忙しさから抜け出れない管理職へのメッセージ【重職心得箇条 第8条 佐藤一斎著】
管理職になる程忙しくなり、忙しさの世界から抜け出られなくなります。
重職心得箇条から、忙しさから逃れる術を学びました。
佐藤一斎著 重職心得箇条 第8条 解釈
重職たるもの、勤め向き繁多と云ふ口上は恥ずべき事なり。仮令世話敷くとも世話敷きと云はぬが能きなり、随分の手のすき、心に有余あるに非ざれば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能はざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職多事になる勢いあり。
管理職になったら、
忙しいという言葉を口にしてはいけない。
忙しいとは、心を亡くすこと。
天中殺を空亡という。
空とはこころ、精神、つまり
精神を亡くすこと。こころを亡くしてしまうこと。
優しい気配りを忘れてしまうこと。
心とは、地上における精神でもある。
つまり、現実に何をすべきか、方向性を見失うこと。
「忙しい」という言葉を口にすると、
こころが忙しくなり、忙しくなり、
視野が狭くなってしまって、
手元のことしかみえなくなる。
大局的なビジョンで物事が捉えなくなり、
忙しい「今」に縛られてしまう。
だからこそ、
リーダーや管理職であるあなたが
「忙しい」という言葉を口にすると、
部下の気持ちも忙しくなり、
追い立てられるような気持になるだろう。
忙しい上司のペースに巻き込まれるので、
自分本来のパーフォーマンスが出来なくなる。
そのため、
例え忙しくても、
部下を抱える立場にいるなら、
忙しいと言わない方が良い。
部下をあなたの忙しい心のループに巻き込まない方が良い。
しかし、実際にはメチャ忙しくて、
その割には部下はのんびりしていたりして、
どうしたら良いのか、ストレスもたまり、
心をうしなっていて、
泣きだしたい位、忙しく、
泣きだしたい位、逃げ出したくなる。
何もかもが、自分に集中してしまって。
なぜかというと、
部下が頼りないから、つい自分がやってしまう。
だからつい細かいことまでやってしまうので、
部下に任せることが出来ない。
何でおれのやり方が分からないんだろう…。
何でつめが甘いんだろう…。
ムチャさせると辞めてしまうし、
下手するとパワハラだと言われてしまう。
だったら、
面倒だから自分がやった方が早い。
すると、部下の方も、
「どうせ上司は、
自分でやらなければ気が済まないんだろうから、
勝手にやればいいんじゃないの?」
っていう気持ちになってしまって、
自然に部下がもたれかかってくる。
すると、上司であるあなたは、益々忙しくなるのである。
それではどうすれば良いのだろうか。
佐藤一斎先生の言志録からその答えを探してみよう。
言志録 106条に「無用の用」
凡そ年間の人事万端、算かぞえ来きたれば十中の七は無用なり。但だ人、平世に処おり、心寄する所無くば、則ち間居して不善を為すことも亦少なからじ。今貴賎男女を連ね、率無用に纏綿駆役えきせられて、以て日を渉わたれば、則ち念不善に及ぶ者或は少なからん。此ここも亦其の用ある処なり。蓋し治安の世界には然らざるを得ざるも、亦理勢なり。
考えてみれば、私たちが行っていることの、
7割は無用である。
例えば新卒の採用で忙しいというけれど、
その時期が集中しているから、忙しくなるのである。
そもそも新卒を採用する必要があるのか。
芸術的なパワポ資料をつくる必要があるのか。
難しい言葉を用いる必要があるのか。
チームでやった方が、本当に効果があるのか。
書類に印鑑は本当に必要なのか。
そこまで丁寧にやる必要はあるのか。
このように考えてみると、「無用の用」というのが
私たちを忙しくしている7割を占めている。
でもここで、「無用の用」という言葉の意味をみてみよう。
「無用の用」とは、
無用だと思うことに用があるという意味だ。
つまり、私たちを日ごろ忙しくしている雑用に、
用がある(意味がある)ということだ。
なぜ「無用な用」を私たちは敢えて行って、
それで自分を忙しくしているのだろうか。
論語の「大学」に、
「小人は閑居にして不善をなす」という言葉がある。
レベルの低い人間は、
暇になると余計な事を考えてしまうから、
忙しくしておいた方が良いという言葉。
つまり、忙しくさせていた方が、
余計な事を考えずに、与えられた任務に邁進する。
だから、日常を占めている、7割の無用の用は
用をなすという考え方だ。
うーん、確かに…。
確かに忙しくて、用事がある方が、
自分が人から必要とされている感じがして、
充実感があったり、
余計な事を考えなかったりする。
でも逆からみると、これは自己満足。
レベルが高い人間はしないということらしい。
そしてまた、
これはあくまでも、平和な時代の話。
平和だと無用の用に追いかけられないと、暇になる。
今のような時代の過渡期になると、
余計な事を考える余裕がない限り、創造的前進が生まれない。
そのため、動乱期のリーダーたちに必要なことは、
「余計な事を考える時間的余裕」だ。
それには、自分の仕事の7割を占めている、
「無用の用」から自ら脱却して、
自分の仕事の7割を減らした方が良いだろう。
無用の用をすぐに切り捨てられない場合、
特に、日本社会は変化を嫌うので、
仕事に粗さが目立つようになったなどと、
陰口を言われたりもするから、
それではどうすれば良いかというと、
自分にとって無用の用とは何かを書き出して、
本当に必要かどうか仕分けること。
そして、どうしても切り捨てられない部分は、
部下にそれを振り分けること。
つまり、部下は無用の用をやることになるのだが、
あなた自身がそれにイラっとせずに、
割り切ること。
それが出来ない限り、
動乱期のリーダーは務まらず、
新たなリノベーション的前進力も生まれない。
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山脇史端
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