私の関わる業界についてせきららに語りたい。(警備業編)
前回のブログの続きです。
今回は、警備業について語っていきたいと思います。
なぜ、当社が警備業をしているのか?
私たちは、外線工事をするようになり、道路上の安全のため交通誘導警備員の配置が義務付けられました。
その際に、当社で警備員を配置すればいいのではないか?という至極合理的な考えからでした。
警備業法において、警備の業種を4つに区分けしています。
1号警備・・・施設警備、空港保安警備等
2号警備・・・交通誘導警備、雑踏警備等
3号警備・・・貴重品運搬警備等
4号警備・・・身辺警備(ボディーガード)
当社においては1号警備と2号警備を実施しています。
次に規模についてお伝えします。
警備業の概況では、警備業者全体で、警備員100人未満の警備業者が89.5%を占めます。
弊社は50人以下であり、中小規模の警備業者となります。
得意先そのほとんどは市内の建設業者であり、その他として市役所等の官庁の警備となります。
率直に言えば、吹けば飛ぶような中小企業です。
しかし、40年以上継続してきたことも事実です。
我々は大企業と共存し、地元で生き残ってきました。
警備業で働く人たち
警備業で働く人たちは、基本的に高齢者が多い傾向にあります。
こちらも警備業の概況によると、60歳以上の警備員は45%となります。
他業界と比較しても突出して、高齢者が多いことがわかります。
「警備ビジネスで読み解くニッポン」では、高齢者が多くなっている現状から、「警備業界は日本社会の縮図なのでは?」と問いかけをしています。
確かに、我が国では高齢化率は進展し、年金受給の額によっては働かなければならない現状にあるのかもしれません。
次に、弊社の実態について紹介します。
私は、弊社に入社した際は、本当に驚きました。
給料も日給月給であり、私より倍以上の年齢の方々がたくさん働いていたからです。
また、週払いという制度があるのも初めて知りました。
毎週金曜日に今週分のお金を取りに来るという方法です。
これは、1週間分のお金を給料日よりも前渡しするということです。
またお金を借りる人もたくさんいました。
目の前で泣き崩れ、お金を貸したところ、
次の日には現場をドタキャンし、退職した警備員もいました。
自宅までお金を借りに来る警備員もいました。
良いか悪いかの話の前に、みんな生活をすることに必死なのです。
お金も無いため、「ガスが止められてしまった」「車検する費用が無い」「お風呂に入れない」など日常茶飯事でした。
また、個性が強い方も多いです。
天皇の一般参賀の際には、必ず休みを取り参列する少々右よりの警備員
鉄道マニアの警備員、無線機マニアの警備員、夏休みには2ヶ月休みを取り釣りに行く警備員と多種多様です。
弊社は、女性の警備員も他社と比べれば多いため、社内で結婚した方も2組ありました。
結婚というと、血気盛んな若々しさを想像しますが、みなさん65歳以上の高齢者です。
働いてみてよくわかったことは、
警備とは日本という国の縮図であり、
私たちはここで働く人たちを無視して、社会を営むことはできないと感じました。
隊員から学ぶことは大変多く、
人間的に寛容になれたのも、警備という仕事と隊員の方々のおかげだと思います。
私は自らの無知を知り、「清濁併せ呑む」ということを覚えたのは警備からでした。
私自身の関わり方
私自身は、弊社に入社後現場経験を経て、4年ほどの期間で必要な資格に挑戦し取得してきました。
必要な資格とは、警備員検定2級・指導教育責任者等です。
その後は地元警備業協会からのお誘いで、検定講師を3年ほど経験しました。
ちなみに、警備員検定は国家試験であり、特別講習と呼ばれる試験で、実技と学科が2日間に渡って実施されます。
私は、講師の際に運営と実技考査の試験管を行っていました。
講師になるための研修もあり、神奈川県にある警備研修施設「研修センターふじの」とよばれるところにも行き、講習と試験を経て講師を行うようになりました。
3年ほどの経験を経ましたが、年間においてもたくさんの日程を確保しなければならないため、仕事優先で辞退しました。
日常の仕事ですが、現場の配置は管制の隊員に任せ営業と安全パトロールを中心に行っています。
また、会社運営のためのお金の管理や、人材確保のために戦略的に広報に力を入れています。
その他、警備業をしながら「これは面白い」というアイデアを具現化しています。
例えば、交通誘導の現場では、トイレが問題となります。現場設置の仮設トイレは暗くて汚いため、キレイな移動式トイレ「トイレカー」のレンタルも行っています。
また、警備員の疲労軽減のため、安全靴に特化したインソールの開発も行いました。(下にリンクを貼っています)
いずれにしても弊社の「日常を見守る」というミッションを体現できるように努めています。
業界の構造
警備業界の構造について説明します。警備業は、公安委員会に認定を受けて行う営業することができます。その手続は警察署の生活安全課が行っていることが一般的です。
生活安全課は許可の申請以外にも、年に1度の立ち入りがあります。
そのため、警察との接点が多い業界です。
警備業協会では、年に2回程度の懇親会の場では、
県警の生活安全企画部の部長を必ず呼びます。
(ちなみに、政権与党の議員もよく呼ばれています。)
また、大手警備会社には警察出身者が必ずいます。
前述したように、警備業界は約9割が警備員100人以下の中小企業及び個人事業主が占めています。
残りの数パーセントがよく名の知れた、CM等で見る警備会社です。
警備員の検定においても、その存在感は大きく、
講師の人数や、試験応募者数も全く規模が違います。
特に、ホームセキュリティと呼ばれる住宅の警備をしている会社は強いです。
私たちは、数や規模で勝負したら絶対勝てないということです。
協会においても、必ず理事には大手企業が占拠しています。
彼らはミート戦略で、他社を圧倒し続けているのです。
この業界に関わり、私はどのように立ち振る舞えばよいのでしょうか。
これはとても悩んだ結果、できるだけ共存する道を選びました。
ある時に、知り合いのALSOKの担当者から問い合わせがありました。
「警備員はいますか?」と
「・・・は?」と思っていたところ、
「交通誘導警備員いますか?」と聞かれました。
なるほど、ホームセキュリティをする会社では、
交通誘導警備に積極的に人材を割いていません。
交通誘導は、仕事にとても波があり、人材の採用に苦慮するのが一つの要因でしょう。
担当者によると、得意先から交通誘導の依頼があるそうです。
そんな時に、弊社にお願いしたいとか。
このときから、大手と共存し地元でランチェスター戦略を行っていくことを決めました。
業界の行方
業界の行方は、100人未満の警備会社が主になりますが、2点あります。
(1)事業再編 と(2)技術革新 です。
まず、事業再編でしょう。
前述したように、警備員の約45%は60歳以上であり、
若い人材が珍しい業界です。
これは、若手が働いて生活を送っていくだけの、給料が払われていないことにあります。
企業は顧客との単価の改善と、付加価値を向上させていく必要があります。
これは、私自身も問われている課題です。
そして、働く人だけでなく、事業を継承する経営者も少なくなってきています。
「あの会社はM&Aされた」という話もよく聞くようになってきました。
M&Aをして、うまくマッチングすれば問題ありません。
しかし近年、一部のM&Aコンサルタントは企業をモノとして捉え、
企業の価値をお金で測る部分が多くなりました。
これは私の意見ですが、企業はモノではなく人であると考えています。
会社とは法人であり、法律で人と認められたものです。
法人の目的は理念の実現にあると思うからです。
これから、警備業界の事業再編は待ったなしです。
そこには、人を大切にできるかにかかっていると私は思います。
次に、技術革新について述べます。
「私たちの仕事はAIに代替されてしまう」という話をよく聞きます。
この意見については、警備員側からすれば脅威のほうが大きいでしょう。
しかし、人類は産業革命などの技術の革新があり、その後も雇用が減っていったでしょうか。
技術が変われば、私たちは柔軟に働き方を変え、仕事を継続してきました。
ロボットを使うのも、作るのも、人を介して行われるものであり、
技術は手段であり、目的ではないからです。
安心・安全とは誰のためにあるのでしょうか?
そこに立ち返れば、悲観的にはる必要はありません。
高度な技術も人のためにあるからです。
以上のことから、警備業は今後も人で成り立つ仕事であり
人の感性や感情と共に、継続していく事業なのでしょう。
希望
仕事に希望を持っている人たちの割合は果たしてどれくらいでしょうか?
2割でしょうか、1割でしょうか、それとも1割にも満たないごく小人数なのでしょうか。
中小企業に未来があるのでしょうか。
若手経営者の方々と意見を交換する機会は多いですが、希望を語り合える人たちは、そこまで多くないと感じています。
「警備は必要とされているのか?」
という問いには、「はい」と答える自信があります。
お客様から仕事をお願いされる機会は圧倒的に多いからです。
一方で、働くひとを増やすにはまだまだ努力が必要だと感じています。
魅力的な業界にするためには、私たちが積極的に希望を語る必要があります。
私はこの7年間で、警備を通し様々なことを経験し自分ごとと捉え、
誰かにやさしくなることができました。
この"やさしさ”が大きな希望になっていくのではないでしょうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
弊社のミッションである「日常を見守る」という考えから、建設現場で働く作業員や警備員の疲労軽減のために、“安全靴専用インソール“を開発しました。
株式会社 BMZ と共同開発しています。