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超短編小説『ナンセンス劇場』032

【ざっくりと】

「ねーお父さん、飛行機はどうしてあんなに重たいのに空を飛ぶことができるの?」

「そうだな、お前に分かり易くざっくりと言えば頑張ってるからだ」

「頑張ってるから…?」

「そうだ、飛行機は一所懸命頑張ってるから空を飛べるんだ」

「ふ~ん…じゃあテレビはどうして色々な物を映すことができるの?」

「まぁそれもざっくりと言えば頑張ってるからだ」

「…………」

「どうした?
 まだ何か訊きたいことがあるのか?」

「いや、もういいよ、ありがとう」


 息子は明らかに不満そうな顔をしていた。
 俺だって自分で言っていて『どうしょうもねーな』って思ったさ。
 でも「分からん」じゃ父親としての威厳ってもんが…。
 俺も明日からもっと頑張ろう…何かこうざっくりと。


【お前はもう知っている】

「ねーお父さん、薔薇って漢字教えて」

「なに言ってるんだ。
 お前もう知ってるじゃないか」

「え? 僕知らないけど」

「いや、お前はもう知っている。
 もう一度言ってごらん」

「薔薇」

「ほらほらほら、ちゃんと言えてるじゃないか」

「言えてるってどういうこと?
 僕、漢字が知りたいんだけど」

「ちなみに『ちゅうちょ』って漢字は言えるか?」

「躊躇?」

「グレート!!!」


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