新規開業チャンスがやって来る 〜飲食店のアフターコロナ〜
この数ヶ月でワクチンの接種が全国的に実施されていますが、思ったよりも時間がかかり、接種率はまだ思うように上がってきていません。
また、これが進んでいったとしても今回のコロナショックの影響が全くなくなるわけではなく、飲食業界を取り巻く環境はこれからさらに厳しいものとなっていくでしょう。
経済へのダメージはとりわけ大きく緊急事態宣言が解除されたあと、いっときは飲食店も賑わうかもしれませんが、これから予測される不況を避けることはできないと考えられます。
しかし、世の不況というのは常にビジネスチャンスでもあります。
ここからの数年のアフターコロナといわれる時代に、どんな点に着目していれば有利に飲食店ビジネスを展開できるかをまとめてみました。
今後の飲食業界の展望
ここ10年での人件費、食材費の高騰で飲食店の収益モデルは大きく変わり、純利益率を年々落としているお店が大半だと思います。
これは労働人口の減少、社会保険などの福利厚生費の増大によるところが大きく、これに加えて今回のコロナ禍で、この傾向はさらに拍車をかけていくでしょう。
また、飲酒を今までより控えるようになった人、外食費用を抑える人の数は確実に増えており、中食、内食の市場に移行していっているのが現状です。
そして、リモートワークでの在宅率の上昇や家庭での食生活を充足させたことから、商圏が今までと大きく変わっているのが、このコロナ禍の特徴でもあります。
これまでランチが赤字になるなど、あり得なかったオフィス街の飲食店はかなり売上金額を落とし、宴会やパーティー会場に選ばれる飲食店は、その収益スタイルを続けることは不可能になりました。
この状況がコロナ前に完全に戻ることは想像できません。
会社の飲み会ってなくてもやっていけるんだ。
家飲みでもある程度は満足できるんだ。
外食費って今まですごい使っていたんだ。
コロナ禍でこんな気づきがあったことは、とても大きな意識変革なのです。
そして、今まで日中の人口が過密だった地域から郊外に分散し、商圏が変わっていることを意識しなければ、今後の飲食店経営で業績を残していくことは難しいでしょう。
しかし、この状況が大きく変わっている中でも、この変化を逆手に取ることができれば、新規開業のチャンスは確実に転がっているのです。
新規開業計画の大前提
まず、第一に言えることは、このコロナ禍と収束後の不況において、お客様は確実に今までよりもシビアにお店を評価していくようになるということです。
大部分の人たちが、これまでより収入が減ることで、頻度の減っていく外食機会を後悔のないものにしようとお店選びの際、今まで以上によく吟味することなるのは間違えありません。
美味しいものが食べれるお店で、できるだけ楽しく時間を過ごしたい気持ちは、いつの時代も変わりませんが、その厳しい評価基準は相当なレベルで引き上げられるはずです。
これは顧客満足度の高いお店は今まで以上に評価され、満足度の低い店は、はっきりと戦力外通告を受けることを意味します。
つまり、本物のちゃんとしたサービスを提供できるお店は、正当に評価される可能性が今までよりも高くなり、そうでないお店はキッチリと閉店に追い込まれるということなのです。
駅前で人通りが多いし宴会で飲み放題やってれば、そこそこの料理でも儲かる、などと考えているお店は生き残れないことになります。
当たり前の話ですが、第一に考えることは顧客満足度が高い店になっているか?
この一点に尽きます。
どんな細かい開業計画を練って考え込んでいても、10分おきに
「顧客満足度は?」
これを確認すべきです。
これからの新規開業が有利な点
コロナショックも落ち着き、協力金などの補償もなくなることで、不況下の飲食店は生き残りをかけた本当の戦いを始めることになります。
しかし、いつの時代も大不況を契機に立ち上がる事業は必ず存在し、業績を伸ばす経営者もいるのです。
アフターコロナの不況下で新規開業することは、以下のメリットを味方につけることが重要だと考えます。
1. 人材確保がいつもより容易になる
コロナ前から人員不足はとても深刻な地域が多かったのですが、現在は今まで勤務してたお店の経営の仕方にも変化があり、営業時間も短縮、または休業していることから、解雇や退職は多くなっています。
さらに、コロナ禍が収束すると休業手当を長くもらい続けていた従業員が現場戻ることになりますが、特にアルバイトスタッフに関しては思うように働く時間を確保できず、退職する人が急増することになります。
このような動きがあるうちは、適した人材を採用するチャンスがいつも多く巡ってくるはずです。
もし、求人広告にお金をかけるなら、この3年内がもっともチャンスだと考えていいでしょう。
2. 家賃が下がり条件が緩和される
このコロナショックはニューヨークの地価でさえ、一時期5%ほど下落するぐらいどの経済ダメージでした。
すでに都内ではこれと似た現象も一部で起こっており、今までよりもテナントの貸主は、もし借主が退去した場合、いつものように次の入居者が決まらない可能性が高いことから、閉店や倒産の恐れて神経をすり減らしています。
ここから数年は、今まで家賃の交渉など相手にもしてくれなかった貸主が、比較的柔軟に交渉に応じてくれる可能性が高いことからも、今までより有利な条件で物件を契約することは可能であり、家賃交渉や条件の交渉はこれから常識となることでしょう。
なかなか次の入居者が決まらないことから、条件を譲歩したり、飲食不可の物件が可能になったりという現象はすでに起きはじめています。
物件概要の条件が厳しいものになっていても、ほとんどが何かしらの交渉の余地を持っていることを把握しておくべきです。
3. 厨房機器などの中古価格が大幅に下がる
すでにヤフオクやメルカリなどをみて、気づいている人も多いと思いますが、テンポスなどの店舗用品の中古市場は大きく荒れているのです。
この現象は当面の間、続いていくでしょう。
閉店するお店が中古買取店に連絡してみたところ、「5年以上使ってるものはダメ。」と断られたケースも出てきています。
これは、コロナ前では考えられないことで、高価な厨房機器などで10年未満の仕様なら修理するべきところをして販売できるため、ただ同然ではありますが最低でも引き取っていきました。
今は厨房機器自体がダブついていることから、安くても程度のよい厨房機器を手に入れられる可能性が高いのです。
4. アフターコロナ仕様のお店として最初からレイアウトできる
コロナ禍で生き残るための策として、テイクアウト、デリバリー、通販などいろいろな業態を追加した飲食店も多くあります。
しかし、大きく改革するために問題になっていくのは、内装・レイアウトの変更や店舗の移転であり、これがネックとなってきます。
テイクアウトをやりたいがその作業場をとれない、どうにかスペースをとったとしても客席が減ってしまうことから割りに合わず、やはりお店自体の場所を変えなければいけない。
このように最初にセットアップしてしまったお店の設備やレイアウトなどを変更するには、とても労力とお金がかかります。
しかし、これから開業する経営者は、この時代に合わせたレイアウト・スタイルで最初から設定することができ、この差はとても大きいものになります。
プランがしっかりできていれば、これから新規開業する方が有利なことは間違えありません。
5. 開業の時点でイートイン以外の主軸を設定できる
飲食店のそのもの形がこのコロナショックで大きく変わり、これまでの飲食店経営のノウハウでは、通用しないことが多く出てきました。
なかでも、お客様で賑わった満席の店内がNGとなったことは、衝撃的なことです。
今後もこのような感染症の蔓延が起こらないとも限らず、このような状況でもダメージを少なくできるお店を作っていかなければなりません。
そこで、イートイン以外の業態でも収入源となる一つの柱を作ることはとても大事なことになり、経営基盤を強くすることになります。
通販や物販、料理教室、テイクアウトなど多種多様に打ち手はありますが、その中からその飲食店にあった相乗効果を狙えるものを選び、開業時から実行していくべきです。
これまで副収入程度に考えていた通販や物販などは、来店されたお客様に今まで以上にアプローチしていき、イートインに引けをとらないような収益を狙えるようにすることが賢明と言えます。
どんな時代でも重要なポイント
コロナ禍であろうがなかろうが、常にお客様の満足度を考え、店主の一番伝えたいことを伝え続けることは最も大切なことです。
今回のような有事であっても、この大事なポイントがいつも出来ていて、すでに多くの顧客を持っていた飲食店は
「テイクアウトを始めたんだ、嬉しい。」
「あの店の料理が通販で買えるんだ。」
と反応してもらい、今まで以上に根強いファンを獲得できています。
きめ細やかなサービスと他にはない美味しい料理を提供することは、もちろんのことですが、店主の人となりが感じとれ、その人の思いがどのぐらい伝わるかどうかという点は、いつの時代も変わらず大事なところでしょう。
新規開業においても経営者の思想や信念がブレないように、どのように新規開業のプランに落とし込んでいくか?
ここに十分な時間をかけるべきと考えます。
また、その反面、アフターコロナであるからこそ考えを変えないといけないこともあります。
多くの新規開業、独立起業を希望する方は当然のことながら、これまで蓄積したスキルを発揮しようとするでしょう。
しかし、このアフターコロナでは今回の大変革に対応した新しい飲食店のスタイルを作り上げることを考えなければいけません。
独立前に働き、修行したお店の収益モデルやノウハウはもう古いものになっている可能性を疑うべきです。
コロナ騒動が済んだから、また今まで通りやっていけるという考えは捨て去り、これから新しい飲食業界を作りあげる気持ちをもって進んでいきたいですね。