てていた。だが、どうやら事情はもっと複雑なようだ。
マレーシア人講師の話①
マレーシアは他民族国家だからね。いろんな価値観の人が共存しているんだよ。僕は中華系マレーシア人だからか、Applications-first の傾向が強いね。インド系のマレーシア人もそう。だけど、マレー系の人々は理論や原則からプレゼンを始めるPrinciple-first の傾向が強い気がするかな。マレーシアが昔、オランダに支配されていたことも影響しているかも。
あくまで個人の感想ではあるが、民族によって考え方の違いを感じることがあるらしい。僕のような日本でしか生活がしたことのない人間には想像が難しい。
マレーシア人講師の話②
中華系マレーシア人は中国の人々とビジネスすることが多いけど、インドやアメリカの企業とビジネスすることも多いよ。Persuading の共通性が相性の良さに関係しているのかもね。一方で、マレー系の人々はヨーロッパのビジネスパートナーが多いかも。まあ、これも一概に言えるわけではないんだけどね。
なるほど。Persuadingの価値観はビジネスの相性に影響するのか。これは興味深い。
2018年の日本の輸出先トップ3は中国・アメリカ・韓国。輸入先トップ3は中国・アメリカ・オーストラリア。すべて Applications-first の傾向が強い国ではある。これらの国々は日本企業との取引も多そう。あくまで参考情報ということで。
多様性と効率
もちろん、価値観が異なるからビジネスができないというわけではないが、難易度が高くなることは間違いないだろう。近年日本でも「ダイバーシティ(多様性)」が何かと話題になるが、とにかく混ざればよいという単純なものでもない。特に、Persuadingの価値観が異なる人々が交われば、理想的なプレゼン資料・メール文面の書き方が異なってくる。一筋縄ではいかないだろう。
多様性チームをマネジメントするためにはどうすればよいのか。筆者が以下の2つのアドバイスを残してくれている。
①異なる文化圏からそれぞれ代表者を立てること
マネージャーは代表者間の調整に努め、代表者たちに自身の文化圏メンバーを説得してもらう。代表者は国際感覚に優れた人を選ぶのが吉。
②本当に多様性が求められているかを事前に慎重に検討すること
業務を効率的にこなすことが求められているのであれば、多様性よりも単一性の高い集団のほうが望ましい。目的と手段をよくよく考えよ。
どちらも納得。これらは多国籍のチームマネジメントでなく、国内組織の合併時でも同じだと思った。日本国内の異なる集団が集まる場合でも同様なのだから、異文化メンバーの集団となればなおさらのことだろう。
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