『The Culture Map』④文化と社内政治
『The Culture Map』/ Erin Meyer
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「社内政治」という言葉には悪い印象が付きまとうが、どの組織でも起こりうることも事実だろう。組織を動かすことは簡単ではなく、組織文化の理解、上位者との距離、なにより意思決定のルールを熟知しておくことが重要である。そして当然ながら、それらの要素は文化によって大きく異なるものである。
本書では、筆者Erin Meyerによって「文化の違いを測るため8項目」が紹介されている。今回はそのうち、「社内政治」と大きく関係しそうな2項目、LeadingとDeciding(意思決定)について。
平等主義 VS 階層主義
まずは、Leading。Leadingは指導という意味ではあるが、本書での内容は「組織構造」「リーダーとの距離」について。
出典
『the Culture Map』本書より Figure 4.1.
上図の左側、Egalitarian(平等主義)に位置する国々では、リーダーと平社員の関係が極めて近い。また、リーダーは平社員と同じ行動をとることを好む傾向にある。たとえば、部下と同じフロアで働く、自転車通勤やカジュアルな服装をするなど。役職を超えて直接交渉も可能。
一方で右側のHierachihal(階層主義)であれば、確固たる階層によって社員のポジションが決まってくる。肩書の組織内影響は大きく、平社員はリーダーに話しかける機会も少ない。席次やメールの宛名順が決まっているなんてことも。ちなみに、日本はかなりの階層主義。
合意形成型 VS トップダウン型
出典
『the Culture Map』本書より Figure 5.3.
続いて、Deciding。これは意思決定が多人数の合意に基づいて行われる(Consensual)か、それともリーダーのトップダウン(Top-down)で行われるかを表している。
Consensualな文化では、交渉時は複数メンバーを説得する必要がある。また、合意までに時間がかかる一方で意思決定後の実行は早いという特徴もある。一方で、Top-Downの文化ではリーダーの一存で決定がされる。そのため素早い判断ができるが、決定後に修正が多々発生するため実行までに時間がかかる傾向にある。
ほとんどの国で、LeadingとDecidingの二項目については一貫性がみられる。つまり、平等主義な地域ではConsensualな意思決定がが好まれ、階層主義の地域ではTop-downの意思決定が好まれることが多い。ただし、いくつか例外もあり、極めて異例なのが日本だという。
不思議の国Japan
不思議なことに、日本はかなりの階層主義であるにもかかわらず、極めてConsensualな文化を持っている。筆者も日本については驚きを隠せなかったのか、Remarkable Exception(注目すべき例外)と評している。
そんな日本では社内政治をどう生き抜けばよいのか。独特の社会で築かれた、独自のルールがいくつも存在している。その代表例が根回し(Nemawashi)である。意思決定を行うよりも前に、関係各位の合意を得ておく。そう、根回しは日本ならではの流儀だったのである。海外では通用しないかもしれない、あるいは意義が異なってくるかもしれないことを肝に銘じておこう。。。
意思決定と文化背景
各地域における LeadingとDeciding の文化は、それぞれの歴史や政治の形と大きく関係しているという。例えば、北欧の国々の多くは平等主義でConsensualな意思決定ではある。これはヴァイキングの影響が大きいのだとか(意外にもヴァイキングは平等主義だったという)。また、ローマ帝国や中華帝国など巨大な帝国の影響下にあった地域では階層主義でTop-downによる意思決定となる傾向にある。
各国の歴史を知ることは、その地域の組織社会での意思決定方法を学ぶためのヒントになりうるのだ。
じゃあ、根回しと稟議はどこからやってきたんだ?調べてみたものの、明確な答えはわかりませんでした。専門家がいたらぜひ伺いたいです。。。
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