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誰が権力を握るのか、権力は人をどのように変えてしまうのか? 『なぜ悪人が上に立つのか』

あなたの職場に「なぜこんな人が上の立場にいるのか......」と思う人はいませんか?
歴史を振り返ると権力を握ったものがそれを悪用し、組織や社会を混乱に陥れてきた事例が数多く見られます。それでは一体、どのような人が権力を握り、権力が人をどのように変えていくのでしょうか?

今回は、この問いに対して、進化論や人類学・心理学的な視点から「権力」を読み解く書籍『なぜ悪人が上に立つのか』をご紹介します。


権力が人を腐敗させる

「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する。」
一度は耳にしたことがあるイギリスの歴史家ジョン=アクトンのこの警句は、果たして正しいのでしょうか。次のマダガスカルの独裁者の例を見てみましょう。

マダガスカルの元大統領ラヴァルマナナは、貧しい家庭に生まれましたが、努力の末に大統領に上り詰めました。彼のリーダーシップは当初、国民に希望を与え、清廉な政治の象徴とされていました。

しかし、権力を握るうちに、彼の態度は変わり始めます。次第に自らの地位を守るために汚職に手を染め、最終的にはクーデターにより失脚してしまったのです。

この事例は、権力が人を変えてしまうことを如実に示しています。しかし、腐敗の原因は本当に権力そのものなのでしょうか?権力が、腐敗した人を引き寄せる可能性もあるのではないでしょうか。
次の事例を見てみましょう。


悪人が権力を求める

心理学の世界で有名なスタンフォード監獄実験では、被験者を「看守」と「囚人」に分け、監獄のロールプレイを行ったところ、看守役は暴力的で支配的な行動を取り、囚人役は抜け殻のような服従的な人間に変化してしまいました。この実験は、権力が人を変えることを示す例として広く知られています。

しかし、この実験には落とし穴がありました。実際に暴力的になったのは一部の看守役だけで、囚人役の学生に敬意を持って接していた看守役もいたのです。
そこで、参加者がどのように集められたのかに注目した研究者たちは、囚人役と看守役の募集のために以下の2つの広告をいくつかの別々の地域で出しました。

広告a:心理学研究のため、男子学生を募集中。〜
広告b:監獄生活の心理学研究のため、男子学生を募集中。〜

驚くべきことに、「監獄生活」という言葉が含まれていた場合、より支配的で暴力的な行動を取るサディスティックな学生が集まったのです。

このことから、権力は善人を悪人にする力ではなく、悪人を引き寄せる磁石のようなものと言えるかもしれません。
しかし、まだ疑問は残ります。それは、なぜそのような悪人がたやすく権力を手に入れることができるのか?ということです。本書では、この疑問についても言及しています。


なぜ悪人が上に立つのか

本書は、「どうすれば公正で腐敗しないリーダーを選べるのか」といった問いにも深く切り込み、現代社会を生きる私たちに多くのヒントを与えてくれます。

権力だけが取り柄のイヤな先輩や上司、組織の人間関係に悩んでいる人、「なぜあんな奴が上にいるのか」とモヤモヤを抱えている人はぜひ本書をご一読ください。今の状況を切り抜けるヒントがきっと見つかるはずです。

『なぜ悪人が上に立つのか』と一緒に読みたい!国内外の政治や権力について考える本をご紹介します。


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