シリーズ企画「ひとり情シスを救いたい」ひとりで悩まないで③
中小企業でのデジタル化課題は騒がれておりますが
複雑な人間関係、規模や業種、興味や方向性などの観点から
簡単には解決出来にくい部分でもあります。
特に中小企業では人員、予算の関係で「ひとり情シス」に頼らざる得ない状況。そんな多くの現場を見て来た経験と自身の経験からシリーズ企画として「ひとり情シスを救いたい」と題して関係者へのアドバイスや応援内容を言語化してみます。
自身の限界を知り「先ずは影響力」をつけて行く
情報システム担当者は、デジタルに関する用語や技術が幅広いため、すべてを網羅するスペシャリストは存在しないというのが現状です。特定の分野のスペシャリストは多数存在しますが、一般的に「情報システム担当=デジタル知識豊富人材」と誤解されがちです。しかし、実際にはその知識は特定の領域に偏っていることが多いです。
私自身も業界の末席にいるため、多くの情報を収集する好奇心を持ちながらも、専門的な知識には限界があります。広範な知識を持つ専門家ではなく、一部の分野に明るい程度の専門家です。
何かを学ぶ際に「もっと頑張れ」という声もあるかもしれませんが、私は自身の興味に従って進むことを良しとしています。それは、自分の限界を理解しているからです。自分の知らないことは専門家に委ね、自分の得意な分野を活かすことに集中します。私は、他の専門家が持つ知識のデータベースであると言えます。
この考え方は「トランザクティブメモリー」と呼ばれます。自身が知識の泉であることは重要ですが、深い知識は専門家やAIに頼り、良い関係を築きながら、情報を共有し、影響力を持つことを目指すべきです。
これにより、気持ちが楽になるかもしれません。
「ルールはこれです」という方針は非常に効果的です。
社内のデジタル化を進める際には、さまざまな障壁に直面することがあります。現在ではデジタル機器が一般的になり、昔ほどの苦手意識は減少していますが、それでも社内の運用に影響を及ぼすことがあります。特に管理者や関係者が把握していない箇所でトラブルや問題が発生することがあります。
そのような場合、担当者とは異なる部署で予想外の行動や逸脱が見られることもあり、運用管理側にとっては管理しきれない事態が生じることもあります。
たとえば、以下のような事例が挙げられます。
仕事とは関係のないウェブサイトの閲覧
勝手にソフトウェアをダウンロードしてトラブルを引き起こす
機密情報の持ち出し
これらの問題は、管理を強化しても完全に管理することは難しい場合があります。逆に、過度な管理は運用を窮屈にする可能性があります。
しかし、様々なメンバー、時には問題のある者もいます。ここで重要なのは、管理するのではなく「抑制する」という発想に転換することです。
厳しい罰則を設けるのではなく、「ルール化」を行います。たとえば、「デジタル機器の取り扱いルール」や「運用ルール」を策定し、禁止事項を明文化します。
ただのルールでも効果はあるか疑問に思うかもしれませんが、実際には「社内での抑止力」に効果があります。ルールを破った場合には、ブラックリストに載せるなどの措置をとることで、問題行動者を絞り込むことができます。
情報システム担当者は、文書作成や運用ルール作成が得意ではないことが多いですが、対話型AIの力を借りて運用ルールを策定することも可能です。
策定したルールは経営層にも確認してもらい、社内承認文書として社員に通達します。ルールが確立されれば、運用は簡単になり、「私が言ったのではなく、社内ルールです」という一喝でモラル向上が期待できるでしょう。...おそらく(笑)。
ひとり情シス担当は最低限タブレット端末は支給してもらいましょう
少々運用面に関する話題ですが、一人情報システム担当者には、最低限タブレット端末を支給すべきです。
要するに、社内の現場でいつでもどこでもすぐにメモを取れる環境を整えることが重要です。モバイルノートでも構いませんが、携帯性と操作性を考えると、特にiPadなどのタブレット端末が適しています。(まずは特権的にでも)
この端末を何に使うかというと、あらゆる場面でメモを取る習慣を徹底することです。トラブル時の状況、現場での行動や実施内容、あらゆる情報をメモや写真として残します。
これらのメモは後で、実施内容(よくある質問のナレッジ)や手順マニュアルの原案となります。電子的なテキスト情報として保存することで、情報が埋もれず、次回の対応に役立ち、関係者間で共有も容易になります。
初めて使う場合は戸惑うかもしれませんが、慣れると便利さに気づきます。まだまだスマートフォンを業務中にフル活用することが許容されていない会社もありますが、タブレット端末であれば見栄えもよく、違和感が少ないでしょう。
まずは一人情報システム担当が業務でタブレットを使うことで、その有効性が示されれば、次は管理職へと広がるかもしれません。そうなれば、会議資料の閲覧や議事録の作成など、業務がより効率的に進むでしょう。
その他の社内環境の変革も含めて、まずは低価格のiPadなどを準備し、デジタル機器の有効活用を進めるべきです。
これは一人情報システム担当の特権ではなく、社内デジタル改革の第一歩ですので、上長を説得して取り組んでみましょう。
ナレッジ環境の整備やマニュアル作成のための下地作りにもつながります。
トラブルが発生する前に、事前の対策にコストをかけるべきです。
今回の内容は非常に重要です。これは多くの企業で頻繁に発生する問題であり、なおかつ十分に対策されていないことが多いです。
組織が適切に対処できていないケースでは、「場当たり的な対応」がしばしば見られます。これは避けられないこともありますが、これを適切に管理しているかどうかは次のアクションに大きな影響を与えます。
「備えあれば憂いなし」という言葉が示すように、企業活動の中でトラブルは避けられません。特にデジタル関連のトラブルに対する困難さは理解できます。これらは軽微な問題や緊急の問題でなければ、問題にはなりませんが、
稀に起こる、古い生産設備に付随するコントロール用PCの故障やトラブルのような場合もあります。多くの中小製造業では、旧型の設備をまだ使用しており、その設備は重要な作業を担っています。
メーカーに連絡しても、「古い装置なので対応できない」と言われることもあります。そうした場合、対応する方法がないこともあります。
では、どうすればいいでしょうか?
トラブルが発生する前に、代替品を準備しておくことが重要です。旧型機器は停止すると致命的な場合があります。そのため、元気なうちに、代替案を進めることが必要です。
管理PCの場合、旧型のPC(Windows 95、Windows 7など)が多いです。同様の旧型PCを用意し、同様の環境で動作するかどうかを試す必要があります。
代替品のPCの調達には専門業者がいますので、「まちの総務」に相談してください。また、古い設備の故障は管理PCだけではありません。昔の設備は頑丈に作られていますが、電源部やモーターなどの電気系の故障も多いです。
そうした場合にも、事前に同様の対策を行うことが重要です。これには多少の費用がかかるかもしれませんが、新しい設備を購入するよりは遥かに安いです。この部分は企業活動の生命線にも関わるため、予算の調達も得られるでしょう。
誰が主導するかについての議論もあるかもしれませんが、情報システム担当者が中心となり、関係者との議論を進めて代替品の手配と環境整備を行うことで、リスクを軽減し、情報システム担当者の地位を高めることができます。
重大なトラブルが発生した場合に、情報システム担当者が効率的に対処できるよう、「備えあれば憂いなし」を推進しておくことも検討に値します。
いつ対処すべきか?「今すぐです!」代替品の手配に関する相談は、「まちの総務」にお任せください。