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四姉妹の行先は

 ルイーザ・メイ・オルコットの「若草物語」は、谷崎潤一郎の「細雪」と並ぶ四姉妹ものの名作である。「細雪」は原作通りにテレビ、映画、舞台と作られているが、「若草物語」に関しては日本でも映画、ミュージカル、アニメという具合に制作されてきた。
 日本テレビ系の日曜ドラマで令和版が作られたが、「若草物語〜恋する姉妹と恋せぬ私」というようなタイトルでも分かるように恋に後ろ向きな次女を主人公にしたことで賛否両論が出ている。
 次女の涼(堀田真由)は脚本家を目指していたが、どういうわけかテレビ制作会社の助監督をしている。恋や結婚はしない、姉妹で暮らしたいという考えを持つ。そんな強気な性格が災いし、あちこちでトラブルを引き起こしている。
 一方、長女の恵(仁村紗和)はしっかり者で結婚願望が強い。ハローワークの契約社員でもある恵は、正規の小川大河(渡辺大知)に思いを寄せてはいるが、プライド高めのモラハラ気質でいつも振り回されている。
 四女の芽(畑芽育)は、明るく甘え上手だが、結婚相手は金持ちと割り切っている。そんな芽は服飾学生の沼男、沼田灯司(深田竜生)と知り合い、どん底にまで堕ちていく。
 四姉妹の中でも唯一同居していないのが三女の衿(長濱ねる)。役者志望で、脚本家を志していた涼の唯一の理解者だったが、姉妹に事情を言えぬまま失踪している。
 涼が恋愛や結婚に後ろ向きになっているのは、坂井真紀扮する母親にある。超恋愛気質の母親は、結婚と離婚を繰り返した。そのことが涼を恋に後ろ向きにさせたと考えられる。今年1月放送の「アイのない恋人たち」(テレビ朝日)の主人公、久米真和(福士蒼汰)の女性と付き合ってはポイと捨てる性格になったのも、母親が男と駆け落ちして家を出たことがきっかけだった。なるほど、母親の影響でここまで頑なになったのか、とそう考えるようになった。
 過去の作品を引っ張り出したのも気が引けるが、真和が少しずつ恋愛に前向きになったように、涼も恋愛に前向きになってもらいたい。その為には何が欠けているのかを鑑みてほしい。

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